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南の国へ

明日から四週間弱ほど、日本を離れる。行き先はタイ。『地球の歩き方タイ』改訂版制作のための取材だ。およそ三年三カ月ぶりの取材になる。

去年の夏のインドで、ある程度は海外取材のリハビリはできていた気もするのだが、今回あらためて、荷造りをしたり、あれやこれやの書類を準備したりしていると、選択に迷ったり、うっかりしそうになったりすることが結構多くて、やっぱりコロナ禍のブランクは大きいなあ、と思う。今年は夏にも再びインドに行く予定なので、悠長なことを言ってるわけにはいかないのだが。

一時よりはいくぶんましになったものの、以前に比べると円安で両替のレートはよくないし、現地の物価もかなり上がっていると聞いているから、取材費をできるだけ節約しながらのつましい旅になりそう。まあ、もともとタイでは贅沢はまったくしないたちで、食堂や屋台のタイごはんですっかり満足できる人間なので、そんなにストレスはたまらないとは思う。

帰国は2月11日(土祝)朝の予定。流行り病にうっかりやられないように気をつけながら、いってきます。

『旅は旨くて、時々苦い』

『旅は旨くて、時々苦い』
文・写真:山本高樹
価格:本体1200円+税
発行:産業編集センター
B6変型判240ページ(カラー16ページ)
ISBN 978-4-86311-339-8
配本:2022年9月中旬

異国を一人で旅するようになってから、三十年余の日々の中で口にしてきた「味の記憶」を軸糸に綴った二十数篇の旅の断章が、『旅は旨くて、時々苦い』という一冊の本になりました。一部の書店では、特製ポストカード2種1組とセットにして販売されます。ポルべニールブックストアでは、サイン本と特製ポストカードのセットを店頭とWebショップで販売していただく予定です。よろしくお願いします。

長粒米を炊く

自宅でルーを使わずにスパイス主体でカレーを作るようになって、一年半くらい経つ。だいたい週に一度、金曜日にはカレーを作るようにしていて、カレーも副菜も、それなりにレパートリーが増えて、味もだんだん安定してきた。最初は何が何やら全然わからずに使っていた各種スパイスの特徴も、少しずつわかるようになった。

で、最近はついに、自分でビリヤニを炊くようにまでなってしまった。

ビリヤニというのは、ざっくり言うと、長粒米のバスマティライスを、スパイスや肉や野菜のグレービーと一緒に炊き込んだ料理だ。インドでも、地域によっては短粒米を使うところもあるし、調理法もさまざまなのだが、ちょっと贅沢なごちそうとして作られることが多い料理なのは、だいたい同じ。つまり、作るのに結構手間がかかる。かいつまんで言うと、まずカレーを作る要領でグレービーを用意し、バスマティライスを半炊きし、グレービーとバスマティライスを重ね合わせて、炊いて蒸らす。うちの場合、肉をマリネしたりする下ごしらえを含めると、2時間半から3時間はかかる。なので、ビリヤニを作ると決めた日は、かなり気合が要る(笑)。

でも、いい感じで炊き上がったばかりのビリヤニを、さっくり混ぜて盛り付けて、はふっと頬張った時の香りとうまみには、たまらないものがある。ほんと、なんでこんなにうまいんだろう。日本にも炊き込みごはんの類はいろいろあるが、それとはまた全然違う種類のうまさだ。

違いを生み出している一番の要因は、やはり、米だと思う。バスマティライスやタイのジャスミンライスのような長粒米は、日本の米よりも粘りが少なく、炊いてもさらっとしている。それをグレービーと合わせて炊き込むと、うまみがほどよく沁み込んで、しかも(うまく炊けば)べしゃべしゃにならない。そして、長粒米自体の独特の香りとスパイスの香りが相乗効果を醸し出す、というわけだ。

タイなどでよく食べられているカオマンガイ(海南鶏飯)も、長粒米のジャスミンライスを鶏のスープで炊くからこそ、あの味が出せていると思う。実際、家で日本米とジャスミンライスでカオマンガイを作り比べると、作り方にもよるのだろうが、後者の方が断然うまい。

バスマティライスは現地でも高級品なので、取材でインドにいる時も、たまにしか口にする機会はないのだが、自分でビリヤニを炊くようになってみて、あらためてその価値を実感できたような気がしている。

この間、バスマティライスを補充しておいたので、そのうちまた炊いてみようと思う。ビリヤニを。気合を入れて(笑)。

十月の東京

気がつけば、今日からもう、十月。

考えてみると、東京で十月を過ごすというのは、ものすごくひさしぶりだ。確か、2012年以来、7年ぶり。この時期は毎年、「地球の歩き方タイ」の取材で4週間ほどタイに滞在するのが常だったのだが、コロナ禍の影響で取材も無期延期になっているので、はからずもひさびさに十月の東京を体感できている、という次第。

まず、当たり前の感想なのだけれど、十月って、涼しいんだなと(笑)。いや、取材でタイに行くと、日本の夏の延長戦みたいな酷暑の日々がずっと続いて、全身黒焦げに日焼けして帰国するような状態だったから。この時期、東京ではどんな服を着ればいいのかなとか、寝具を秋冬に切り替えるタイミングはいつがいいのかなとか、割と新鮮な課題に直面している(笑)。

まあでも、とりあえずは、もうちょっと世の中が落ち着いてくれたらなあ、というところか。いろいろ制限されている中で、自分にできる範囲の仕事に淡々と取り組んではいるけれど、やっぱり、自由気ままにどこにでも行けるようになるに越したことはない。まあ、気長に待ちますか。

今年もぐなぐなに

去年と同様、今年のタイ取材でも、帰国直前に少し時間ができたので、自腹でタイマッサージを受けに行った。訪れたのは去年と同じ、バンコクのBTSオンヌット駅近くのマッサージ店が集まる一角。店自体は去年と違うところに入ってみた。

去年は足を中心にした1時間コースだったが、今年は上半身もかなり疲れていたので、上下合わせて2時間コースでお願いしてみた。今回担当してくれたのは、三十代くらいの男性のマッサージ師。マッサージオイルを使いながら、足の指の一本々々から、ゆっくり、きめ細かく、丁寧に施術してくれた。

僕の筋肉は相当に凝り固まっていたはずだったが、マッサージを受けている間、痛さに顔を歪めたり、不用意な加圧で筋が攣りそうになったりしたことは、ただの一度もなかった。どこまでも、丁寧に、なめらかに、一つひとつの筋肉を慎重に揉みほぐしていく。僕自身、学生時代は運動系の部にいたのでマッサージにもそれなりに慣れ親しんできたつもりだったが、今回バンコクで受けたのは、今まで経験したことのないような、別次元のマッサージだった。

本当に上手なタイマッサージというのは、こういうものなのか……。全身ぐなぐなに揉まれながら、何というか、タイマッサージの真髄に触れられたような気がした。