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飛び去っていく日々

ここ十日間ほど、かなり忙しかった。大学案件の取材と執筆が立て続けに入って、それが終わってすぐ、六月に出る予定の新刊の著者校正。まるまる一週間ほどかけて、ようやくチェックし終え、とりあえず明日、郵便局からレターパックで出版社に送る予定。

著者校正をしてる間は、文字通り、一字一句をなぞるように、ひたすらちまちまと追い続けていた。ある程度の経験と、根気と持久力と集中力のいる作業だ。原稿を納品する時に入念にチェックしておいたはずだったのに、あらためて一字一字拾っていくと、やっぱりあるのだ、誤字、脱字、誤変換、不用意な重複、日本語的に意味が通りにくい部分、その他いろいろ……。でも、ここでしっかりチェックしきれるかどうかで、本の品質はかなり決まってくる。だから、絶対に手は抜けない。手を抜いて作られた本は、読者(特に同業者)に、あっという間に見抜かれてしまう。

はあ、あともう少しだ。がんばろ。

ついこの間、マンションの裏手で満開だった桜の木は、もうすっかり新緑の葉桜になってしまっていた。毎日が、矢のように速く飛び去っていく。まあ、今みたいなご時世なら、とっとと早く過ぎ去ってくれた方がいいのかもしれない。

いつもと違う繁忙期

午後、大学案件の取材を2件。明後日と週明けにも、合わせて3件の取材がある。来月も入ってくるかもしれない。今週末から来週末にかけては、新刊の初校チェックの作業もあるので、何気に結構大変である。

毎年、春先は大学案件など国内での書き仕事の繁忙期なのだが、今年はいつもと様相が違う。今週と来週の取材5件はすべて、Zoomによるリモート取材。来月以降入ってくる取材も、たぶん全部そうなるだろう。言うまでもなく、コロナ禍の影響だ。去年の春頃は、世の中が緊急事態宣言でわたわたしすぎてて、取材自体がほとんど流れてしまっていたのだが、今年は変わらずわたわたした世の中ながらも、依頼元がそれなりにアジャストして、リモート取材を主体にしていくことになったらしい。

Zoomを使ったリモート取材は、地味に結構疲れる。分割画面に神経を集中させながらノートを取るのは疲れるし、画面の向こう側との距離感というか間の遠さが、対面取材の時の感触とはかなり違う。もう少し上手くインタビューできるようになりたいが、こちらの意図や気持ちを画面越しに過不足なく伝えるのはなかなか難しい。

まあそれでも、僕は僕なりに、自分をアジャストさせていくしかないのだと思う。前時代的なライターではあるが、がんばろ。

幾星霜を経て

昨日は都心で打ち合わせ。6月に出す予定の新しい本の、デザインについて。

今回の本は、既刊のシリーズのラインナップの一冊として刊行されるので、デザイナーの方は、そのシリーズ全体の装丁を担当されている方だ。業界ではとても有名な、実績のある方で、かつてその筋では知らぬ者のいない雑誌のアートディレクションも担当されていた。

かれこれ20年近く前になるが、僕はフリーライターとして、その雑誌で何度か仕事をさせてもらったことがある。デザイナーの方と直接やりとりさせていただいたわけではないが、あれから幾星霜を経て、まさか自分の本の装丁を、その方に担当していただける日が来るとは、想像もしていなかった。

いや、別に自分が出世したわけではまったくなく(苦笑)、偶然の巡り合わせなのだが、それでも何だか、じんわり嬉しかった。

竹沢うるま×山本高樹「空と山々が出会う地で、祈りの在処を探して」


写真家の竹沢うるまさんとのトークイベントに出演することになりました。昨年末に刊行された竹沢さんの紀行『ルンタ』と、僕が一年前に上梓した『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』のW刊行記念トークイベントです。

開催日時は4月17日(土)19時から、下北沢の本屋B&Bにて。少人数のご来場を受け付ける予定で、配信視聴による参加も可能です(アーカイブ視聴もご用意します)。サイン本付きの設定もあります(「冬の旅」のサイン本ご購入の方には「夏の旅」もお付けします)。予約方法や注意事項などの詳細は、下記のリンク先をご参照ください。

きっと面白いイベントになると思います。ご予約、お待ちしています!

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竹沢うるま×山本高樹
「空と山々が出会う地で、祈りの在処を探して」
『ルンタ』(小学館)『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)W刊行記念

インドのスピティやザンスカール、ネパールのムスタン、中国の青海省と四川省など、世界各地のチベット文化圏をめぐる足かけ3年に及ぶ旅を綴った紀行『ルンタ』を上梓した、竹沢うるまさん。

インドのザンスカールで真冬に催される幻の祭礼を見届けるため、極寒の世界を歩いて旅した日々の記録を、紀行『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』に綴った、山本高樹さん。

旅した地域やテーマにも共通点の多い、この二人の著作のW刊行記念イベントを開催します。

二人が旅したチベット文化圏は、今の私たちが暮らしている、あふれんばかりの情報や物資に満たされている社会とは、対極の存在にあります。あらゆることが不便であるはずの辺境の地で暮らす人々の表情は、不思議に穏やかで、満ち足りているように見えた、と二人は言います。それはいったい、なぜなのでしょう。

変わっていくものと、変わらないままのもの。祈りとは、心とは、人が生きる意味とは。旅の果てに、二人がそれぞれに見出したのは……。

旅や写真、チベット文化圏に興味のある方はもちろん、今の社会にどこかしら生きづらさを感じている方にも、ぜひ聴いていただきたい、注目のトークイベントです。

■日時:2021年4月17日(土)19:00〜21:00

■会場:本屋B&B
世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F
http://bookandbeer.com/

■参加費
【来店参加】:1500円(税別)
【配信参加】:1500円(税別)
【配信参加+サイン本】1500円+『ルンタ』2500円(税別)
【配信参加+サイン本】1500円+『冬の旅』1800円(税別)
【配信参加+サイン本】1500円+『ルンタ』2500円+『冬の旅』1800円(税別)
※書籍の発送はイベント後となります。

■参加方法
下記のページで、記載されている注意事項をお読みの上、お申し込みください。
https://bb210417c.peatix.com

■登壇者プロフィール
竹沢うるま(たけざわ・うるま)
1977年生まれ。ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーを経て、2004年より写真家としての活動を開始。2010年〜2012年にかけて、1021日103カ国を巡る旅を敢行し、写真集『Walkabout』と対になる旅行記『The Songlines』を発表。2014年第三回日経ナショナルジオグラフィック写真賞受賞。その後も、チベット文化圏を捉えた写真集『Kor La』(小学館)と旅行記『ルンタ』(小学館)など、写真と文章で自身の旅を表現している。最新作は写真集『Boundary_境界』(青幻舎)。「うるま」とは沖縄の言葉でサンゴの島を意味し、写真を始めたきっかけが沖縄の海との出会いだったことに由来する。

山本高樹(やまもと・たかき)
1969年生まれ。著述家・編集者・写真家。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、『地球の歩き方インド』『地球の歩き方タイ』の取材などで、世界各地を飛び回る日々を送っている。主な著書に『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)、『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』(地球の歩き方)など。

リアルとオンライン

昨日は夕方から、下北沢へ。本屋B&Bからオンラインで中継されるトークイベントを、裏方としてお手伝いに。

少し前から、本屋B&Bで開催されるトークイベントの企画とコーディネートの仕事を、業務委託の形で請け負うようになった。昨夜のは自分が企画を手伝った最初の配信イベントだったのだが、店舗のスタッフの方々が店内でどんなセッティングをして、どんな段取りで中継をしているのか、間近で見ていて良い経験になった。イベント自体も、登壇者の方々のおかげでなごやかに楽しく盛り上がって、よかったなあと思う。

トークイベントというと、コロナ以前は客入れしてのリアルイベントがほとんどで、オンラインで配信するような事例は多くなかった。昨年来のコロナ禍で、今はその割合が逆転してしまっているわけだが、最新のツールを使った配信には、それはそれで配信ならではの良さもある。もちろん、配信イベントとして基本的な部分の段取りをきっちりやらないとグダグダになってしまうし、登壇者も配信であることをある程度意識しないと、チグハグな雰囲気になってしまう。

登壇者がそれぞれの自宅などからフルリモートで出演する形のイベントもツール的には可能だが、その場合はさらにグダグダ&チグハグになりやすいので、今のところ、登壇者同士は同じ現場でトークをして、それを配信スタッフが常時サポートしながら中継する形が、一番自然で無理がないのかもしれない。

将来、コロナ禍が去った後は、客入れとオンライン中継の両方を併用する形のトークイベントが増えるのではないかと思う。来場して参加する人は、登壇者を生で見られるし、ドリンクやフードやグッズ販売など、リアルイベントならではの楽しみもある。配信で参加する人は、会場から遠い場所に住んでいても視聴できるし、自宅で見られる気楽もある。開催側にとっても、収入源の種類は多い方がいい。

というわけで、来月は、そういうイベントをやります。続報を待たれよ。