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ゆるんだゼンマイ

今日は外出の予定もなく、一日家にいられると思って、何も考えずに眠り続けたら、軽く昼を過ぎていた。午前中に宅配便が届いて、呼び鈴が鳴ったのにも気付かなかったほどだった。

それで起きてはみたものの、どうにもこうにも、身体がだるい。両肩の上に濡れざぶとんが乗っかってるような感じ。考えてみれば、先月から、取材に撮影に執筆に、トークイベントやフリマ出店、大事な企画プレゼン、知人の逝去という突発的事態など、いろいろありすぎて、疲労が蓄積されていたのだろう。

とりあえず、来週からの取材の準備はしたものの、それ以上は、ちょっと無理。ゆるんだゼンマイを巻き直すために、今日はとっとと寝てしまおう。

僕らの仕事

夕方、先日急逝した知人の通夜へ。黒いネクタイを締めると、いつも気が滅入る。

棺の中の彼女の顔は、思っていたよりもふっくらとしていて、安らかそうだった。遺族の方から、闘病中の話を聞く。強い薬の副作用で意識が朦朧としていた時も、彼女はずっと、仕事のことばかり気にしていたそうだ。どれだけの責任感を背負って生きてきたのだろう。彼女が最後に手がけた、僕が編集を担当した本をご遺族にお渡しして、彼女の仕事ぶりをお伝えすることができたので、少しだけほっとした。

僕らが積み重ねてきた仕事は、きっと、無駄じゃない。明日からはまた、前を向いていこう。

戦友へ

夜、知人が亡くなったとの報せが届いた。

彼女と最初に会ったのは、十年ほど前。当時、海のものとも山のものともつかない新雑誌の立ち上げで、僕は外部の編集者として、彼女はDTP担当の外部スタッフとして参加していた。月に数十ページに及ぶ担当連載の制作のやりとりをする日々が、数年間続いた。きつい仕事だったと思うが、彼女の作業の速さと正確さは、ほかのどのDTPスタッフよりも抜きん出ていた。ゲラやデータの受け渡しで彼女のオフィスを訪ねるたび、彼女は打ち合わせもそこそこに、楽しげにとりとめのない世間話をしたり、作業が遅れてるほかの編集者への愚痴を愛情半分で話していた。

ラダック取材の関係もあって、僕がその雑誌から離れた後も、彼女との仕事の付き合いは続いた。僕が編集した単行本も、三冊ほど担当してもらった。去年の春にも一冊の単行本のDTPをお願いしたのだが、その打ち合わせでひさしぶりに会った彼女は、びっくりするほどげっそりやつれていた。本人も、人に会うのが嫌になるほど痩せてしまった、とこぼしていた。作業のスピードはあいかわらず速かったが、時々、彼女らしくないケアレスミスが混じっていたのが気がかりだった。

その本の校了間際になって、突然、「ヤマタカさん、あたし、来週から入院することになったんですよ。たぶん、一カ月くらいで出てこれると思うんですけど」と聞かされた。「でも、この本の仕事だけは、ちゃんと終わらせますから、安心してください」とも。その言葉通り、彼女は校了日の午前中にすべてのデータをきっちり入稿し、それからすぐに病院に向かった。本物のプロフェッショナルだった。

入院は、その後一年近くに及んだ。今年の夏には、快方に向かっているから、と退院して自宅療養に切り替えたと聞いていた。それなのに、この報せ。やりきれない。

彼女と僕は、プライベートでもよく顔を合わせるような親しい友人というわけではなかった。だが、本や雑誌を作り上げる仕事の中で、ともに骨身を削り、時にかばい合いながら戦ったという意味では、僕にとって数少ない「戦友」と呼べる人の一人だったと思う。

本当に、ありがとうございました。今は、安らかに。

作らずにはいられない本

午後、電車で都心へ。今日はとある出版社で、新しい本の企画のプレゼン。

次に作ろうと考えている本は、出すまでのハードルがかなり高い。企画自体の内容云々より、それが属するジャンル自体が「売れにくい」ので、出版社から敬遠されがちなのだ。企画を提案する側としても、バーッと派手に売れる企画だとは言いにくい。そもそも、この仕事のプロとして、自分でも売れるかどうかわからない企画を提案するのは、間違っているのかもしれない。

しかし、それでも‥‥。

「この本は、出すこと自体に意味があると思うんです‥‥」

話の途中、僕は思わずそう口走ってしまった。すると、出版社の担当の方々は、口を揃えてこう言った。

「‥‥それは当然ですよ!」

何というか、そのひとことで、僕はとても救われた気持になった。売れる、売れないとは別のところで、作りたい、作らずにはいられない本がある。それを追い求めるのは、けっして間違ってはいないのだと。

これからどうなるか、まだ何もわからないけど、がんばろうと思う。

朝の茶話会

朝、代官山蔦屋書店へ。今日は「トラベルコーヒートーク」というトークイベントへの出演。平日の午前中の開催で、告知期間もほんの一週間くらいだったのだが、最終的に二十人以上の申し込みがあったらしい。ありがたいことだ。

会場は店内のカフェスペースで、テーブルを差し挟んで気楽に話をする、まさに茶話会という感じ。今までにない近い距離感でのトークイベントだったのだが、みなさんとても感じのいい方々で、質疑応答でも熱心に質問してくれる方が多かった。こういうちょっとしたきっかけで、ラダックに興味を持ち、好きになってもらえたら、これほどうれしいことはない。

終了後、コンシェルジュの森本さんとおひるをご一緒してから、原宿に移動。来週あたりから始まる地方取材案件の打ち合わせ。それを終えて家に戻り、メールの連絡業務をあれこれやってるうちに、どうにもこうにも眠くなってきた。さすがに疲れてたらしい。一時間ほど仮眠して、現在に至る。

ホッとひと息つきたいところだが、これからまだまだイベントや仕事が目白押し。がんばらねば。