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汗と塩

タイで取材に明け暮れた日々は、とにもかくにも、暑かった。

灼けつく日射しはチリチリと肌を焦がし、じっとり湿った空気は濡れたシーツのように身体にまとわりつく。最初のうち、汗は文字通り滝のように流れ出るが、こまめに水を補給しないと、汗すら止まって、頭の中がぼーっとかすんでくる。

そもそも、地元のタイの人たちも、一番暑い昼下がりには、むやみに外を出歩いたりしない。取材のノルマを抱えてるとはいえ、そんな暑い時間帯にあくせく外を歩き回ってる僕の方が悪いのだ。

そんなわけで一日が終わる頃には、疲労困憊ぶりも半端なかったので、消耗した分を補うべく、食事はできるだけちゃんと摂るようにしていた。するとそのうち、目玉焼きにふりかける塩とか、ナムプラーの塩辛さとか、そういうしょっぱい味がやたらにうまく感じられるようになった。

無理もない。毎日汗をだくだくかきまくって、しまいには汗もろくに出なくなって、肌の表面からは塩が噴き出してガサガサになっていたのだ。南国では、塩の補給が大切なのだと、身に沁みて実感した。

「地球の歩き方 バングラデシュ 2015〜2016」

arukikata_bangla1510月4日(土)に発売された「地球の歩き方 バングラデシュ 2015〜2016」の巻頭グラビアで、ほんの4ページほどですが写真を提供しています。ダッカ近郊を走る列車の紹介記事と、チッタゴン丘陵地帯にあるバンドルボンという町の紹介記事の部分です。バングラデシュに興味があるという方は、ご覧になってみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

タイ 旅の断片(2014)

サタデーマーケット、チェンラーイ
今年も九月下旬から約四週間、取材でタイを旅してきた。訪れた街は去年とおおむね同じだったのだが、通常のリサーチ取材に加えて、グラビアで使う写真の撮影のノルマもあって、なかなか大変だった。のんびり気楽に自分の好きな写真を撮るような余裕はほとんどなかったのだが、取材の合間に、あるいは取材の一環として撮った写真の一部を、何枚かここに載せてみようと思う。

最初の写真は、チェンラーイの街で土曜の夜に催される、サタデーマーケットにて。

北から南へ

ついこの間、アラスカから戻ってきたと思ったら、明日はもう、タイへ出発。去年とほぼ同じ、約四週間の取材。

昨日と今日、あらかじめ準備しておいたチェックリストを見ながら荷造りをしていたのだが、アラスカの時と比べて、あまりにも荷物が少ないので笑ってしまう。たぶん、3分の1かそれ以下。向こうではほぼTシャツと短パン、サンダルだけで過ごすので、服がとても少ない。寝袋もいらないし、もちろんテントもマットレスも、フリーズドライの食料もいらない(笑)。一番重いのは撮影機材だが、アラスカでは重要だったヘビー級の望遠ズームは持って行かないので、ずっとましだ。

とはいえ、いろいろと予測不可能なことが起こりやすいのは、アラスカよりも断然タイだと思う。去年の取材である程度各地の土地勘はあるけれど、体調管理も含め、油断しないようにせねば。

帰国は10月23日(木)の予定。ではまた。

人と人をつなぐ

編集者という仕事に求められるいくつかの役割のうち、たぶん一番大切なのは、人と人とをつなぐ役割なのではないかと思う。

たとえば、一人の作家が小説を書いたとすると、編集者は彼を、デザイナーやイラストレーター、校閲担当者、印刷担当者、書店員、そして読者と、彼自身の作品を通じてさまざまな人とつなげていくための役割を担う。著者が複数名の場合や、雑誌などの編集者の場合は、もっと多くの人々とのつながりを担うことになる。

しばらく前のことになるが、何人かの友達と飲んでいた時、そのうちの一人に「ヤマタカさんがいなかったら、僕らがこうして会って飲んだりするようにもならなかったんですよね」と言われた。確かに、その時の彼らと僕は、それぞれ取材を通じて知り合って友達になり、それで彼ら同士もつながっていったのだった。僕自身は、普段はまったく社交的ではなくて、どちらかというと一人でふらふら旅でもしてるのが性に合う方なんだけど。

先日上梓した「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」の制作で、僕は一人の編集者として、その人と人とをつなぐという役割を、文字通りめいっぱい要求されることになった。何しろ、大半の写真家の方々は、名前は知っていても会ったことはなく、用意できる謝礼も相場よりずっと少ない。僕にできたのは、すべての事情をありのままに伝えて、自分自身の暑苦しいくらいの思いを真正面から届けることでしかなかった。

でも、たぶんそれは、正しかったのだと思う。たくさんの人のつながりから生まれてきた、一冊の本。それは、きっと幸せな本だと思う。