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「地上」2018年7月号「極奥物語 第十話」


6月1日(金)発売のJA(農協)グループ刊行の雑誌「地上」2018年7月号のカラーグラフに隔月で掲載されているシリーズ「極奥物語」に、今年1月に取材したラオス北部の少数民族の村々についての写真紀行「紅の矜持」を寄稿しました。

同誌は一般の書店では販売されていませんが、下記のページから申し込めば、単月号を1部から購入可能です。必要事項をフォームに記入して申し込むと、雑誌本体と請求書兼払込用紙が送られてきます。

「地上」購読申し込み|地上|雑誌|一般社団法人家の光協会

写真はすべて撮り下ろし、文章も書き下ろしの写真紀行です。ご一読いただけると嬉しいです。

Laos, from Dawn till Sunset

寄り添う写真

昼、リトスタへ。写真展「Thailand 6 P.M.」に合わせて販売してもらうため、「ラダックの風息[新装版]」と「ラダック ザンスカール スピティ[増補改訂版]」を箱詰めして、家から両手で抱えて搬入。ちょうどランチの時間が始まったので、いわしの南蛮漬け定食とコーヒーをいただいて、本を読みつつ、しばし在廊。

地元の人や、この界隈でお勤めの人らしいお客さんが、30人弱ほどご来店。そこはかとなく耳をそばだてていると、「あら、写真が変わったわね! どこかしら?」「タイだって」「そういえば前にベトナムでさあ……」「誰それさんとカンボジアに行った時はね……」といった会話が、あちこちから聞こえてきた。何だか嬉しかった。今回の写真展は、ごはんを食べながらゆったりした気分で写真を眺めて、それぞれの旅の思い出話とかを楽しんでもらえたらなあ……というイメージで考えた企画だったからだ。

見る者を圧倒するのではなく、何気なく、寄り添うような写真。そういう写真も、あっていいと思う。

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アントニオ・タブッキ著、須賀敦子訳「島とクジラと女をめぐる断片」読了。小さくて悲しくて美しい「断片集」。個人的には「インド夜想曲」よりもこっちの方が好きだ。最後のクジラのひとことが、くっと胸に刺さった。僕もアラスカで、クジラにああ思われていたのかもしれない。

どうということのなさ

今週から始まった写真展「Thailand 6 P.M.」。水曜のオープニングの時にも、来場者の方々からいろんな感想をいただいたのだが、中でも「これ、いいですね」と言ってくれる方が多かったのは、この写真だった。

これは、去年チェンマイで撮ったもの。特に有名な場所にある石像とかではなく、つぶれて閉店してしまったらしいスパかエステか何か、その系統のお洒落系の店だった場所の軒先に、ぽいっと打ち棄てられていたものだ。たまたまその場所を通りがかった時、暮れていく太陽の柔らかな光がスポットのように石像の横顔に当たっていたのを、カメラで何枚か撮った。今はもう、あの場所にこの石像はないかもしれない。

どうということのない写真といえば、その通りだと思う。でも僕は、その「どうということのなさ」に、なぜか惹かれる。ささやかな、どうということのなさに感じる、いとおしさ。いとおしいものは、僕たちの身の回りに、たくさんある。

なごり雪

昨日の昼は、リトスタで今週から始まったタイ写真展のオープニングパーティー。そろそろ会場に向かうか、と支度していた時、ふと窓の外を見ると、景色が真っ白に。雪、というか、吹雪? びっくりするくらい降っている。

よりによってこのタイミングで、なんてこった……と頭を抱えながら、ともかく傘をさして出かける。歩いてくうちに、傘がどんどん、雪でずっしり重くなる。春分の日なのに。タイ写真展のオープニングなのに。雪かよと。

どうにかこうにか会場入りして、今日はもう誰も来ないかも……と鬱な気分になっていたのだが、みなさんとても良い方々ばかりで(感涙)、遠くからはるばると集まってきてくださった。こんな雪の日にこういう写真見ると、なおさら南国に行きたくなるよね! みたいなノリで。ごはんもたらふく召し上がっていただけて、ほんと、ありがたやである。

しかしまあ、なごり雪にしてもさあ……。おかげで、たぶん一生忘れられない写真展のオープニングになった。