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近所の図書館

この間、近所の図書館に行って、本を借りた。仕事で、二冊ほど児童書に目を通さなければならなくなり、カーリルで調べてみたら、家から一番近い図書館に在庫があるとわかったので。

家から歩いて15分ほどのところにあるその図書館を利用したのは、今回が初めて。図書館自体を利用したのも、ずいぶんひさしぶりだ(ラダック関連の資料本など図書館にはまずないし、そうした本自体、自分の書いた本以外にあまりないし)。平日の午前中でも、意外に利用者がちらほらいる。必要な本はすぐに見つかった。館内のパソコンで利用者登録をして、バーコードの付いた利用者カードを作ってもらう。本を貸し出してもらう時の手続きも、バーコードでピッピッ、とすぐに終わる。昔、学校にあった図書館の本には、表3の見返しの部分に手書きで記入する貸出カードを入れる紙ポケットがついていたが、ああいうのはもうないのだろうか。

近所の図書館、自分が興味を持てそうな本がもう少しあれば、引き続き利用してみたい気もするのだが、それには蔵書数が少々心もとない印象。これからしばらくの間、仕事でいろんな本に目を通すことになりそうなので、ドンピシャで在庫があれば、その時はまた……という感じかな。

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栖来ひかり『時をかける台湾Y字路 記憶のワンダーランドへようこそ』読了。台北を中心に著者自らが足で探し出した数々のY字路のルーツを、古地図や資料と重ね合わせながら紐解いていった、不思議な雰囲気の街歩きガイド。よく調べて書かれていると思うが、先に台湾で刊行された本をもとに日本オリジナル版として作ったからか、台北各地の地名などがある程度頭に入っていないと、少々とっつきにくいかなと思う(僕自身も苦戦した)。台湾が好きで何度も訪れている人には、ちょうどいいのかもしれないが。

『流離人のノート』

『流離人のノート』
文・写真:山本高樹
価格:本体2200円+税
発行:金子書房
四六変形判 304ページ(カラー54ページ)
ISBN 978-4-7608-2700-8
配本:2025年10月16日

2023年夏から金子書房のnoteで2年弱ほど担当した連載エッセイが、書籍化されることになりました。連載分のほか、単発で執筆したエッセイと書き下ろしを加えています。収録している写真の約3分の1は、20年以上前にフィルムカメラで撮影したもので、カバーの写真もそのうちの1枚です。

これまでに書いてきた本の中でも、自分にとっての「旅」という行為に、もっとも真正面から向き合った一冊になっていると思います。ポルべニールブックストアでは、特典小冊子付きサイン本のオンライン予約を受付中です。よかったらぜひ。

台風に振り回されて

明日から三週間ほど、インドのラダックに行く。ツアーガイドの仕事と、個人での取材も少々。

実は今週、渡航に関するドタバタで、結構大変だった。当初、出発日の土曜には何の影響も及ぼさなさそうだった台風9号の進路が、日を追うごとに日本列島寄りに変化。水曜夜の時点では、羽田空港が土曜朝に強風域に入りそうな予報が出て、航空会社からも振替便の案内が出されるほどだった。僕も旅行会社といろいろ検討して、どうにもならなさそうなら、出発を一日早めて金曜にして、デリーで二泊する形にしよう、という話にまでなっていた。

出発前に国内で片付けとかなきゃいけない仕事も結構あったので、もし、急に出発が一日早まってしまうと、相当せわしないことになる。その上、今回は特に用事もない雨季のデリーで一泊余分に泊まるのは、正直、かなり気が重かった。

昨日の朝の時点では、もうほとんどあきらめていたのだが、昼頃に出た台風情報を見ると、台風の速度が少し速くなって、進路も少し東に逸れはじめていた。土曜の天気予報も次第によくなりはじめて、これなら飛行機にもほぼ影響はないのでは、という状態にまでなった。旅行会社からも連絡が来て、とりあえず当初の予定通りに動いて、それでもし欠航になったら、日曜は確実に大丈夫そうなのでそちらに振り替えましょう、という結論に。

ふう……それにしても今年は、いろんなことが起こるなあ……。

というわけで、しばらく留守にします。帰国は八月下旬の予定。では。

そして本が増えた

四月下旬の『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』の発売に合わせて、連休前から今日までの間、都内を中心にいくつかの書店にご挨拶回りをしていた。

書店員の方々と話をしていて感じたのは、『雪豹の大地』の現物を目にして、おお、これは、とただならぬ気配を察してくださっていた方が多かったということ。やっぱり、完成度をとことん突き詰めて作り上げた一冊の本が醸し出す存在感は、書店員や読者の方々にも伝わるものなのだな、と。チームで作り上げた本をそんな風に受け止めてもらえていて、個人的にも嬉しかった。

それにしても、行く先々、素敵な書店が多かった。自分の好みドンピシャな品揃えだったりすると、ついつい見惚れて、気がつくと一冊手に取っていたりする。そうして買った本が日を追うごとに増えていき……また本棚のスペースがなくなってきた……。

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J.D.サリンジャー『彼女の思い出/逆さまの森』読了。グラース家の物語でもコールフィールド家の物語でもない、サリンジャーの初期の短編集。明らかに軽めに書かれた作品もあるが、彼ならではの先見性と繊細な感性、そして語り口の巧みさを堪能できる一冊になっている。特に、彼自身の実体験が反映されているとも言われている表題作には、心を打たれた。

おっさんの食卓

GW後半の四連休。相方が神戸に弾丸帰省している間、僕は〆切間近の長文の原稿を抱え、東京の自宅で一人プチ合宿の日々を送っていた。

日々の食事は家で作って食べていたのだが、おっさん一人だし、時間も予算もかけられないので、メニューもさもありなんというものばかりになった。スーパーで買ってきたカツオのたたきと日本酒。宝舞の生餃子を焼いたのとビール。もぐもぐのちょい飲みセットとジントニック。毎日の原稿の苦行の憂さ晴らしも兼ねてはいたが、それにしても、メニューのチョイスがめちゃめちゃおっさんっぽい。この一杯のために生きてるな感が半端ない。

いいんだ、うまかったし、それなりに楽しかったし、原稿もちゃんと納期に間に合わせたんだから……。

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ジャック・ロンドン『火を熾す』読了。ずっと前に相方が貸してくれたのを、本棚に挿したまま、読み終えたような気分になってしまっていた本。ジャック・ロンドンが短い生涯の間に遺した膨大な数の短編小説の中から、柴田元幸さんが選んだ九編が収録されている。冒頭の表題作は、極寒のユーコン準州でなすすべもなく凍え死んでいく男の一挙手一投足を描いた話で、他人事とはまったく思えず(苦笑)、相方が貸してくれた理由がわかる気がした。多作だった故か、作品によって出来にむらはあるが、総じてド直球でフルスイングの文体で、昔のアメリカのベースボールの試合を眺めているような気分になった。