自宅でルーを使わずにスパイス主体でカレーを作るようになって、一年半くらい経つ。だいたい週に一度、金曜日にはカレーを作るようにしていて、カレーも副菜も、それなりにレパートリーが増えて、味もだんだん安定してきた。最初は何が何やら全然わからずに使っていた各種スパイスの特徴も、少しずつわかるようになった。
で、最近はついに、自分でビリヤニを炊くようにまでなってしまった。
ビリヤニというのは、ざっくり言うと、長粒米のバスマティライスを、スパイスや肉や野菜のグレービーと一緒に炊き込んだ料理だ。インドでも、地域によっては短粒米を使うところもあるし、調理法もさまざまなのだが、ちょっと贅沢なごちそうとして作られることが多い料理なのは、だいたい同じ。つまり、作るのに結構手間がかかる。かいつまんで言うと、まずカレーを作る要領でグレービーを用意し、バスマティライスを半炊きし、グレービーとバスマティライスを重ね合わせて、炊いて蒸らす。うちの場合、肉をマリネしたりする下ごしらえを含めると、2時間半から3時間はかかる。なので、ビリヤニを作ると決めた日は、かなり気合が要る(笑)。
でも、いい感じで炊き上がったばかりのビリヤニを、さっくり混ぜて盛り付けて、はふっと頬張った時の香りとうまみには、たまらないものがある。ほんと、なんでこんなにうまいんだろう。日本にも炊き込みごはんの類はいろいろあるが、それとはまた全然違う種類のうまさだ。
違いを生み出している一番の要因は、やはり、米だと思う。バスマティライスやタイのジャスミンライスのような長粒米は、日本の米よりも粘りが少なく、炊いてもさらっとしている。それをグレービーと合わせて炊き込むと、うまみがほどよく沁み込んで、しかも(うまく炊けば)べしゃべしゃにならない。そして、長粒米自体の独特の香りとスパイスの香りが相乗効果を醸し出す、というわけだ。
タイなどでよく食べられているカオマンガイ(海南鶏飯)も、長粒米のジャスミンライスを鶏のスープで炊くからこそ、あの味が出せていると思う。実際、家で日本米とジャスミンライスでカオマンガイを作り比べると、作り方にもよるのだろうが、後者の方が断然うまい。
バスマティライスは現地でも高級品なので、取材でインドにいる時も、たまにしか口にする機会はないのだが、自分でビリヤニを炊くようになってみて、あらためてその価値を実感できたような気がしている。
この間、バスマティライスを補充しておいたので、そのうちまた炊いてみようと思う。ビリヤニを。気合を入れて(笑)。