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デリーの地下鉄

インドの首都、デリーの市内と空港とを結ぶ地下鉄が、昨日から運行を開始したそうだ。空港ターミナルからニューデリー駅まで、約20分。料金は80ルピー。

すごい。ついに、ここまできたか‥‥(感涙)。

デリーを訪れたことのない人にはピンと来ないかもしれないが、インドを旅するバックパッカーにとって、飛行機でデリーに到着してからの行動は、ずっと鬼門だった。空港から市内までは20キロ以上離れているので、これまでは、バスかタクシーかオートリクシャーを使うしかなかったのだ。

だが、空港で旅行者を待ち受けているタクシーには悪い輩がうじゃうじゃいて、うっかり乗ってしまった旅行者を悪徳旅行会社に連れていって軟禁状態にして、バカみたいに高いツアーを無理やりブッキングさせるという所業が、ずっと前から横行していた。僕も初めてインドを旅した時に、そういう悪徳タクシー&旅行会社に高額なツアーを組まされてしょげている日本の大学生たちに会ったことがある。プリペイドタクシーの導入などで多少は改善されたらしいが、それでも被害は後を絶たなかったそうだ。

しかし、この空港と市内を結ぶ地下鉄があれば、悪徳タクシーに惑わされることなく、わずかな時間で市内に投宿できる。帰国便に乗るために市内から空港に向かう時も、下手をすると二時間もかかる渋滞の心配をする必要もなくなる。いやー、すばらしい。もはや、デリーは鬼門ではなくなった。

‥‥まあでも、あれほどの大国の首都で、空港と市内を結ぶ鉄道が今までなかったということの方が、驚きといえば驚きだけど(笑)。

いきなり本丸

昼、リトスタで人に会う。とある旅行会社の方で、今月末から視察も兼ねてチャダル・トレックに行くため、僕にいくつか聞きたいことがあったのだという。

お互いにラダックや他のチベット文化圏をよく知っていることもあって、話はずいぶん盛り上がった。でも、一番驚いたのは、僕が水面下で進めている本の企画について話した時。「あそこの出版社から出せるといいんですけどねー」と何気なく口にしたら、「あ、その出版社の編集部の方、知り合いですよ。ご紹介しましょうか?」という申し出を受けたのだ。詳しく聞いてみると、まさに僕が企画の持ち込みを打診しようとしていた部署の責任者の方だった。これから城攻めに取りかかろうと思っていたら、いきなり本丸に突入してしまった感じ。びっくり。

その後、話はトントン拍子に進んで、再来週あたりには最初のプレゼンをさせてもらえそうなところまで漕ぎ着けた。この企画が先方の社内で生き残れるかどうかはまだわからないけど、うまくいけば、ちょっと面白いことになるんじゃないかと思う。手持ちの武器を各種取り揃えて、プレゼンに備えるとしよう。

団体行動

終日、部屋で仕事。といっても、来週以降の打ち合わせの日時を調整するための連絡業務くらいか。いくつかのたくらみが、水面下で徐々に進行しつつある。

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ここ数年、僕の両親は猛烈な海外旅行熱に浮かされていて、二、三カ月に一度のペースでどこかしらに出かけている。去年はたしか、ザンスカールに、アラスカに、パタゴニアに‥‥たぶんもっと行っているはず。今年は今年で、タスマニアやドロミテに行く気らしい。旅行費用も相当な金額になると思うのだが、両親にしてみれば、身体が五体満足に動くうちに、行けるところにはかたっぱしから行っておくつもりなのだろう。

こういう話を他の人にすると、「やっぱり、同じ旅好きの血が流れてるんですね」と言われたりするのだが、両親と僕とでは、根本的に違うところがある。両親が旅に出る場合は、必ずツアーか手配旅行。母親曰く「自分たち以外の同行者がいないと寂しい」のだとか。一方、僕は、いわゆるツアーというものに参加した経験がまったくない。自分勝手というか、協調性がないというか、とにかく団体行動を強いられるのがものすごく苦手なのだ。

こんな性分だから、会社勤めにも馴染めなかったんだろうな‥‥(笑)。仕事にしても、旅のスタイルにしても、収まるべきところに収まったということか。

羽田空港からブータンへ

午後、原宿で打ち合わせ。とりあえず、当面の懸案事項がクリアされたので、わかりやすい形で仕事を受けられるようになった。これで、すっきりした気分で年を越せそう。

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昨夜、知人から教えてもらったのだが、来年五月から、羽田空港からの深夜便でブータンに行けるようになるらしい。羽田を22時に出発し、翌朝6時にバンコク着。そこでドゥルクエアに乗り換えて、10時にはパロに到着。会社勤めの人でも、金曜夜に仕事が終わった後に飛べば、土曜の午前中にはブータンに着くのだ。これはかなりすごい。糸井重里さんもほぼ日で反応してるし。

旅の楽しみ方は人それぞれだし、ブータンには一日200ドルの公定料金というルールもあるので、その枠をめいっぱい使って豪遊するという人もいるかもしれない。でも個人的には、せっかくブータンに行くのなら、かの地で暮らす人々のありのままの暮らしに触れてほしいなと思う。たとえば、風の旅行社ではブータンでのホームステイを含むプログラムを催行しているので、興味のある方は問い合わせてみてもいいかも。

まあでも、やっぱり、一日200ドルは高いなあ‥‥(苦笑)。

旅とは何か?

昨日のトークイベントは、「旅を撮る。旅を書く。旅を生きる。」というテーマを掲げることにしたのだが、その中で「自分にとって、旅とは何か?」という問いかけについて考えていた時、思ったことをつらつらと。

僕にとっての旅は、自分が一番自分らしくいられる時間。そして、自分のちっぽけさを思い知らされる時間。どこかに旅に出るたびに、自分がいかに何も知らないか、何もできないかということを、嫌というほど突きつけられる。

世間には、「放浪しようぜ!」とか「旅に出ちゃえば?」とか、旅をすることがまるで何か特別な人間になれる行為であるかのように吹聴している人もいる。でも、旅をすること自体は、別にすごくもかっこよくもない。時間と予算と健康な身体とパスポートがあれば、誰にでもできることだ。アジア横断しようが、世界一周しようが、インドの山奥に何年も住み着こうが、それで何かを成し遂げたわけではないし、誰かのために尽くしたわけでもない。

旅の時間の中では、いいこともあれば、悪いこともある。そこで何を感じ、受け取るか。そこから自分が何をするか。漠然と旅をするだけでなく、そこまで考えていって初めて、その旅がかけがえのない時間になる。たぶん、すぐには答えは見つからない。僕自身も未だに消化しきれていない。でも、これからもずっと、考え続けていこうと思う。写真を撮ったり、文章を書いたりするのは、そうして考えたことを人に伝えていくための手段だ。

たぶん、それが僕にとっての旅。