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作らずにはいられない本

午後、電車で都心へ。今日はとある出版社で、新しい本の企画のプレゼン。

次に作ろうと考えている本は、出すまでのハードルがかなり高い。企画自体の内容云々より、それが属するジャンル自体が「売れにくい」ので、出版社から敬遠されがちなのだ。企画を提案する側としても、バーッと派手に売れる企画だとは言いにくい。そもそも、この仕事のプロとして、自分でも売れるかどうかわからない企画を提案するのは、間違っているのかもしれない。

しかし、それでも‥‥。

「この本は、出すこと自体に意味があると思うんです‥‥」

話の途中、僕は思わずそう口走ってしまった。すると、出版社の担当の方々は、口を揃えてこう言った。

「‥‥それは当然ですよ!」

何というか、そのひとことで、僕はとても救われた気持になった。売れる、売れないとは別のところで、作りたい、作らずにはいられない本がある。それを追い求めるのは、けっして間違ってはいないのだと。

これからどうなるか、まだ何もわからないけど、がんばろうと思う。

秋桜

今日はオフ。昼はインド富士でブリカレーとハートランドビールを堪能。その後、昭和記念公園まで行って、うららかな陽射しの下、ぶらぶら歩く。原っぱの近くではいろんな種類のコスモスが満開。ごついカメラと三脚を抱えた人も大勢いたが、僕はとりあえずiPhoneでパチリ。

コスモスのことを秋桜と呼ぶのって、何かイイな。

鶴の群れ

キャンプ・デナリに滞在していた時、一人のガイドと親しくなった。彼の名はフリッツ。スイス人である彼は、二十年前にこの地にやってきて、ガイドとして働くようになった。家族は、国立公園の入口でB&Bを経営している。とても気さくな人で、日本人で一人だけストレニアス・グループでのトレッキングに参加していた僕に、「いいぞ、タカ! どんどん歩け! ゴーゴー!」と声をかけて焚き付けたりしていた。

ある日、「ポトラッチ」キャビンでの夕食の時、向かいの席にいたフリッツが僕に訊いた。

「タカ、君は何の仕事をしているんだ?」
「写真を撮ったり、文章を書いたりして、それを本にする仕事をしてるんだよ」
「そうか、フォトグラファーか。僕も一人、日本のフォトグラファーを知ってる。ミチオだ。ミチオは素晴らしいフォトグラファーだった。デナリで撮影していた時、彼はよくこのキャンプ・デナリに遊びに来ていたんだよ」

その時、クァ、クァ、という鳴き声が、遠くから幾重にも重なり合うようにして聴こえてきた。何だろう? みんな席を立って、「ポトラッチ」の外に出る。灰色の空の彼方から、隊列を組んだ鳥のシルエットが近づいてくる。鶴だ。それも、十羽や二十羽どころではない。次から次へと隊列が集まってきて、キャンプ・デナリの真上で渦を巻くように、どんどん大きな群れになっていく。数百羽? いや、千羽以上はいたのではないだろうか。

「サンドヒル・クレーンだ。南の山脈が悪天候で越えられなくて、ねぐらを探してここに集まってきたんだろう。こんな大きな群れを見たのは、二十年ぶりだ‥‥」フリッツが呟いた。

ミチオ‥‥星野道夫さんも、原野で一人でキャンプを張っていた時、こんな鶴の群れを、じっと見上げたりしていたのだろうか。千羽を超える鶴たちは、クァ、クァ、と寂しげに鳴き交わしながら、やがて、北の稜線の彼方に消えた。

スライドトークイベント:冬のラダックと「氷の回廊」チャダル

東京・大崎にあるパタゴニア東京 ゲートシティ大崎店で、冬のラダック・ザンスカールをテーマにしたスライドトークイベントを開催することになりました。冬ならではのラダックの美しい風景や、ロサルやレー・ドスモチェをはじめとする冬の祭り、凍結したザンスカール川の上を旅するチャダル・トレックなどについて、現地で撮影した写真をふんだんに見せながらお話しします。

このトークイベント、入場は無料ですが、設営の関係で事前予約が必要です。事前に主催の風の旅行社(0120-987-553/info@kaze-travel.co.jp)までご連絡ください。会場のキャパが約80名と、僕にしては分不相応に大きいので(苦笑)、よろしくお願いします。

鎌倉アルプス散策

昨日は少しだけ遠出して、鎌倉の天園ハイキングコースというところを歩いてきた。ここは鎌倉アルプスとも呼ばれていて、鎌倉市でもっとも高い、159メートルの大平山に登るルート。あっという間に登れる割には、奥深い森の雰囲気も楽しめる。

スタート地点は、北鎌倉駅。線路沿いで風に揺れるススキが、秋の訪れを知らせていた。