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冬空

今日も歩いて吉祥寺へ。昨日、ヨドバシでボーズの新型イヤフォン用のイヤーチップを買ったのだが、店員の勘違いで旧モデルのイヤーチップを渡されていたので、その交換のため。ちっちゃな商品だし、郵送するとかしてくれればいいのに、なぜか頑として「ご来店ください」と要求されたので‥‥。どっちが客なんだか。

こんな用事のせいで時間と労力を無駄にしたような気分になるのは癪なので、無印良品でバスタオルを、ユニクロで部屋着のスウェットの上下を補充。井の頭公園でちょっと休憩し、風の散歩道をぶらぶら歩いて戻ることにした。

キンと澄み切った、気持のいい冬空。すっかり葉を落とした木々が、傾いた日射しに照らされている。桜の咲く春もきれいだし、蝉の鳴く夏も、葉が色づく秋も好きだが、やっぱり僕は、冬の景色が一番好きなのかもしれない。たぶん、そういう性分なのだろう。

二年ぶりの歯医者

昨日の夜は、営業時間終了後のリトスタに行って、ラダック写真展の撤収作業をしてきた。写真展の反省は「Days in Ladakh」の方にまとめたので、興味のある方はそちらを読んでみてほしい。まあ、同じことをくりかえすのに満足していては成長はない、ということかな。

今日の夕方、約二年ぶりに歯医者に行ってきた。以前治療してもらった歯の周囲がちょっと腫れぼったいので、そのメンテナンスに。すぐに終わるかなと思っていたら、予想以上におおごとになって、かれこれ四十分以上も口を開けっ放しにしていなくてはならなくて‥‥アゴが疲れた(苦笑)。前に治療した箇所のさらに奥に薬を詰め直して、しばらく様子を見るという。それでもよくならなかったら、「外科的処置」を施すそうだ。げ‥‥外科的?!(汗)

こうして、また歯医者通いが始まったのであった。やれやれ。

母の味

リトスタのミヤザキ店長のお母さんが、昨夜亡くなったという知らせを聞いた。まだ六十三歳だったという。

ミヤザキさんのお母さんとは二、三度お会いしたことがあるくらいで、ちゃんとした形で話をさせていただいたのは、去年の春、「リトルスターレストランのつくりかた。」の執筆中に一時間ほどインタビューさせてもらった時だけだったと思う。あのミヤザキさんのお母さんだからさらにパワフルな方なのかと思いきや、とても穏やかで、女性的なたおやかさを纏っている方だなあという印象。でも、その内に秘めた芯の強さのようなものは、話をしている時にも伝わってきた。

ちゃんとお会いしたのはその時だけだったのに、訃報を聞いた時、もっとずっと親しくしていた方が亡くなったような気分になったのは、お母さんについて、ミヤザキさんとokayanから本当にたくさんの話を聞いていたからだろうか。

ミヤザキさんが子供の頃から、お母さんは吉祥寺でパブの仕事を続けていた。昼夜逆転しているような生活でも、家事ではけっして手を抜かなかったという。とりわけ心を込めて作っていたのが料理で、ミヤザキさんが高校生になると、お母さんは毎日お弁当を用意していた。そのお弁当は本当においしかったそうで、クラスメイトに「厚焼き玉子、おいしそう!」「その唐揚げ、これと交換して!」とよく言われていたのだとか。

厚焼き玉子も、鶏の唐揚げも、リトスタの不動のレギュラーメニュー。リトスタで出される料理の味の基準は、初代料理長であるミヤザキさんのお母さんの料理だ。お母さんの料理がなければ、リトスタというお店自体が存在し得なかったかもしれない。

お母さんの料理の味は、娘であるミヤザキ店長と、お店のスタッフたちが受け継いでいく。この文章を読んでくださった方は、もし次にリトスタを訪れる機会があれば、ちらっとそんなことに思いを馳せていただければと思う。

謹んでご冥福をお祈り致します。

新しいパダワン

夜、ひさびさに晩酌をしにリトスタへ行く。お店には、昨日から新しいパダワン、つまり見習いスタッフの女の子が加わっていた。緊張した面持ちながらも、一つひとつの仕事——コップをそっと机に置いたり、おしぼりが入っていた袋を回収したり、といったことを慎重にこなしていた。

ミヤザキ店長によると、彼女は「リトルスターレストランのつくりかた。」を読んで、このお店で働こうと思い立って上京してきたのだという。まだリトスタ以外の仕事も決まっていなければ、住む場所すら探している最中というくらいだから、相当な肝の据わりようというか、覚悟というか。そもそも、本を読んで興味を持ったからといって、それでスタッフとして採用されるとは限らないわけだし。

もちろん、彼女が上京してリトスタで働こうと決めたのには、ほかにいくつもの理由があるのだろう。でも、自分が書いた本が他の人の人生に入り込んで、その人の背中をポンと押しているのかと思うと、何だか不思議な気分だ。と同時に、身の引き締まる思いもする。本作りの仕事では、けっして手を抜いたりできないな、と。

新しいパダワンリトスタになじんでいけるかどうかはまだわからないけれど、あのお店で働く日々は、きっと彼女にとってかけがえのない経験になると思う。少なくとも、時給250万円でドミノ・ピザで働くよりは。

季節の狭間で

昨日依頼された添削の作業を進める。手直しを始めたらきりがないが、文章の書き方には唯一の正解があるわけではないし、ほどほどにやっていくことにする。

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今日は、いくつかの小さなことに、季節の狭間のようなものを感じた。

昨日までは部屋のフローリングの床を裸足で歩き回っていたのに、今日は「何か冷たいな」と思ってスリッパを履くようになったとか。夕方、買い物をしに外に出た時、スウェット一枚だと風が冷たくて、ぶるっと身を震わせたとか。近所の公園のイチョウの大木の下を通りがかると、ギンナンの匂いがぷんと立ち込めていたとか‥‥。

そういえば、窓の外で鳴いている秋虫の声も、ずいぶんか細くなった。ホットミルクでも飲むか。