Tag: Society

口パクという嘘

年の瀬になって、テレビで大がかりな歌番組が放映されることが多くなってきた。そういう番組をたまに横目で見ていて思うのは、実際には歌わず、口パクで出演している歌手が多いこと。特に、大人数で激しいダンスを踊るアイドル系グループの大半は口パクだ。

まあ、ぜいぜい息を切らしながらヨレヨレの生歌を聴かせるより、綺麗に整った音を流して口パクで合わせる方がリスクが少ないという、テレビ業界の常識みたいなものもあるのだとは思う。この間、某番組に出演していた国民的アイドルグループが、口パクのつもりで曲に入ったらボーカルが出てなくて、あわてて生歌に切り替えたものの、音程が「迷宮入り」して悲惨なことになったという、気の毒(?)なニュースも目にしたけど。

ただ、口パクはやっぱり、歌っているフリをしているという、嘘でしかない。そして嘘は、本当には人の心を動かすことはできないし、たとえ心を動かされた人がいたとしても、それはほとんど騙されているようなものだと思う。

歌手とかアーティストとか名乗るなら、正々堂々と歌ってみろや。

畠山美由紀「わが美しき故郷よ」

畠山美由紀の曲は、昔から好きでよく聴いていた。気がつけばソロアルバムはほぼ全部持っているし、Port of Notesのベスト盤もある。特にお気に入りの「わたしのうた」は、iPodに入れてラダックに持って行ったりもした。豊かな低音から伸びやかな高音まで、素晴らしい安定感で歌い上げる彼女の歌声は本当に魅力的で、機会があればライブにも足を運んでみたいと思っているのだが、未だ叶わないでいる。

その畠山美由紀の5枚目のアルバム「わが美しき故郷よ」は、過去の彼女の作品とは、根本的に違う。彼女の故郷は、宮城県気仙沼市。3月11日の東日本大震災の後、これまでに感じたことのない痛みと喪失感に苛まれながら、彼女は歌い手として必死の思いでこの作品に取り組んだのだという。

いつも心の奥底にある、大切な故郷の記憶。そこではずっと、美しい海と山と川と、懐かしい町と、心穏やかな人々が暮らしているはずだった。そのかけがえのない故郷で、たくさんの命と、たくさんの大切なものが失われてしまった。書かずにはいられなかった言葉。歌わずにはいられなかった曲。その抜き差しならない彼女の思いが、この作品の中にぎゅっと込められている。特に、表題曲となっている「わが美しき故郷よ」の詩の朗読と楽曲は、じっと耳を傾けていると、目に涙が滲んできて仕方なかった。

どれほどの哀しみに襲われようと、それでも、地球は回り、夜が明け、明日が来て、人生は続いていく。みんな、胸の奥に痛みを抱えながら、互いに手を差し伸べ、優しい言葉をかけあって生きていくのだ。彼女は未だ癒えない哀しみとともに、これから続いていく世界を全力で肯定しているように感じた。

忘れてはいけないものがある。たとえそれが、哀しい記憶であっても。

無神経な広告

これは、僕自身ではなく、知人が体験したことなのだけれど。

先日、知人が書店で本を買った時、ちょっと変わったブックカバーをつけられたのだという。そのブックカバーには、ソニーの電子書籍リーダーの広告が印刷されていたのだ。

ソニーや広告会社からしてみれば、自社の商品を売り込みたい読書好きな人にアピールする意図でこういう広告を企画したのだと思う。でも、知人は、自分が楽しみに買った本にそういうブックカバーをかけられてしまって、何だか残念で寂しい気持になったのだそうだ。僕がその立場でも、同じように感じたと思う。

読書好きな人すべてが、紙の本も電子書籍も分け隔てなく受け入れているわけではない。また、両方を受け入れている人でも、紙の本を買う時には愛着のある「モノ」として欲しいと思うから買う場合が多いだろう。電子書籍の広告入りブックカバーを発案した人は、それで嫌な気持になる人も少なからずいるということまで、考えが及んでいなかったのではないだろうか。

はっきり言って、紙の本が好きな人にとっては無神経な広告でしかないと思う。ソニー、残念。

スライム肉まんの日

今日は一日中、家で仕事をしていたのだが、Twitterのタイムラインを見るかぎり、日本国内はスライム肉まんの話題でもちきりだった。

ファミマが発売したこの肉まん、僕は色が青いというだけでも思いっきり食欲が萎えてしまうのだが、世間では意外なくらい好評だったらしく、もうほとんど売り切れ状態。「全滅」という貼り紙をした店もあったとか(笑)。知人の旦那様は、入籍記念日にスライム肉まんを買って帰ろうとして玉砕したそうだ。

で、首尾よく買った人たちは、あの手この手で遊んだ写真をWebにアップしている。ホイミスライムやメタルスライムにしたり、一刀両断したり‥‥。まあ、お世辞にもうまそうには見えないのだが(笑)、味はどうだったんだろ?

はー。日本人って、のほほんとしてるなあ。

土曜の午後なのに

朝起きて、居間のカーテンを開けると、窓の外の生け垣の向こうを、白いヘルメットを被った人たちがうろうろしていてびっくり。しばらくすると、ダダダダダ、とドリルがアスファルトを砕く音や、ガーッ、ガーッ、とパワーショベルが地面をほじくり返す音がしはじめた。どうやら、ガス管を耐震性のあるものに交換する工事をしているようだ。

まあ、そういう工事が必要なんだったら、おやりになればいいとは思うが‥‥土曜日だよ? うららかな日射しが射し込む窓辺でソファに坐って、コーヒーでも飲みながら、本を読んだり、音楽を聴いたりしたかったのに‥‥。テレビのボリュームを相当上げても、何も聞こえないほどの轟音が、そこら中に響き渡っている。あー、また、ダダダダダってやりはじめた‥‥。

武蔵野市、公共工事をやるならやるで、適切なタイミングを考えないと、住民の反感を買うと思うのだが如何。