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見つめる先に

夕方、新宿の陶玄房へ。今夜は三井昌志さんと浅井寛司さんとの飲み会。

僕の場合、飲み会で一緒になる人が旅好きか写真好きのどちらかだと、がぜん場の居心地がよくなるのだが、今日のお二人は(当然ながら)その両方をこよなく愛する方々なので、本当に愉しい時間だった。この世の中の全員が旅好き写真好きになればいいのに(笑)。

三人とも旅のスタイルはかなり違うし、興味の向くベクトルもまちまちだけど、それぞれが見つめる先のそのまた先には、どこかにそこはかとなく通じ合うものがあるのかもしれない。人が世界と向き合う時に理屈抜きで感じる何かが。

またいつか、同じ顔ぶれで、それぞれの旅の報告ができるといいな、と思う。

同じ場所へ

午後、銀座のキヤノンギャラリーで開催中の大塚雅貴さんの写真展「サハラの風」へ。大塚さんご自身によるギャラリートークを拝聴させていただく。

大塚さんはサハラ砂漠、特に近年はニジェールの辺境の地に暮らす人々の姿を撮影している。砂漠の中に舞う鮮やかな民族衣装と、輝く黒い瞳。同じ場所に何度も通うことで少しずつ培った信頼関係があればこそ撮ることのできた、素晴らしい作品の数々だった。

世界各地を撮る写真家には、大きく分けて、移動をくりかえしながら新鮮な感動を探し続けるタイプの人と、同じ場所に何度も通って求めるテーマを深掘りし続けるタイプの人がいると思う。大塚さんは間違いなく後者だし、僕もおそらくそうだ。もちろん、同じ場所といっても広いから、その中でいろいろ動き回ったりあれこれ試したりするのだけれど。

僕の場合、ラダックで深掘りし続けているうちに、だんだん自分自身の個性とかこだわりとかが消えて透明になっていくような感覚を感じていた。そこに居合わせて、あるがままを撮り、書く、そんな感じ。人それぞれ、いろんなアプローチがあるのは当然だし、それぞれ違ってるからこそ面白いのだけれど。

そんなわけで、今月末から僕は、また同じ場所へ戻ることになる(笑)。

旅との向き合い方

今年に入ってから、トークイベントに出演する機会がやけに多かったのだが、この週末はひさしぶりに観客の立場で、他の方のトークイベントを続けざまに観に行くことになった。金曜の夜は、代官山蔦屋書店での竹沢うるまさんのイベント。そして今日の昼は、4カ月のインドの旅を終えた三井昌志さんのイベントだった。

竹沢さんも三井さんも、「撮り・旅!」での仕事を通じてその人となりはある程度知っているつもりだったが、あらためてこういう機会に話を聞くと、旅との向き合い方、自分自身との向き合い方、写真や文章との向き合い方、本当にそれぞれ個性があって違うのだなと感じた。誰が正しいとか間違っているとかではなく、それぞれが身を以て積み重ねてきた経験を通じて、自らの手で選び取ったものなのだ、と。

僕自身の旅や自分との向き合い方も、竹沢さんや三井さんとはたぶんかなり違う。僕にとってのそれは、心の底から大切だと思える場所を探し続けること。遠く離れていても、大切な人たちを忘れずに思い続けること。もしかするとそれは、もはや旅でも自分云々でもないのかもしれないけれど、僕にとって譲れないものがあるとすれば、それなのだと思う。

‥‥いい年こいて、青臭いこと書いてるなあ(苦笑)。まあいいや。

長すぎる夏

東京は、昨日、今日と真夏日。急に、むしっ、と暑くなった。今年の夏はいささか気が早いのかもしれない。

個人的には、夏にはもうちょっと遠慮しといてもらいたいというのが、正直なところ。だって今年は、6月末からインドに2カ月。帰ってきたら日本は残暑まっさかりだろうし、それが終わらないうちに、9月末からは例によってタイに1カ月。いつまでたっても夏が終わらない(苦笑)。

長い長い、長すぎる夏。夏が似合う男なわけではまったくないんだけどな‥‥。

旅と写真とビールの夜

昨日の夜は、下北沢の書店B&Bで、「撮り・旅!」でもお世話になったブータン写真家の関健作さんとのトークイベントに出演させてもらった。諸事情で募集期間が実質2週間ほどしかなかったにもかかわらず、とんとんと順調に予約が入り、当日は完全に大入満員。お店が特別に仕入れたネパールのムスタンビールも完売し、関さんと僕の本もたくさん売れたらしい。ありがたいことだ。

僕にとっては、今年2月に一度やったことのある会場だし、お相手はトークの達人の関さんだし、客席の雰囲気や反応も最初からよかったしで、大丈夫大丈夫と自分で自分に言い聞かせていたのだけれど‥‥やっぱり緊張した(苦笑)。日曜の夜にわざわざお金を払って足を運んでくれた人たちを、自分の話と写真で楽しませなければならないのだから、簡単なわけがない。でも、イベントの後、うっすら上気した頰で会場を出ていくお客さんたちを見送っていると、やってよかったな、としみじみ思った。

昨日来てくれた方の一人が、イベントの感想をツイートしてくださっているのをたまたま拝見したのだが、「二人の写真は、撮影のために訪れた写真家の視点というより、ものすごく写真のうまい現地の人が撮っているようだ」と書かれていたのが、僕には何だかとてもうれしかったし、自分でも腑に落ちた。たぶん、僕や関さんの写真は、彼の地での被写体との距離が、とても近いのだと思う。物理的な距離というより、気持ちの距離が。

こてんぱんに疲れたけど、ほっとしたし、またがんばろう、と思えた一夜だった。