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旅と写真とビールの夜

昨日の夜は、下北沢の書店B&Bで、「撮り・旅!」でもお世話になったブータン写真家の関健作さんとのトークイベントに出演させてもらった。諸事情で募集期間が実質2週間ほどしかなかったにもかかわらず、とんとんと順調に予約が入り、当日は完全に大入満員。お店が特別に仕入れたネパールのムスタンビールも完売し、関さんと僕の本もたくさん売れたらしい。ありがたいことだ。

僕にとっては、今年2月に一度やったことのある会場だし、お相手はトークの達人の関さんだし、客席の雰囲気や反応も最初からよかったしで、大丈夫大丈夫と自分で自分に言い聞かせていたのだけれど‥‥やっぱり緊張した(苦笑)。日曜の夜にわざわざお金を払って足を運んでくれた人たちを、自分の話と写真で楽しませなければならないのだから、簡単なわけがない。でも、イベントの後、うっすら上気した頰で会場を出ていくお客さんたちを見送っていると、やってよかったな、としみじみ思った。

昨日来てくれた方の一人が、イベントの感想をツイートしてくださっているのをたまたま拝見したのだが、「二人の写真は、撮影のために訪れた写真家の視点というより、ものすごく写真のうまい現地の人が撮っているようだ」と書かれていたのが、僕には何だかとてもうれしかったし、自分でも腑に落ちた。たぶん、僕や関さんの写真は、彼の地での被写体との距離が、とても近いのだと思う。物理的な距離というより、気持ちの距離が。

こてんぱんに疲れたけど、ほっとしたし、またがんばろう、と思えた一夜だった。

空の向こうの悲しみに

暗い空の下、強い風が吹き荒れる不穏な天気。まだ5月だというのに、台風が近づいているらしい。

幸い、今日は特に外に出かける用事もなかったので、丸一日部屋に閉じこもって、地味に過ごす。昼にかまたまうどんを作り、コーヒーをいれ、夕方は実家から送られてきたそばを茹で、青梗菜のおひたしを作った。冷蔵庫にはまだ一本ビールがあるし、このまま引きこもって嵐をやり過ごせそうだ。

台風から温帯低気圧に崩れた嵐は、ぬるい感触の雨を窓に叩きつけている。ネパールでは今日、大きな余震が発生して、またたくさんの死傷者が出てしまったという。雨音を聞きながら、遠い空の向こうの悲しみに、思いを巡らす。何か、できることはあるだろうか。

ラダックツアーとトークイベントのお知らせ

いきなりですが、お知らせを2つほど。

今年の夏、8月17日(月)から23日(日)頃にかけて、ラダックで催される現地発着ツアーのガイドを務めさせていただくことになりました。日本の旅行会社GNHトラベル&サービスと、サチさんが経営するラダックの現地旅行会社Hidden Himalayaとの共同企画ツアーです。詳細はこちらのサイトにて。

もう1つ、そのツアーの紹介もうっすら兼ねた形で、5月24日(日)の夜に下北沢の書店B&Bにて、ブータン写真家の関健作さんとのトークイベントを開催することになりました。関さんと僕がなぜ異国の地に向かったのか、そこで何に出会い、何を感じ、何が変わったのか、その根っこの部分から掘り起こすようなトークができればと思っています。イベントの申し込みはこちらのサイトにて。

どちらも、もしご都合の合う方がいれば、よろしくお願いします。

迷子の女子中学生たち

この間、陣馬山から高尾山まで山歩きをした時のこと。

陣馬山の山頂から尾根伝いの道を高尾山に向けてのんびり進んでいると、前方から、10人ほどの女の子たちがとぼとぼと歩いてきた。見たところ中学生くらいで、山道を歩くにはあまり向いてなさそうな服装と靴。遠足か何かで来たのだろうが、高尾山周辺ならともかく、この近くでこういう子たちを見かけるのは珍しい。

軽く会釈して行き過ぎ、しばらくの間歩き続けていると、やがて後ろから、ザッ、ザザッ、と誰かが駆けてくる足音がした。トレイルランナーかな、それにしては切羽詰まった感じの走り方だな‥‥と思ってると、「あ、あの! すみません!」

ふりかえると、さっきの女子中学生たち。片手にA4のプリントを握りしめた、班長らしき女の子が、意を決した感じで僕に声をかけてきた。

「あの、景信山はどっちですか?」
「こっちですよ。僕が歩いてる方向」
「えー! やっぱり間違ってたんだ‥‥」
「景信山に何しに行くの?」
「そこがおひるごはんの集合場所なんです。12時半に」
「それには間に合わないんじゃないかな。ここからたぶん1時間くらいかかるよ」
「えー! どうしよう‥‥」

班長さんはくたびれきった他の女の子たちと話をして、仕方ないから、と、僕の後をついて歩きはじめた。何だか妙な道連れができちゃったな。ていうか、これじゃまるで僕が、道に迷っちゃった引率の先生みたいじゃないか。

ほうほうのていで景信山に辿り着いた女の子たちは、待ち構えていた本物の引率の先生に、「まったく! あなたたちがいなくなるから‥‥!」と、こっぴどく怒られていた。まあ、これもいつか、いい思い出になるよ。