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日本の山、ラダックの山

この間から、奥多摩や丹沢を歩いてみて、やはり日本の山は素晴らしいなあ、と再認識している。

うっすらと霞がかかる山並みの風景はとても美しいし、緑は豊かで、覚えきれないほど多種多様な草木がひしめいているし。鳥はさえずり、猿は悠々と行進し(笑)、生命の気配にあふれている。その一方で、登山道は細かいところまで丁寧に整備されていて、老若男女誰でも歩けるように、至れり尽くせり。当たり前かもしれないけれど、日本らしいのだ、日本の山は。

でも、そういう日本の山のよさを感じてみると、あらためて、ラダックの山の中を歩いてきた自分の体験が、いかにかけがえのないものだったかということもわかる。とてつもなく苛烈で、だからこそ美しい自然の中で、ひっそりと息づく村や、悠然と暮らす遊牧の民を訪ね歩いた日々。考えてみれば、何という贅沢な時間だったことか。

日本の山で穏やかな体験をした後だからこそ、戻りたくなる。あの場所に。

丹沢表尾根縦走

半年間の本づくりで、なまりになまった身体を叩き直すべく、丹沢を登ってくることにした。丹沢は学生の頃に何度か登った記憶があるが、それ以来とんとご無沙汰だったので‥‥二十年ぶり?(汗) はてさて、どれだけ体力が落ちてるのやら‥‥。

今回選んだのは、丹沢表尾根縦走コース。秦野からバスで行けるヤビツ峠から登りはじめ、二ノ塔、三ノ塔、烏尾山と尾根を伝って、塔ノ岳を目指す。下りは大倉尾根を一気に下って、大倉バス停から渋沢に戻るという計画だ。小さめのリュックに合計1リットルの水と、簡単な食糧、ウインドブレーカー、タオル、財布とiPhone、それからGR DIGITAL IVを詰め込んだだけの軽装備で行くことにした。

早朝の秦野駅に降り立ってみると、ものすごい数の登山客がひしめいていて、びっくり。ヤビツ峠行きのバスに乗れるのか、ちょっと焦ったが、幸い臨時バスがばんばん来てくれて、事なきを得た。

ヤビツ峠からは、一時間少々、蒸し暑い木立の間の道を登る。ふっと周囲が開け、ふりかえると、快晴の空の下に広がる緑豊かな表丹沢の山々が見えた。

奥多摩散策

ひさしぶりに遠出。といっても、同じ東京都内の奥多摩へ。ずいぶん昔に一度歩いたことのある、奥多摩湖から奥多摩駅までのハイキングコースをまた歩いてみた。この間新しく購入したばかりの、リコーのGR DIGITAL IVの試し撮りもかねて。まずは、奥多摩駅からバスに乗ってやってきた奥多摩湖にある、小河内ダムの水門。

ひさしぶりの自転車

いい天気。今日を逃すと当分チャンスがなさそうだし、自転車に乗ることにした。紫外線が凄そうなので、念のために日焼け止めを塗って、いざ出発。Tシャツとクロップドパンツでも暑いくらいだ。

選んだのはおなじみの、野川公園から野川、二子玉川、多摩川と回るコース。本当は、先月の桜の時期にこのコースを回りたかったのだが、忙しくて時間が作れなかった。でも、今日は今日で、野川沿いの景色は新緑で眩しいくらいに綺麗だった。魚採り網を手に、川に入ってはしゃいでる子供たち。川べりの遊歩道をぶらぶら歩いてる老人たち。僕と同じように自転車に乗ってる人も多い。やたら長いレンズと三脚をつけたカメラを持ち歩いてる人も多いな(笑)。

二子玉川から多摩川にかかる橋を渡ると、「‥‥何のフェスだ?」と訝りたくなるほど、ものすごい数の人たちが河川敷でバーベキューをしていた。肉の焼ける匂いと煙でむせかえるほど(苦笑)。休みの日の多摩サイは、ふらふらと危なっかしげに歩く人が多い一方で、シャカリキにロードレーサーを飛ばす人もいて、危なくて気が抜けない。

登戸茶屋でコーラを飲んで休憩。登戸から鶴川街道までは、左岸の車道を走ってみることにした。ある意味、こっちの方が多摩サイより安全かも。ギヤをトップに入れてしばらく走ってみたが、帰りの深大寺あたりの上り坂で、あっさりと脚が動かなくなってしまった。なまってるなあ、身体‥‥。去年の夏にラダックで増殖したヘモグロビンも、普通の人並みに戻ってしまったようだ。

ガイドブックが校了すれば、しばらくはそんなに忙しくならなさそうだし、自転車とか、登山とか、ちょっとがんばってみるか。

冒険家にはなれない

三年前に「ラダックの風息」を出して以来、「ヤマタカさんは、冒険家なんですね!」みたいな扱いをされることがよくある。間違いです。僕は、基本的にはヘタレなのだ。

重いカメラバッグを担いで、ラダックやザンスカールの山の中を歩き回ってはいるけれど、それはサポートしてくれる現地人の仲間がいてこそで、自分一人では、サバイバル能力のカケラもない。確かに、今まで何度か危ない目には遭ったが、それは想定外の悪天候などの要素も絡んでいるし、普段はできるだけリスクを冒さないように行動している。

うまく言えないが‥‥「一か八かの困難に挑戦して、それをクリアする」ことを「冒険」と呼ぶのなら、僕はそういう「冒険」を最終目標にする類の人間ではないのだと思う。僕がラダックやザンスカールの山々に分け入るのは、歩いてしか行くことができない場所にある風景や、動物や、人々に会いたいからだ。頂点に辿り着く達成感より、谷間を歩く愉しさを味わっていたいのだと思う。

なので、僕は冒険家にはなれない。