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北極圏からの帰還

Tromso
今日の昼、ノルウェーのトロムソからヘルシンキ経由で東京に戻ってきた。

トロムソでの数日間は、思っていたよりもハードだった。毎日、朝早くからいろんな取材をしなければならなかったし、夕方からはオーロラの撮影に出かけ、すっかり冷え切った身体で宿の部屋に戻るのは夜半過ぎだった。それでも充実した気分で乗り切ることができたのは、生まれて初めて訪れる国や街に対する好奇心と、これ以上ないほど美しい姿を大盤振る舞いで見せてくれたオーロラのおかげだったかもしれない。

写真は、この地域の先住民族サーミ人の親子と、彼らにとって大切な存在のトナカイ。今回の旅の模様は、近いうちに某誌サイト上でお届けします。

「地球の歩き方 タイ 2015〜2016」

arukikata_thai15昨年に引き続き、撮影とデータ取材の一部を担当させていただいた「地球の歩き方 タイ 2015〜2016」が、2月6日(金)頃から発売されます。今回の改訂版では、巻頭のカラーグラビアにあるタイ国内の世界遺産(アユタヤー、スコータイ、シー・サッチャナーライ、カムペーン・ペッ)の紹介記事で5ページ、タイ北部の町ラムパーンの紹介記事で4ページの写真と文章を提供しています。それ以外では、タイ中部と北部の章トビラの写真も。タイに行く予定がある人だけでなく、特に行く予定がない方も(笑)、書店で見かけたら一度手に取ってみていただけると嬉しいです。

笑顔の撮り方

終日、部屋で仕事。あちらこちらとの連絡業務のかたわら、来月下旬の下北沢B&Bのトークイベントで使うスライドや自分用の台本の準備など。

今回のトークイベントのテーマとして提案されたのが、「笑顔の撮り方」。あらためて思いを巡らせてみると、正直、ちょっと困ってしまった。なぜかというと、僕の場合、誰かの笑顔を撮ろうと思って写真を撮った経験が、たぶん一度もないのである。笑顔を撮ろうと意識したことのない僕が、笑顔の撮り方についてまともなことを語れるとは思えない。どうしよう。

じゃあ、いつもどんな風にして撮ってるんだと言われると、これまた言語化しづらいというか、ハァ?と思われるようなことしか話せない気がする‥‥。仕方ない。正直に、たどたどしく話すしかないか。

くやしい思い

この間の「撮り・旅!」トークイベントの打ち上げで、同業者のみなさんと飲んでる時に出た話なのだが。

「してますよ! ここにいるみんな、仕事でくやしい思いは!」

そこにいた方々は全員、豊富な経験と実績と、誰が見ても疑いようのない実力の持ち主ばかり。それでもみんな、くやしい思いをしているのだという。単にプライドを傷つけられるとか、そういう安っぽいことではない。丹精込めて仕上げた作品を雑に扱われたり、自分の思いと相反するようなことを強いられたり。もっといい仕事ができるのに、そうさせてもらえない、というくやしさ。

そういうくやしさを感じた時、我慢した方がいい場合と、我慢すべきではない場合があると僕は思う。そこで自分が譲ることで、仕事の目的(自分の受け持ち部分はともかく全体としていい仕上がりになる、依頼主からの要望に合う、など)が達成できるなら、あるいは譲るべきかもしれない。でも、もし譲ることによって、自分自身のキャリアに悪い影響が出たり、大切にしていた信義を裏切ってしまうのであれば、妥協せずに「それはできません」とはっきり言うべきだ。それで仕事を失うかも、と恐れる必要はない。そんなことでなくなってしまうような仕事は、どうせ長続きしないから。

みんな、それぞれの場所で、それぞれの戦いを続けている。僕自身、未だにくやしい思いのくりかえしだ。できれば、もうちょっと大物になって、無駄な戦いをしないですむくらいの身分になりたいと思うけど、まあ、無理かな(苦笑)。

「すごい写真」と「いい写真」

先日のトークイベントの時、「いい写真って何だろう?」というかなりアバウトなお題について、出演者の方々と少し話をした。それについて、その後も一人でちょっと考えてみたので、つらつらと書いてみる。

世間で「すごい写真」と捉えられがちなのは、見た目のインパクトやテーマの珍しさ、撮影時の設定や構図の完成度の高さなどで、「うわ、すごい!」と受け止める人が多い写真という気がする。一方、「いい写真」というのは、最初から問答無用に「すごい写真」と思われるほどインパクトが強くなくても、眺めているうちにいろんな想像をかきたてられたり、撮り手の気持がじんわり伝わってきたりするような写真が多い気がする。まあ、それも一概には言えないけれど。

インパクトや作品としての完成度は確かに「すごい写真」だけど、あまり深みを感じられないという写真は結構あると思うし、逆に、見ててじわじわくる「いい写真」だけど、技術的にちょっと惜しかったりする写真も多いと思う。趣味で撮ってる分には別にそこまで気にしなくていいんだろうけど、仕事でお金をもらう形で撮っている身としては、「すごくて、しかもいい写真」を目指さなきゃならないのも確か。なかなか難しいことなのだが。

僕自身、旅先で写真を撮る時は、あーでもない、こーでもない、と思い悩んで右往左往しながら、失敗に失敗を重ねつつ撮っている。あれこれ考えたところで狙い通りに撮れるとはかぎらない。でも、常に考えていなければ、いざという時に絶対に反応できない。失敗をくりかえすうちに、ふとした瞬間に、思いがけない形で、「これだ」と思える一枚が撮れることがある。その時の自分の気持を、すとんとそのまま素直に込めることができた写真。そういう一枚が、僕にとっては「いい写真」なのだと思う。