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標高5400メートルの記憶

ちょっとした思いつきで、ブログのデザインを変えてみることにした。背景の木目調のテクスチャを明るい梨地のものにして、ヘッダ部分の写真も入れ替えた。

この写真を撮ったのは、2008年の夏、ラダック南東部の高原地帯、ルプシュ地方をトレッキングで旅していた時のこと。標高約5400メートルのキャマユリ・ラという峠から、遥か彼方、標高4500メートルのところにあるツォ・カル(白の湖)をふりかえった光景だ。

数十歩ごとに膝に手をついて呼吸を整えなければ歩けないほど酸素が薄い場所なのに、足元にはなぜか、小さな黄色い花が一面に咲いていた。二日前に通り過ぎてきたツォ・カルの岸辺には、名前の由来となった、白く凝固した塩の塊が広がっているのが見える。その向こうに連なる山々には、すぐ上に浮かぶ雲が、まだらに影を落としていた。

峠の頂上で、岩に腰を下ろして水筒の水を飲んでいると、馬に跨がった遊牧民の若者が、下から駆け上がってくるのが見えた。こんな途方もない世界で、何物にも縛られることなく、自由に生きている人々がいるのだ。

あの時、頬をなぶっていた風のひんやりとした感触を、僕は今も憶えている。いつか、あの場所に戻る時が来るのだろうか。

作り手は作り手に嫉妬する

以前、西村佳哲さんにインタビューをさせていただいた時、次のような話を聞いたことがある。

「たとえば、出来のいい映画を観て“くやしい”と感じる人は、モノ作りに携わっている人ですね。そういう人は、作る側に視点が回っていくものなんですよ」

確かに、それは当たっていると思う。自分を例に挙げるのはおこがましいけど、面白い本を読み終わった後は、無性に原稿を書きたい気分になったりする。先日、たかしまてつをさんの個展にお邪魔した時は、「こんな空間で、壁一面にバーンとラダックの写真を展示したら、気持いいだろうなあ‥‥」と妄想したりもした(笑)。あと、逆の立場では、ある飲み会の席で、同業者の人から「ヤマタカさん、ぼかぁ、あんたに嫉妬してるんですよ!」と、面と向かれて言われたこともある。別に、僕はそこまでの人物じゃないんだけど‥‥(苦笑)。

作り手は作り手に嫉妬する。それはとても健全な反応だし、互いにそれを糧にして新しいものを作り上げていければ、素晴らしいことだ。ただ、他の人の作品に刺激を受けて、「よーし、自分も!」と決意しても、相手の後追いで似たようなものを作るだけでは、単に模倣をしているにすぎず、オリジナルはけっして越えられない。作るなら、自分自身のアイデアと力で勝負しなければ、意味がない。

単なる後追いで終わるか、自分の道を見出すか。本物の作り手になれるかどうかは、そこが分かれ目だと思う。

風の旅行社「風通信」No.42

風の旅行社が年に三回刊行している無料の情報誌「風通信」に、「もうひとつの居場所、ラダック」と題した4ページのフォトエッセイを寄稿しました。表紙の写真と目次の写真も提供しています。エッセイは完全書き下ろし。写真は「ラダックの風息」に掲載していないものを中心に選んでいます。

風通信」は、お問い合わせ用メールフォーム、または電話(東京0120-987-553、大阪0120-987-803)で風の旅行社に申し込むと、無料で送ってもらえるそうです。数に限りがあるそうなので、お早めにどうぞ。発送開始時期は、4月22日(金)頃の予定です。

Aside

iPhoneのソーシャルカメラアプリInstagramでユーザーが撮影した猫の写真ばかりを集めたサイト、Nekostagramが公開され、猫好きな人々を身悶えさせている(笑)。今後、犬バージョンとかも出てきそうだな。Instagramは、こういう派生コンテンツを作るのに向いているのかも。

Aside

以前、このブログでもレビューを書いた「あすナロにっき」の美猫、ナロの写真展がリトスタで開催されるとのこと。写真だけでなく、イラストや、あの「家」も展示されるかも‥‥。お近くの方はぜひ。

あすナロにっき、(てん)
・会期:2011年2月22日(火)~4月24日(日)(前半と後半で写真の入れ替えあり)
 サイン会:3月12日(土)15時~17時
 ※会場で本をご購入いただいた方が対象となります。
 ※時間内はサイン会のみで飲食はできません。
・会場:リトルスターレストラン
 東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビル3F
 TEL 0422-45-3331
 11時半~24時、月曜定休(土日祝12時より、日祝23時まで、他に臨時休業あり)
 ※入場料無料、飲食店のため1品以上のオーダーをお願い致します。
 ※お花などの差し入れはご遠慮申し上げます。