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耳慣れた国歌

終日、部屋で仕事。昨日取材した件の構成決めと、音声起こし。ほどほどのところで切り上げ、ビールの栓を開けつつ、ひさしぶりにテレビをつける。サッカーU-23代表の五輪最終予選がちょうど始まるところだった。対戦相手はタイ。

試合前に両チームの選手が整列し、それぞれの国の国歌が流れる。タイの国歌がテレビから流れてきた時、妙に耳慣れた感じがする歌だなあ……と考えていたら、はたと思い当たった。

タイでは毎朝8時と夕方6時に、テレビやラジオからタイ国歌が流れる。人々はどこにいてもピタッと立ち止まり、直立不動で国歌に耳を傾ける。毎年秋のタイ取材では、ほとんど毎日この国歌タイムに遭遇するから、いつのまにか僕の耳にすっかり馴染んでいたのも、当たり前といえば当たり前だ。

考えてみたら、毎年約1カ月、3年連続でタイに行ってるんだよなあ……今年も行くことになるのだろうか。いったい、いつまであの国に行くことになるのだろう。うーむ。ま、いいか。

セーフティーゾーン

終日、部屋で仕事。タイのゲラチェックに取り組む。

この作業、先週末から他のいろんな予定の合間に少しずつ進めていたので、今日と明日を自宅作業に充てれば、まずまず余裕を持って着地できる、はずだった。ところが今日の夕方、版元から急に追加リクエストが来て、かなり作業量が増えてしまったのだ。もし、今週の木曜と金曜は自宅作業ができるからと楽観視して、週末から今日までの細かい合間に作業を進めないでいたら、相当ヤバかったんじゃないかと思う。

編集の仕事で進行管理をする時、もし何か突発的な事態が生じても切り抜けられるようなセーフティーゾーンを設けておくことは、結構大事だ。老婆心といえばそれまでだが、今回に限らず、実際に何度もそれでギリギリ切り抜けてきた経験があるし。

まあ、一番いいのは、何事も起こらずにすべてが穏便に進行することだけど、正直言って、この業界でそんなことはめったにない(苦笑)。

Thailand 2015

あの日、あの場所

lampang
ここ数日、先月のタイ取材で撮ってきた写真のセレクト作業に、黙々と取り組んでいる。今回の写真の用途はガイドブックだから、グラビアページの構成に合わせて、内容の説明に必要なものや、わかりやすいキャッチーな絵柄のものを選んでいく。だから、写真としてはいい出来でも、用途にそぐわないので選ばれない写真も出てくる。

昨日のセレクト作業の中でも、本当に何気ないスナップショットで、場所や内容的にもガイドブックへの掲載用にはたぶん選ばれない一枚に出会った。タイ北部の小さな町、ラムパーン。週末のナイトマーケットが始まる少し前、西の地平線から射す光の中を、母親と三人の子供たちが歩いている。ほとんど何も考えず、反射的にシャッターボタンを押した。地味な写真かもしれない。でも、少なくとも僕にとっては、今見返すと、胸のあたりにじんわりとしたものがこみあげる、いろんな思いをめぐらせたくなる写真だった。

あの日、あの場所に、彼らがいて、僕がいた。

バンコクの電車

タイの首都バンコクは、周辺部を含めると人口が1500万人近くに達する巨大都市。街を行き交う車の数はすさまじく、どこもかしこも常に渋滞。場所や時間帯にもよるけれど、タクシーやトゥクトゥクでは、いつまでたっても目的地に着ける気がしない(苦笑)。だから先日の取材中は、常にBTS(スカイトレイン)とMRT(地下鉄)を軸に、必要に応じてチャオプラヤー・エクスプレス・ボートを組み合わせて街の中を移動していた。

BTSやMRTの車内はキンキンにエアコンが効いていて、椅子などもとても清潔。液晶モニタに流れる広告には日系企業のCMも多い。乗客たち、特に若い子たちはみんな、一心不乱にスマホをいじっている。そんな感じの車内なので、時々、東京で電車に乗ってるような錯覚に陥りそうになる。

ただ、一つ大きく違うと感じたのは、停車駅で年配の人や小さいお子さん連れの人が乗ってくるたびに、それまでスマホをいじってた若い人たちが、スパッ!と立ち上がって席を譲っていたことだった。体力的に弱い立場の人を丁寧に気遣う彼らの態度は、仏教を篤く信仰する国だからというのもあるだろうが、東京の電車内の風景とはずいぶん違う。東京はほんと‥‥バレバレなのに寝たふりしてる若い人とか、結構いるし。

この点において、バンコクは東京に圧勝だなあ、と思う。