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「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」

「撮り・旅!」撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち
編者:山本高樹
定価:本体1600円+税
発行:ダイヤモンド・ビッグ社
B5判128ページ(オールカラー)
ISBN978-4478046159

「旅」と「写真」という切っても切れない関係にあるものをテーマにした新しい本が、まもなく発売になります。写真を撮らなくても旅はできるかもしれないけれど、旅の中で風景や人々や出来事に出会い、心がふわっと揺れた時にシャッターを切ってゆくと、その人の旅はもっと豊かで深いものになります。今やすっかり手垢のついた「絶景」という言葉などではとうてい括ることのできない、旅人たちが目にしてきた世界のありのままの姿、彼らの「旅」そのものが、凝縮された一冊です。

見本誌出来

朝、宅配便で「撮り・旅!」の見本誌が届いた。

慎重に梱包を解き、本を一冊取り出す。カバーと帯、クラフト紙の表紙、微塗工紙の本文紙、肝心の印刷の具合を確かめながら、1枚ずつページをめくっていく。特に問題はないようだ。よかった。ほっとした。うれしいというより、とにかくほっとした。

ほっとしたら、力が抜けた。それから一日、何もする気が起きず、腑抜けのようになって過ごした。終わった。終わったんだな。

作戦会議

午後、「撮り・旅!」の色校の入った包みを抱えて、千駄ヶ谷にあるデザイナーさんの事務所へ。中に入ると、打ち合わせスペースには出版社の担当編集さんの他、印刷所の担当者の方々が四人も。デザイナーさんたちを加え、計八人での打ち合わせ。

今日の打ち合わせは、デザイナーさんからの提案。単に色校に個別の写真への指示をつけて戻すより、全員で集まって意見の擦り合わせをして、この後の印刷にあたっての方針を確認しておいた方がより確実ということで、こういう場を設けることになった。面付けした色校を広げたワーキングテーブルを大勢で囲んで、ここはどうだ、あそこはどうする、と話し合っていると、何だかラスボスとの最終決戦に臨む作戦会議をしてるような気分になった。脳内BGMはおなじみのこれ(笑)。

それにしても、ここに至るまで、若干の余裕を持たせたスケジュールにしておいて、本当に助かった。来週明けにもう一度、一部のページの色校を出し直して確認することになったが、それで問題なければ、今度こそ校了だ。いよいよ、本ができあがる。

気を抜けない

午前中に、デザイナーさんから今作ってる本の色校正が入った大きな包みが届く。リビングの机の上で、面付けされた状態の大きな色校を広げ、各写真家さんから送られてきた指示を参考に、写真を一枚々々チェックしていく。

今回の「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」は、ほとんどのページに写真が使われていて、それぞれのテイストも千差万別なので、印刷にはことのほか気を遣う。本当はもう一回ダメ押しで簡易色校正を出したいところなのだが、諸事情(時間とか、予算とか)で難しいと言われてしまったので、デザイナーさんと一緒に印刷所に行って、最後の最後に印刷の現場で確認させてもらうしかないかな、と考えている。

ここで気を抜いたら、今までの苦労がすべて水の泡になってしまう。少しでもいい本を作るために、やらねば。

「才能」がなくても

最近、「才能」とか「素質」などと呼ばれる能力について考えることがある。生まれながらに持ち合わせた、他の人より秀でた能力。確かに、そういう力があるに越したことはないなと思うし、ある人はうらやましいなと思う。

ただ‥‥あまり範囲を広げすぎると収拾がつかなくなるけど、少なくとも僕が属している「本づくり」の世界では、「才能」がなくても、その差を埋め合わせて、ちゃんとした本を作ることはできると思う。それは執筆や編集、写真、イラスト、デザインなど、各職種にも通じる。

世の中でどんな本が読まれているのか、その中で自分が好きなのはどんな本なのかを「観察」すること。なぜそれがいいと思うのか「分析」すること。その上で、自分はどんな本を作りたいのか、その本で何を伝えたいのかを「突き詰める」こと。その本を実現するために必要な人に「協力」してもらうこと。細部まで手を抜かず、丁寧に、徹底的に「作り込む」こと。

忘れてはならないのは、本は、単に売り上げや人気だけを争うために作るものではないということだ。きちんと作られた本には、それぞれ果たすべき役割があって、届けられるべき人がいる。作り手の「才能」を見せつけるために本はあるのではない。作り手が伝えたいと思っている大切なことを伝えるために、本はある。