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近づく幕切れ

週末から今日にかけては、ほぼずっと、今作っている本の色校をチェックしていた。印刷会社さんが頑張ってくれたおかげで、現時点でも色の出方は、かなりいい。本紙で刷る時もこの調子で出せれば、初版よりずっとレベルアップした仕上がりになると思う。見本誌を手に取るのが今から楽しみだ。

……と同時に、ちょっと寂しくもある(苦笑)。本を作っている間は、やっぱり、とても楽しいから。自分の頭の中で思い描いているもの、伝えたいこと、それらをあらんかぎりの工夫を凝らして、紙の束の中に封じ込めていく作業。作っている間、自分の手の内には、無限に思えるほどの可能性の選択肢があるような気さえしてくる。

でも、まあ、幕切れは必ずやってくる。本ができあがった時、自分の選択が正しかったか、それとも単なる独りよがりだったか、答えはおのずとわかるはず。これだけ何冊も作ってきていても、いまだに自信は持てないけれど。

まあいいや。幕切れの時間まで、本づくりを精一杯、楽しもう。

あれやこれやと

午前中、越中島で大学案件の取材。ちょっとひさしぶりの取材だったが、面白い話を聞くことができた。終わった後、JRでひと駅乗って、八丁堀の出版社へ。今作っている本の再校を担当さんに戻し、あれやこれやと打ち合わせ。

八丁堀から歩いて東京駅方面に向かい、八重洲地下のエリックサウスでランチミールス。そこから丸ノ内線に乗って池袋へ。来月下旬から写真を展示させてもらえることになった、某大型書店の店内を視察。展示方法とか、地味にいろいろ確認しなければならないことがあったので。

その後は山手線と銀座線を乗り継いで、外苑前のオン・サンデーズへ。齋藤陽道さんの写真展「土耳古の光」を見る。黄色くてまろやかな光の眩しさ。透明で、ぱやんとした空気。ああ、トルコだ、あの国だ。と、かれこれ18年も前に訪れたきりの土地のことを思い出す。道端で買った焼き栗の味とか、ボスポラス海峡の潮の匂いとか。

外苑前から表参道まで歩き、ひさしぶりにブルーボトルコーヒーでひと休み。混んではいるが、週末に比べれば店内はそこそこ余裕がある。ベランダの立ち飲み席でコーヒーを飲んだ後、ついでに豆も補充。ジャイアント・ステップスというネーミングが気に入っているブレンド。コルトレーンかと。

とまあ、そんなこんなでたくさん歩き回り、家に帰ってからも各方面にたくさんメールを書き続け、さすがに疲れた。明日は早起きできたら、税務署に行ってこよう……。

冬の尾根道を歩く

ひさしぶりに、陣馬山から高尾山までの尾根道を歩いてきた。前に歩いたのは去年の2月だから、ほぼ一年ぶりか。まだ正月3日目なので混んでるかも、と思っていたが、陣馬山方面はそれほどでもなく、快適に歩くことができた。高尾山界隈は案の定、人、人、人で、高尾山口まで歩き終えるとすぐに退散したのだが。

今日は気持のいい青空が広がっていて、富士山の姿も、道中ずっとよく見えていた。昼頃から急に風が強くなったものの、アウターシェルのおかげで全然平気だった。ただ、途中ですれ違った登山者の中には、明らかに薄着すぎる人たちも結構いた。体力のあるトレイルランナーならともかく、あんな不十分な装備だと低体温症になってしまうのでは……。実際、動けなくなったのか、救助隊に保護されている登山者も見かけたし。

今回はジェットボイルは持って行かず、手持ちの魔法瓶を2本、一方にほうじ茶、もう一方にお湯を入れたものを用意した。食事はモンベルのガーリックリゾッタと、即席の具だくさん味噌汁。魔法瓶のお湯を注いで、すぐに食べてしまおうという算段だ。リゾッタは3分でできるので、待ち時間が短くて助かる。おかげで風が吹きすさぶ中、寒い思いをして待たされずにすんだ。間食はドライパイナップルとチョコレート羊羹。

今日は割とスローペースで、陣馬高原下バス停から歩きはじめて、高尾山口まで、だいたい5時間半。昼食などの休憩時間を差し引いた歩行時間は、4時間50分くらいだった。膝回りをはじめとする体調も特に問題なし。この調子で、じわじわと体力面のベースアップをしていければと思う。

取材納め

午後、紀尾井町で取材。今日はインタビューだけでなく、その前に撮影の任務もあったから、いつもよりちょっと気疲れした。まあでも、おおむね滞りなく終えられて、ホッとした。帰りに四ッ谷のたけだでカキバター焼き定食。

これで、2017年の取材の仕事はすべて終わった、はず。今週中に突発的な依頼が来ないかぎりは。今年は国内の取材だけで、だいたい70人くらいの方々にインタビューさせていただいたと思う。毎年これくらい場数を踏み続けていればさすがに慣れるだろうと僕自身も思っていたけれど、やっぱり、いつまでたっても、慣れない(苦笑)。そのくらい緊張感を持ち続けていた方がいいんだろうけど。

ともあれ、これにて取材納め。……仕事納めは、まだもうしばらく先だけど。

ちっぽけな思いから

最初に、自分一人だけで一冊の本を書こう、と思い立った時、心に決めていたのは、自分という人間の存在ができるだけ表に出ないようにしよう、ということだった。

自分の目の前で起こる出来事の一つひとつを丹念に見定めて、文章と写真で、それらをできるだけ忠実に描写する。個人的な感傷や思い入れで邪魔しないように気を配りながら、言葉を選ぶ。自分という人間が何者なのか、読者にはまったく気にされなくて構わない。そう思いながら、本を書き上げた。

そうして完成した本を読んだ僕の知り合いの何人かは、異口同音にこう言った。この本は、まぎれもなく、あなたの本だ。この本には、あなたの思い入れが、これ以上ないほどあふれている、と。そんな感想が返ってくるとは想像もしていなかったので、僕はすっかり面食らってしまった。

世界のとある場所とそこで暮らす人々のことを、徹底的に追いかけて、ただひたすらにそれを伝えようとしていたら、そこに立ち現れたのは、僕という一人のちっぽけな人間の姿だったのだ。

だったら、その逆は、あるのだろうか。

僕という一人の人間の、本当に個人的な、ちっぽけな思いから、遥か彼方への旅を始めたら、その先は、どこにつながっていくのだろうか。この世界の、底の見えない深淵につながっていくのだろうか。何かの理が、目の前に現れたりするのだろうか。

その旅は、もう始まっている。