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「横道世之介」

yonosuke

この間、Apple TVで「横道世之介」という映画を借りて観た。いろんなところでいい評判は聞いていたけれど、それでも予想以上にいい映画だったので、びっくりした。今でも思い出すと、胸のあたりがほわほわしてくる。

1987年の春、故郷の長崎から上京して、大学に通いはじめた主人公、横道世之介。素直なんだけど、どこか人とズレていて。ズレてはいるんだけど、でも、彼なりにまっすぐに歩いてて。のんきでお人好しで、普通すぎて笑っちゃうくらい普通の人。大学とバイトと、恋と憧れと友達と、貸してもらった一台のカメラ。そんな世之介の穏やかな日々。そして、その16年後に起こった出来事‥‥。

「おれが死んでもさあ、みんな泣くとやろか?」
「世之介のこと思い出したら、きっと、みんな笑うとじゃなかと?」

もう遅いかもしれないけど、できれば僕も、みんなに笑って思い出されるような人でありたい。

好かれる人

昨日は夕方から銀座へ。ジュレーラダックの元スタッフ、荒川さんの結婚パーティーの二次会に出席。

荒川さんは数年前にカナダの農場で働いていた時期があって、ご主人のグラントさんとはその頃に知り合ったそう。会場は銀座のど真ん中だけあってすごく華やいだ雰囲気で、そんな中に、普通に黒のタートルネックセーターにピーコートという格好で乗り込んでしまった(苦笑)。会場にはびっくりするくらい大勢の人が集まっていたのだけれど、とても和やかな雰囲気で、素朴で飾らない、誰からも好かれる荒川さんらしい、いいパーティーだったと思う。

終わった後は数人の知人と、近くのルノアールでお茶。みんなそれぞれ、いろんな人生があるのだな。

消耗と補給

昨日は、火曜と同じ吉祥寺の現場で、朝から夕方まで取材。天気は荒れ模様で寒いし、取材の件数もこの日だけで七件もあったので、精神的にも体力的にもかなりしんどかった。すべて終わって現場を離れた時は、文字通りフラフラで、目が疲れてショボショボして、まともに開けてられないほどだった。

夜は西荻窪に移動して、ひさしぶりにのらぼうで晩餐。出汁巻き卵やじゃがいものかき揚げ、牡蠣と牛蒡の土鍋ごはんなど、本当にうまかった。食べてるうちに栄養がじわじわしみ込んで、身体にしゃんと力が入るようになった。

こてんぱんに消耗した一日だったけど、最後の最後でおいしいものを補給させてもらえて、報われた気がする。

ふたりのルーツ・ショー

昨日の夜は、恵比寿で開催された、アン・サリー&畠山美由紀「ふたりのルーツ・ショー」を観に行った。

同い年で誕生日も一日違いという仲良しの二人によるこのライブも、今年で三回目。僕は初参加だったのだが、二人とも大人の余裕というか、茶目っ気たっぷりのゆったりした雰囲気のライブで、本当に楽しかった。渋いチョイスの曲はもちろん、松田聖子やシュガーの懐かしの曲、さらにはアンさんの「矢切の渡し」に美由紀さんの「好きになった人」という演歌セクションもあり、会場も大盛り上がりだった。あれだけ振れ幅の大きい曲たちを、超シンプルな編成でさらりと演奏してしまう笹子重治さんたちにも脱帽。

個人的にうれしかったのは、今まで一度も生で聴いたことがなかったアンさんの「時間旅行」を聴けたことだった。この曲、何かの拍子にふと思い出してiPhoneで聴くことが多くて、この間のタイ取材の時にも、バスでの移動中に外の景色を眺めながらよく聴いていた。果てなき旅へ、という最後のフレーズの余韻が、今も耳に残る。

ライブなんだけど、何だか「宴」と呼びたくなるような、本当にいい夜だった。来年もまた行けるといいな。

冬の嵐

朝から荒れ模様の天気。昼から都心に打ち合わせに行かなければならないのに、困ったな‥‥と思ってたら、幸い出かける頃には雨も止んでくれた。東西線が竜巻を警戒して徐行運転だったので、遅刻するかもとちょっと焦ったけど。

今日の打ち合わせは、みっちり二時間、新しい企画の進め方についての話し合い。本づくりの実作業そのものは大変でも楽しくもある時間だけど、それを実現するための助走期間は、とにかくただただ大変で、自分の力ではどうにもできない部分も多くて、精神的にもしんどい。まあでも、それも自分が選んだ道だから。

帰りは東京駅まで歩いて、中央線で。中野を過ぎたあたりで、どんよりとした雲が突然裂けて、眩い光がこぼれ出てきた。冬の嵐は、いつかは過ぎ去る。