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三鷹の雹

昼を過ぎてしばらくした頃、部屋の窓から外を見ると、空が真っ暗。遠雷が次第に近づいてきて、雨粒が窓ガラスや外の生け垣を激しく叩きはじめた。

それでもまあ、夏によく降る夕立のようなものかなと思っていたし、実際1、2時間ほどで小止みになったのだが、ネットで流れてきたニュースを見て、驚いた。うちからほんの少し南、三鷹から調布にかけての一帯で、大粒の雹が降りまくって、あたり一面が銀世界になるほど積もってしまったのだという。その気になればすぐ歩いていけるくらいの距離なのに、何という落差だ。

心配なのは、あのあたり一帯の農地で栽培されている野菜や果物。かなりのダメージを受けているのは想像に難くない。よりによって、なぜそこに‥‥。自然は時に、残酷な仕打ちをする。

オカヒジキの処遇

この季節になると、実家から季節の野菜の一つとして、オカヒジキが送られてくる。

初めてこの野菜を見た時は、「‥‥草じゃん!」という印象。どうやって食えばいいのかわからなくて、実家に電話した記憶がある。おひたしやサラダにして食べてみると、それ自体に味らしい味があるわけではないが、歯ごたえはシャキシャキとして心地いい。ただ、ひたすらシャキシャキ食べ続けてると、やっぱりそのうち飽きてくる。

だったら、その生命線である食感に変化をつければいいのでは、と、最近はエリンギと組み合わせることが多くなった。フライパンでオリーブオイルをニンニクとともに熱し、ベーコンとエリンギを炒め、刻んだオカヒジキを投入してさっと炒めて、最後に醤油と塩こしょう。オカヒジキのシャキシャキと、エリンギのコリコリした食感が交互に味わえるので、食べていても結構楽しい。オカヒジキの処遇としては、個人的には一番おすすめ。

それ自体の味に特徴はないけど、他の食材と組み合わせることで初めて存在価値が出る野菜。何だか、自分に似てるなあ、と思った。

夏至の冷酒

今までにも何度か書いたことがあるけれど、外がまだ明るいうちから飲む酒というのは、実にうまい。

今日は、夕方と呼ぶにはまだ早い時間から、吉祥寺にあるそば屋に入った。きりっと冷えた、手取川のあらばしりをちびちび飲みながら、シメサバと出汁巻き卵をつつく。ダメな大人のうしろめたさが、酒のうまさを五割増しにしてくれる。その後に食べた山芋のせいろもたまらない。店を出る時も、外はまだ明るかった。そうか、今日は夏至か。

夜は夜で、今、カニカマを肴にビールを飲んでいる。ほんとにダメな大人だ。

父の日に

六月の第三日曜日は、父の日なのだという。

僕には、父の日に父の日らしいことをしてあげたという記憶がほとんどない。実家の家族は割とドライで、何かの日に合わせて何かをやるということはあまりしない方だった。父の日に至っては、僕がすっかり忘れてるのはもちろん、父もたぶん僕に対しては何も気にしてなかったと思う。

でも、ここ一、二週間、街を歩いていて「父の日ギフト」という貼り紙やポップを店先で見かけたりするたびに、胸のあたりがちくちくと痛かった。もう、何かをしてあげようにも、してあげる人はとっくにいなくなっているのだから。

世間に流されてようが何だろうが、もうちょっと、何かすればよかったのかもしれない。小振りな焼酎の一本でも送ってあげるとか。それで何か変わったとも思えないけど、今は後悔というより、もう何かしようにも何もできないという、うつろな気持しかない。毎年、この時期になるとそう感じる。

しようと思えば何かしてあげられる人が身近にいる人は、してあげた方がいい。できるうちに。

今は、そんな風に父のことをぼんやり思いながら、一人でビールを飲んでいる。

雨の日とコーヒー

朝からずっと、雨。弱まったと思ったら、またバシャバシャと強まったり。昨日までに書き上げた原稿を推敲して納品して、今作ってる本に関係するこまごました準備を進める。

こんな天気だと気分もふさいでしまいがちだけど、雨の日に部屋でコーヒーをいれるのは好きだ。うるおった空気に香りが漂って、飲むと身体をしゃんと温めてくれる。あえてラジオもつけずに、窓を叩く雨音を聞きながら。

忙しくても、悩みごとがあっても、そういうひとときを愉しめる余裕みたいなものは、いつも持てるようになりたいなと思う。まあ、なかなかそうはいかないけど。