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憎しみの理由

昨日はこまごました仕事で夜更かしして、今日は昼頃まで寝ていた。のっそり起きてMacを開き、パリで起きた無差別テロのニュースを知って、いきなりぶん殴られたかのように愕然とする。仕事で現地入りしていた知人は幸い無事だったが、それにしても、しかし‥‥。

「卑劣なテロにはけっして屈しない」「テロリストとは断固として戦う」と、各国首脳は口を揃える。確かに、テロはけっして容認されるべきではない行為だ。でも、テロはどんなに力ずくで抑え込もうとしても、ただそれだけではけっして根絶やしにはできない行為でもある。なぜ、何の関係もない無辜の人々を巻き込んでまで、テロリストは攻撃を仕掛けるのか。歩み寄るとか妥協するとかいう意味ではなく、彼らが憎しみを抱く理由にきちんと向き合おうとしなければ、テロの連鎖は永久に止まらない。

日本も、そうしたテロの連鎖と無縁ではないと思う。海の向こうの他人事などでは、けっしてない。

「妬み」について

自分が仕事をしながら生きていく上で、他の誰かから「妬み」という感情を持たれるなんて、金輪際ありえないだろう、としばらく前まで思っていた。でも、たぶん数年前、自分自身で書いたり撮ったりして本を作るようになった頃から、ほんの時折、そういう予想外の波動を感じるようになった。

「妬み」の原因と構造は、案外シンプルだ。相手より自分の方がセンスや実力や経験値が上なのに、相手の方が周囲から不相応に評価されて、自分よりおいしい思いをしているのが面白くないから、とか。煎じ詰めればだいたいそんな感じ。たいていの場合、そういう人の自己評価はどこかしらズレているか、よくても実力はせいぜい相手とどっこいどっこいのレベルだと思うのだが。

「妬み」を感じること自体は、別に悪いことではない。その悔しさをバネに実績を伸ばす、負けん気の強い人はたくさんいる。ただ、困ったことに、その「妬み」をネガティブな方向に発散させてしまったりする人もたまにいる。相手に対する不当な圧力や妨害、第三者に向けての中傷、ネットを使った匿名の中傷‥‥。そんなことをしても自分の評価は上がるわけがないし、単に自分自身の心を貶めるだけなのに。

「妬まれる」側にも、問題があるのかもしれない。世間の評価に実力が伴っていないのかもしれない。たとえば僕の場合は、評価も実力も稼ぎもいずれもいまいちなので(だから妬まれる理由がわからないのだが、苦笑)、「妬み」を完全に回避するには、そういう感情を相手が持つ気にならなくなるくらい、実力を伸ばさなければならない。でも僕は、持って生まれた乏しい能力をこれ以上伸ばすのは無理なので、自分の携わる分野で、小さな結果を気長にコツコツ積み上げていくしかない。誰も追随する気が失せてしまうくらい、淡々と、コツコツと。

まあでも、その前に、仕事に関わることで誰かを妬むなら、心底くだらない中傷や裏工作に走ったりせず、自分の仕事でそれ以上の結果を出して跳ね返してみせろや、とは一応言っておきたい。ほんと、くだらないことはやめましょう。

インプット、アウトプット

昨日は、天王洲アイルで開催されている「国境なき子どもたち」の写真展へ。四者四様、それぞれの写真家の方々のまなざしとまっすぐな思いが伝わってきて、素直にじーんときた。京都から上京されていた吉田亮人さんにひさしぶりにお会いできたのも嬉しかった。

その後は青山に移動して、イッテンモノ展へ。ここでも、たかしまさんやまつばらさんにひさびさにお会いできた。個性的な作家のみなさんが手作りのイッテンモノを販売していて、ほんわかとした楽しい空間が居心地よかった。

強い思いと実力を併せ持った「伝える人」や「表現する人」のアウトプットを、こうした場に足を運んで受け止めるのは、本当に良いインプットになるなあ、とあらためて思った。自覚できる部分でも、無意識の部分でも、経験や刺激になることがたくさんある。だからこういう場に足を運ぶことを厭わないようにしなきゃな、と思う。

そういう意味では、展示やイベントだけじゃなく、本もちゃんと読まなければ。今、自分の部屋にある、買ったはいいものの手をつけられないでいる、本の山‥‥。よ、読まなきゃ(汗)。

バンコクの電車

タイの首都バンコクは、周辺部を含めると人口が1500万人近くに達する巨大都市。街を行き交う車の数はすさまじく、どこもかしこも常に渋滞。場所や時間帯にもよるけれど、タクシーやトゥクトゥクでは、いつまでたっても目的地に着ける気がしない(苦笑)。だから先日の取材中は、常にBTS(スカイトレイン)とMRT(地下鉄)を軸に、必要に応じてチャオプラヤー・エクスプレス・ボートを組み合わせて街の中を移動していた。

BTSやMRTの車内はキンキンにエアコンが効いていて、椅子などもとても清潔。液晶モニタに流れる広告には日系企業のCMも多い。乗客たち、特に若い子たちはみんな、一心不乱にスマホをいじっている。そんな感じの車内なので、時々、東京で電車に乗ってるような錯覚に陥りそうになる。

ただ、一つ大きく違うと感じたのは、停車駅で年配の人や小さいお子さん連れの人が乗ってくるたびに、それまでスマホをいじってた若い人たちが、スパッ!と立ち上がって席を譲っていたことだった。体力的に弱い立場の人を丁寧に気遣う彼らの態度は、仏教を篤く信仰する国だからというのもあるだろうが、東京の電車内の風景とはずいぶん違う。東京はほんと‥‥バレバレなのに寝たふりしてる若い人とか、結構いるし。

この点において、バンコクは東京に圧勝だなあ、と思う。

「ソトコト」2015年11月号

stkt1511cover10月5日(月)発売の雑誌「ソトコト」2015年11月号の巻頭インタビュー「人の森」で、ラダックで人工氷河などのプロジェクトに取り組むエンジニアであり、教育改革運動SECMOLの創設者でもあるラダック人、ソナム・ワンチュクさんへのインタビュー記事の企画・撮影・執筆を担当しました。同誌のサイトでも記事の一部を読むことができます。