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幸福の国へ

昨日と今日の二日間、大学案件で計6件の取材。いいかげん脳みそがへちまの中身みたいになりそうだが、その原稿をろくに書く時間もないまま、明日から約1週間、ブータンに行く。

今回の取材は、数名の写真家さんたちと行く撮影中心のツアーのような形。現地では短期間ながらも割と自由に行動できるのだが、ここしばらく、ずっと書き仕事ばかりだったから、カメラを扱う勘が鈍ってやしないかと心配だ(苦笑)。あまりにも直前まで仕事がぎっちりで、帰ってからもぎっちり待ち構えてるので、気持もなかなか切り替わらない。それでもまあ、何とかするしかないし、何とかなるだろうけど。

日本では、「幸せの国」というわかりやすすぎるラベリングで語られてしまうことの多いブータン。実際に訪ねたら、どんな国なんだろう。自分の目と耳と鼻と、それから舌で(辛いんだろうな、エマダツィ)確かめてみるのが、一番間違いない気がする。

帰国は6月7日(火)の予定です。では、いってきます。

キュレーションメディアについて思うこと

旅のキュレーションメディアの編集部と名乗る人から、メールが届いた。自分たちのサイトで記事を書いてくれないか、という。特に僕という人間を特定しているわけでもなく、誰に送っても当たりさわりのない(テンプレート通りの)内容のメール。とりあえず条件を開示してほしいと答えたら、すぐに(テンプレート通りの)返信が届いた。

その編集部の人曰く、
・旅に関するネタならほぼ何でもOK(観光地、グルメ、ホテル、アクティビティ)。
・自分のブログに書いている記事のリライトでも構わない。
・納期の指定はなし。いつ書いてもいい。
・1本の記事に写真を10枚以上使用。
・原稿料は、記事10本で6000円。

「写真を10枚使用したWeb記事が1本あたり600円」という価格設定を適正と考える人も、もしかすると世の中にはいるのかもしれない。ただ、一応、文筆業でこれまで何十年か生きてきた立場から言わせてもらうと、Web記事であることや新規取材が発生しないことなどを考えあわせても、この値段、相場の10分の1以下。20分の1か、それ以下でも全然おかしくない。

こんなひどい条件でも、何かしらの名前を冠するキュレーションメディアに記事を書いて、ライターと呼ばれる職業の人間になりたいという人は、世の中にいるのかもしれない。だからそれを非難したり止めたりはしないけど、ライターに必要なキャリアの蓄積にはまったくならないであろうことは断言できる。世の有象無象のキュレーションメディアの大半は、記事がでたらめとかでないかぎり(実際はでたらめも多いけど)、内容や質に関してはどうでもいいと考えている。自分たちが糊口をしのぐためのページビューをちまちま稼ぐことができさえすれば、それでいいのだから。

本当に文章を書くのが好きなら、写真を撮るのが好きなら、その大切な文章や写真を二束三文で有象無象の輩に売り飛ばすより、自分自身のサイトをきちんと作って公開したり、リトルプレスやZINEの形にしたりした方が絶対にいい。どういう「届け方」をするのかも、文章や写真にとってはとても大事なことだから。その文章や写真に何らかの価値や思いが宿っているなら、きっと誰かのもとに届くし、それによって何かが変わるはずだと、僕は思う。

「会う」ということ

3月末から展示を続けていた、リトスタでのラダック写真展。約2カ月間の会期も、明日でついに最終日。始める前は長い長いと思っていたが、ふりかえってみると、本当にあっという間だった。

今回の写真展は、自分自身にとって、ひときわ記憶に残る展示になった。「ラダックの風息[新装版]」という思い入れの強い一冊の刊行に合わせての展示だったこともあるが、今回は仕事の合間をぬって可能なかぎり会場に在廊するようにしたことが、とても大きかったと思う。実際、僕が会場にいることをSNSで知った上で訪ねてきてくれた方や、あるいは知らずに偶然訪れて、僕と話をしたことで俄然興味を深めてくれた方も少なくなかった。

誰かに「会う」ということは、その人に対する興味や思い入れの度合いをぐっと深める、またとないきっかけになりうるのだと最近思う。もちろん、会ってみて幻滅したというパターンもあるかもしれないが(苦笑)、写真展の在廊やトークイベントへの出演というのは、そういう出会いの場を作る貴重な機会なのだと実感している。僕にとっても、そうしていろんな人にお会いして話をすることでフィードバックしてもらえる思いというのは、本当にかけがえのない、大切なものだ。

写真展最終日、気持ちを引き締めて、行ってこようと思う。

想定外の露出

今週の水曜、リトスタで今やっている写真展について、ケーブルテレビ局から取材を受けた。その話をもらった時は「まあ、家でケーブルテレビのローカルニュース番組を見てからこの写真展に来る人なんて、ほとんどいないだろうし」と、軽い気持ちで引き受けたのだった。

ところが、在廊していた昨日、「歩いてたらこの写真展の情報をテレビで見たので」という人が来た。「歩いてたら? どゆこと?」とちょっと訝しく思っていたのだが、今日来られた人も「ニュースでやってたのを見ました」と言う。しかも「駅のモニタで見ました」と。聞くと、駅の構内や近辺に設置されているデジタルサイネージの大型モニタ画面には、ケーブルテレビ局などによるローカルニュースの情報も配信されているのだという。

……なんてこった。完全に想定外だ。恐ろしいほど不特定多数の人が行き来する駅で、僕のしけたツラがでかでかと表示されているなんて……(汗)。

駅に近づくのが、すっかり怖くなってしまった。やれやれである。

活動限界

昨日の午後は、リトスタでの写真展の件で、ケーブルテレビ局からの取材を受けた。冷静に考えると、3月末からやってる写真展の情報を、なんで会期残り10日ほどの今になって、とも思うのだが……。まあ仕方ない、断る理由もないということで、粛々と対応し、カメラの前で30分ほど質問に答えた。

で、その後は電車で恵比寿に移動し、駅前でラーメンを食って腹ごしらえをした後、代官山蔦屋書店へ。三井昌志さんとのスライドトークイベント、毎度のことながら緊張して、終わった後も記憶は真っ白だったが、どうにかこうにか乗り切れた、と思う。関係者の方々や、見に来てくれた人たちも喜んでくれてたし。

それにしても、同じ一日のうちに、テレビ取材対応とトークイベントのコンボとか……。今までももちろんなかったし、これからもないだろう。緊張と気疲れとで、活動限界は完全に超えていた。やれやれである。