Tag: Society

脊髄反射

しばらく前から訳あって疎遠になっている海外在住の知人からメールが来た。一時帰国するので、会って話したいことがあるという。「メールだけでは相手を傷つけてしまうこともあるので、直接会って話した方がいいと思う」とも。

僕がその人と距離を置くようになったのは、その言動や態度にこちらの気持を察しようとしない無神経な面があり、僕個人の仕事にも干渉されかねない状況もあったのに辟易としていたからなので、今さら会おうと言われても気が重かった。考えた末、「自分としてはこれ以上特に伝えたいことはないが、会うなら今のこちらの仕事が一段落する頃に再度連絡してほしい」と返信した。

すると、「やっぱり会う必要はないかもしれないと思うようになった。もし気が変わったらまた連絡する」という返事が来た。いったいどっちなんだと思ったが、会わないことを了承した上で「そちらで自らの言動や行動を省みるつもりがないようなら、こちらとしてはお会いする意味はないと思う」と返した。

そしたら、明らかに脊髄反射的に書いたと思われる、猛烈に激昂した感じの長文メールが返ってきた。で、最後に「返信されても読みません」と(苦笑)。誰だっけ、「メールだけでは相手を傷つけてしまう」とか書いてたの?

その点においてだけは、僕もまったくもって賛成なのだが。

安心のための選択

夕方、かなり大きな地震。うちはマンションの一階だし、さほど揺れはしなかったが、揺れ続けた時間の長さに不安がよぎる。東北地方に津波警報。場所によっては、1メートルくらいの津波が観測されたらしい。大事には至らなくて、ほっとする。

東日本大震災の記憶が薄らぎかけている人もいる中での、この余震。来週末の選挙の結果にも、かなり影響するような気がする。少なくとも僕は、原発の維持を唱える政党には投票したくないし、その辺をむにゃむにゃ言ってごまかしたり、言ってることがコロコロ変わったりする政党にも投票したくない。まあ、反原発を唱えている政党でも、具体的なビジョンや方策を何も持たないまま、票集めのためだけにそう言いふらしてる輩も少なくないのが、頭の痛いところではあるが‥‥。

結局、安心できるかどうか、なのだと思う。安心して暮らしていくための選択をする機会は、今度の選挙を逃したらしばらくは訪れない。国民投票ができない以上、この際、原発について、イエス・ノーの意思表示をするための選挙と割り切ってもいいような気がしている。僕はそのつもりで、投票所に行く。

与しやすし男

最近、頼みごとをされる機会が増えた。多いのが、「ラダックの写真を使わせてほしい」というのと、「イベント(またはメディア)に出てほしい」という依頼。知り合いからの場合もあれば、まったく見ず知らずの人から連絡を受けることもある。

基本的に、本業に支障がない案件で、読者にもちゃんと喜んでもらえて、条件面でもそこそこ妥当な線なら、引き受ける方向で対応している。ただ時々、「えっ?」というような形での依頼をされることがある。会ったこともないのに、いきなりTwitterのリプライで依頼してきた人も、今までに二、三人いる(苦笑)。「DMを送りたいのでフォローしてください」とか。何でそんなことしなきゃならないのか。

僕の本を読んでもいないのに、ノープランでざっくりと「ラダックのイベントをしてください」と依頼してきた人も、二人や三人ではない。いったい、僕にラダックの何についてしゃべらせたいのだろう? 依頼内容以前に、人に頼みごとをする際のごく当たり前の手順を踏まない人が多いことに、愕然とする。

あれかな、世間的に僕は「与しやすし男」と思われてるのかな。さして知名度も高くなく、頼めば何でもホイホイ引き受ける、みたいな。これからは気難しく腕組みして、威圧感を出す方向で行こうかな(苦笑)。

頭を下げられない人々

仕事で、日常で、旅先で、いろんな人に出会う。僕はもともと人付き合いのいい方ではないので、誰かと深く関わるのも割と慎重を期する方なのだが、それでもたまに、相手を見誤ったり、本性を見抜けなかったりして、困った目に遭わされることがある。

そういう困った人たちには、かなりの確率で共通している要素がある。それは、「頭を下げられない」ということ。

誰かに対して(時に実害を伴うような)迷惑をかけた場合には、「すみませんでした」と頭を下げる。誰かから明らかに感謝するに値する行為をしてもらった場合には、「ありがとうございました」と頭を下げる。たとえ相手のことを内心快く思ってなかったとしても、下げるべき時に頭を下げるのは、人として当たり前のことだ。だが、僕が遭遇してきた困った人たちは、この当たり前のことができない。その人が頭を下げるのを拒否した瞬間、それはこっちにとって、「あー、ダメだわ、この人」と、その人を見限る決定打になるのに。

まあ、いい年こいた大人になっても頭を下げられない人に対して、今さらこんな初歩的なことを指摘しても、時すでに遅し、なのだろう。こういう人の話題が他の人との間で出ると、たいてい、「あー、あの人ね」と、失笑とともにほかの困ったエピソードがずらずら出てきたりするものだから。

そういう人とうっかり関わってしまった時は、ヤレヤレ ┐(´-`)┌ と呻きつつ、その後できるだけ接触しないようにするしかないかな。

行ったり来たり

今日は夕方から、駒場東大前で取材。吉祥寺まで歩いて、井の頭線に乗ることにした。

渋谷方面から来て折り返し運転をする列車に乗ると、向かいの席に、爆睡してるサラリーマン風の男性が残っていた。渋谷にある家電量販店の紙袋を抱えていたので、渋谷から来たのだろう。起きて降りないのかな‥‥と思ってるうちにドアが閉まり、出発。彼は熟睡したまま。

列車が永福町に着いた時、ハッ!と彼は目を覚まし、キョロキョロあたりを見回す。永福町という駅名を確認し、ほっとした顔をして、また坐り直した。あー。違うのに。もう折り返してるのに。

彼があわてて降りていったのは、明大前に着いてからだった。おつかれさま。