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虚脱感

昼、赤坂で打ち合わせ。連休中にチェックを終えたラダックのガイドブックの色校を、編集者さんに渡す。これで、僕がこの本の制作で関わる作業はすべて終わり。明日には編集者さんのところでも校了して、週末には下版。その後は印刷工程に入る。

いよいよ、というか。やっとここまで来た、というか。もうこれ以上、何も作業しなくていい、というか。もうこれ以上、あの本を作り続けることはできないのか、というか。

正直言って、達成感や充実感よりも、今は虚脱感の方が強いような気がする。それくらいこの本は、僕にとって大きな仕事だった。準備段階から費やしてきた時間も、取材や執筆に注ぎ込んだ労力も、あらんかぎり振り絞った自分の能力も。ふりかえってみても、これに匹敵する大きな仕事は、「ラダックの風息」くらいしかない。それだけに、制作が終わってしまったことに、ちょっと寂しさを感じる。

まあ、来週末に見本誌が届いたら、達成感や充実感のようなものが湧いてくるのかもしれないな。自分の子供が生まれてくる時のように。

進行管理という仕事

本や雑誌の編集者というと、企画を練ったり、著者やデザイナーと打ち合わせをしたり、実際の編集作業で手を動かしたり‥‥と、ものづくり的な仕事というイメージを持っている人が多いと思う。でも、編集者には、そういった作業と同じくらい大切な仕事がある。それは、進行管理。企画のスタートから下版して印刷工程に入るまで、各工程のスタッフのスケジュールを管理して、制作が破綻なく進むようにする仕事だ。

この進行管理が甘いと、作業が遅れて後へ後へとしわよせが来て、スタッフが想定外のタイミングで無茶な量の作業を強いられることになる。その結果、印刷した本や雑誌に大きなミスが残ってしまったり、ひどい場合は本自体の刊行が遅れてしまったりする。いつ出してもいいという本なら構わないが、ほとんどの場合、販売などの関係でそういうわけにはいかない。

進行が遅れる原因はいろいろある。作業のスタートそのものが遅すぎたり、作業量に比べて各工程に設定した作業時間の見込みが甘すぎたり、どこかの工程の作業が何らかの理由で大幅に長引いたり。こうしたことが起こると、とたんに全体の進行が滞ってしまう。進行の遅れを防ぐには、遅れている工程のスタッフにびしびし催促したり(あまりやりたくない)する前に、まず最初にスケジュールを設定する時に、各工程が無理なく回るようにスタッフ全員としっかり打ち合わせをして、制作途中でもちょくちょく確認しながら微調整をしていくことが大事だ。

大変な作業をしなければならないのなら、その分スタートを前倒しすることを考えるべきだし、前倒しする時間がないなら、臨時にでも人手を増やすことを考えるべき。時間も人手もないのなら、そもそもその体制でその企画をやるべきなのかというところから考える必要がある。

進行管理をしっかりやって、多少でもゆとりのあるスケジュールで制作を進められれば、掲載内容の急な差し替えや、スタッフの急病など、不測の事態が起こったとしても、それほど慌てずに対処できる。でも、進行管理とは、そういう安全面への配慮のためだけのものではない。ぎりぎりまで細部を煮詰め、ミスを減らし、品質を向上させるための作業に使う「余裕」を各工程が持てることが、進行管理の一番の目的だと思う。

猛烈に忙しくて進行が破綻してしまった‥‥と嘆く同業者が時々いるが、お気の毒と思う反面、もったいないなあ、とも思う。それだけ忙しいなら優秀な編集者なのだろうし、きっといい本や雑誌も作っているのだろうけど、その人が進行管理をきっちりできる状況にあれば、そこで生まれる「余裕」を使って、もっといい本や雑誌を作れたに違いないからだ。ほんと、もったいないと思う。

時代を先取るセンスとか、天才的な企画のヒラメキとか、読者の心をつかむ文才とか、そういった才能はあるに越したことはない。でも、進行管理をきっちりやるための几帳面さと誠実さは、すべての編集者にとって必要な能力だ。そしてその二つは、そんなに努力しなくても身につけられる能力でもある。きらめくような才能がなくても、その時々にやるべきことをコツコツと積み上げていけば、いい本を作ることはできる、と僕は思う。

ゴールデンウイークなのに

今日もずっと、家で仕事。取材原稿はあらかたメドがついた。きっちり〆切が守れそうな状況に持ち込めたので、ほっとした。

世間はすっかりゴールデンウイークだけど、カレンダー通りに動いてる取引先からは当たり前のように仕事のメールが来る。どこかに気晴らしに出かけたいなー、と思わないでもないが、当分は雨続きらしいし、明日にはガイドブックの色校が届くし、家で仕事してろという神様の思し召しなのかな。

ひと通り片付いたら、焼肉、がっつり食べに行く。絶対。

夏の計画

昨日の夜もよく寝た。昼頃にもそもそと起き出し、ラーメンを作って食べ、取材原稿の執筆にとりかかる。いたって順調。明後日にガイドブックの色校が届くまでには、ほぼカタがついてるだろう。

いろいろ片付いてきて、気持に余裕が出てきたからか、そろそろ今年の夏の計画を考えはじめている。ぼんやりとおぼろげだったものが、ここにきて、割と実現可能な形で見えてきた。そんなに無理がある計画でもないし、たぶん、このまま実行に移すと思う。

やっぱり僕は、戻りたいんだな。カメラを携えて、一人、あの荒野の中に。

防衛本能

金曜の夕方に取材を終えて家に帰ってきてから、今日の午前中まで、起きている時間の三倍くらい寝ていた。たまに重い頭を抱えて起きても、何か食べると、また寝床に行って、ぱたり。とにかく、昏々と眠り続けていた。

確かに今月はとてつもなく忙しかったのだけれど、取材による肉体的な疲労はきっかけに過ぎなくて、これまでの執筆や編集作業ですり減らした神経が、とことん疲れてしまっていたのだと思う。それに対する防衛本能のようなものが働いて、外界をひたすら遮断し続けていたような気がする。

阿呆みたいに眠り続けたかいあって、今日は嘘のようにすっきり。取材の原稿書きもはかどった。完全復活。