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個人で本を作る

早くても来年以降の、おぼろげな目標なのだが、僕個人で本を作って世に出すような活動をやってみようかな、と考えている。一人で出版社を立ち上げるところまでは考えてないのだが、僕個人の屋号というか、レーベルのような形で。

もちろん本業の部分では、出版社と協力しながら本を企画して作る仕事を続けていく。ただ、最近の自分が考える企画のアイデアの中には、一般的な出版社からは出しにくい類のものも少なからずある。いい企画だし、作って世に残しておくべき本だけれど、売りにくい、みたいな。そういうアイデアをあきらめずにすくい上げて、出版社に頼らずに自分で作ってしまえないだろうか、と思っているのだ。

企画から執筆・編集まで、主な作業は自分でできる。制作時に外部の力が必要なのは、デザインと印刷・製本くらい。一般的な自費出版と比べて、かかる費用は格段に少ない。専用のサイトを立ち上げて前もって受注を行って、適正な刷り部数を見極め、販売はオンラインと一部の書店、イベント会場などで行う。

個人宅でたくさんの在庫を管理するのは大変だし、このやり方で作る本でがっぽり儲けるつもりもないから、本当に欲しい人に確実に届けられるだけの部数にとどめて作るつもりだ。本業ではないし、かといって趣味でもないが、読者の方に喜んでもらえるものを作って届けることは、自分にとってもお金以上に価値のある活動になると思っている。

まだ、どうなることやら、というくらい柔らかい状態のアイデアだけど、うまくいくといいな。

関健作「ブータンの笑顔 新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間」

関健作「ブータンの笑顔 新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間」写真家の関健作さんと先日開催したモンベル渋谷店でのトークイベントの日は、関さん初の著書「ブータンの笑顔 新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間」の発売日でもあった。発売までの紆余曲折をそこはかとなく聞いていたし、刷り上がりがイベント当日に間に合うかどうかも心配していたのだが、間に合ってよかった。イベント会場でも、大勢のお客さんが嬉しそうにこの本を買い求めていた。

関さんは青年海外協力隊の体育教師として、ブータン東部の辺境の地、タシヤンツェで三年間を過ごした。160ページの小ぶりなこの本には、関さんのその三年間の経験が、たくさんの写真とともにぎゅっと凝縮されている。日本とはあまりにもかけ離れた文化と価値観に戸惑い悪戦苦闘するうちに、関さん自身も、教え子の子供たちも、少しずつ変化していく。うまくいったことも、そうでなかったことも、関さんらしい真っ正直な文章で綴られているので、とても好感が持てた。

学生時代、陸上競技ひと筋で生きてきた関さんが挫折を味わい、新しい生き方を模索している時に、こういう形でブータンと関われたのは、とても幸せなことだったのではないかと思う。自分一人で完結する願望や満足のためではなく、その先につながる誰かのために何ができるのかを考えて生きるということ。ブータンから戻ってきた関さんが、写真家としてブータンと向き合う道を選んだ理由も、この本を読むと腑に落ちる。僕自身、かつて陸上競技で大きな挫折を経験したり、ラダックと関わって価値観や生き方が変わったりもしたから、共感できる部分もたくさんあった。

この本は、関さんにとってのひと区切りであると同時に、最初の一歩でもある。写真も、言葉も、これからもっともっと積み重ねられるはず。その先につながる誰かのために、これからもブータンと向き合い続けてほしいと思う。

接点を作る

昨日の夜はモンベル渋谷店で、ブータン写真家の関健作さんとのトークイベントに出演した。毎度のことながら緊張したが、関さんのおかげもあって、どうにかやり遂げることができた。

あいにくの雨の中、会場には定員の60名を超えるお客さんが集まり、発売されたばかりの関さんの本を大勢の人が買い求めていた。その余波か、少しだけ持ち込んだ僕の本も早々に売り切れてしまった。会場には、僕が何かのイベントに出る時によく参加して声をかけてくださるおなじみのお客さんもいれば、イベントの前まではラダックのことをよく知らなかったのに好きになってくれたというお客さんもいて、それぞれに何だかとてもうれしかった。

昔は、物書きあるいは写真家として本を一冊作り上げてしまえば、それで任務は完了だと思っていた。でも今は、本はとても大きな成果物ではあるけれど、伝えたいことを伝えるための道具の一つでしかない、とも感じている。今回のイベントのような形でいろんな人との接点を作り、自分が伝えたいことに気づいてもらうきっかけにする。それはささやかなきっかけでしかないかもしれないが、やがてとても大きな変化につながらないともかぎらない。

だからこれからも、自分にできる範囲で、そういう接点を作る努力をしていければと思う。

叶えられないこと

午後、目黒での打ち合わせに出かける。天気予報は今日も当たらず、降らないはずの雨が降っている。

今日の打ち合わせは初対面の編集者の方とだったのだが、自分の中でほぼ完全に固まっていると感じていた企画に、別の角度からの可能性を示唆してもらえた。この方向でうまくいくかどうかはわからないし、分の悪い勝負であることに変わりはないが、人と話をすることで初めて見えてくる可能性があるということを、あらためて感じた。

ありったけの熱意と努力を注ぎ込んでも、叶えられないことは世の中にたくさんある。けれど、熱意と努力を注ぎ込むことをしなければ、絶対に何一つ叶えられない。きついけど、やるしかない、と思う。

スライドを作る

モンベル渋谷店で開催するトークイベントまで、あと一週間。本番でスクリーンに映すスライドデータの制作に取り組んでいる。

意外に思われるかもしれないが、編集者として今までやってきた中で、パワポの類を使ってスライドで企画のプレゼンなどをしたことは、一度もない。仕事の性格上、大人数を前にスライドを使う必要がなく、数枚の紙にプリントアウトした企画書があればそれが一番だった。だから、スライド制作用のソフト、MacでいえばKeynoteなどは、あまり使い慣れてはいない。

個人的には、大勢の人に自分の写真などを見せるスライドには、余計なエフェクトや動きの演出は必要ないと思っている。そういう演出は伝えたいことの本質ではないし、お客さんも期待していない。それに、何しろ使い慣れていないから、往々にして間の悪い演出になってしまうし(笑)。

さて、当日までに、きりきり準備せんと。