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新規会員

僕は普段からスーツを着るような職業ではないので、クリーニング店を利用するのは、年に一度、今くらいの時期に冬物のコートやセーターを持っていく時くらいだ。近所には何軒かクリーニング店があるけど、持っていく店はここ数年決まっている。

その店では新規会員になると、一年間有効の会員証をくれて、特典としてその初回のクリーニングを半額にしてくれる。で、一年後に会員証の有効期限が過ぎると、また一年間有効の会員証をくれて、特典の半額サービスをしてくれる。つまり僕の場合、年に一度、会員証の有効期限が過ぎた直後に冬物をクリーニングに出すようにすると、毎年常に半額で利用できる。これは僕が気付いたわけではなく、お店の人がわざわざ「そうした方がいいですよ」と入れ知恵してくれたのだが。

このシステム、ありがたいといえばありがたいけど、油断してると冬物をクリーニングに出すのがどんどん後にずれていくので、うっかり夏にならないように(苦笑)、気をつけねば。

人の価値

それぞれの人の価値というのは、結局のところ、誰かに何かをしてあげられているかどうか、なのかもしれない。

一曲の歌で世界中の人々を感動させられる人。オリンピックでメダルを取って国民を熱狂させられる人。何世代にもわたって読み継がれるベストセラー小説を書ける人。何万人もの社員を養う大企業を創業した人。そういう人たちはすごいんだろうというのは、まあ、わかりやすい。

でも、自分の子供を日々大切に守り育てる父親や母親、地味でも社会を支えるのに欠かせない仕事に黙々と取り組む人も、わかりやすく華々しい活躍をする人と同じか、それ以上にすごいと、僕は思う。病の床に臥している人でも、生きることそのものが、その人を大切に思う人たちの心の支えになっているはずだ。

価値のない人というのは、自分自身のことしか眼中になくて、他人を欺いたり傷つけたりすることに何の痛みも感じないような人。そういうろくでもない人以外、たいていの真っ当に生きている人たちの人生には、すべからく価値があるのだと、僕は思う。

だから、日々を当たり前に、真っ当に、心のどこかで誰かを思いながら、生きていけばいい。

空の向こうの悲しみに

暗い空の下、強い風が吹き荒れる不穏な天気。まだ5月だというのに、台風が近づいているらしい。

幸い、今日は特に外に出かける用事もなかったので、丸一日部屋に閉じこもって、地味に過ごす。昼にかまたまうどんを作り、コーヒーをいれ、夕方は実家から送られてきたそばを茹で、青梗菜のおひたしを作った。冷蔵庫にはまだ一本ビールがあるし、このまま引きこもって嵐をやり過ごせそうだ。

台風から温帯低気圧に崩れた嵐は、ぬるい感触の雨を窓に叩きつけている。ネパールでは今日、大きな余震が発生して、またたくさんの死傷者が出てしまったという。雨音を聞きながら、遠い空の向こうの悲しみに、思いを巡らす。何か、できることはあるだろうか。

いきなり工事現場

今朝は別に早起きする必要もなかったのだが、8時過ぎ頃、どんがらどんがら、がしゃんがしゃん、というけたたましい金属音で目が覚めた。

今日あたりから、うちのマンション(3階建て)の屋根の防水工事をやり直すという話は聞いていたのだが、なぜ1階にある僕の部屋のすぐ外でこんな大きな音がしてるのだろう。しばらくして外に出てみると、僕の寝室の外側に、地上から屋根の高さまで、外壁に沿って鉄パイプの細長いやぐらが組まれている。頂上にはウインチが据えられていて、工事に必要な材料を上に運び上げるためのものらしい。刺激臭のするコーティング剤か何かの缶が、浴室の換気窓の外に山積みされている。どうりで部屋がシンナー臭いと思った。

屋根の工事だから関係ないやと思ってたら、実は結構ダイレクトに影響を受けることになってしまった。これからしばらく、寝室のすぐ外が毎朝こんな感じなのか。何だか落ち着かないなあ‥‥。

「本気を出す」ということ

出口の見えない出版不況の今、多くのフリーランスのライターやフォトグラファーにとって、厳しい状況が続いている。そんな中でも、新たにライターやフォトグラファーになりたいという人は世間には結構多いらしい。

たとえばライターでは、ウェブライターとかネットライターとかいう肩書きで、1文字0.5円とかそれ以下という異様に安い報酬で文章を量産している人も少なくないのだとか。報酬はお小遣い以下でも、それでライターを名乗れるのなら、ということなのだろうか。まあ、どんな仕事を選ぶのかは人それぞれだけど、正直言って僕には、1文字0.5円でしか扱われない仕事の積み重ねが、ライターとしての明るい未来につながっているとは到底思えない。そうやってただ無闇に量産されて忘れられていくだけの言葉に、はたしてどれほどの存在価値があるのだろう?

それでも、どうにかして真っ当なライターに、あるいはフォトグラファーになりたいという人は、一度、何らかの形で「本気を出す」べきではないかと思う。仕事の場で実現できるのが一番いいけれど、それが叶わないなら、自分のサイト上とかでも構わない。自分で自分に言い訳ができないくらい、本当の本気で、自分にとって一番大切な物事について文章を書いてみる、あるいは写真を撮ってみる。そうして全身全霊をかけて心血を注いで文章や写真に取り組んで、それを人に見てもらえば、自分自身の実力がどれほどのものかよくわかるし、その時点での自分の欠点も見えてくる。何より、なぜ自分は文章を書きたいのか、あるいはなぜ写真を撮りたいのかがわかってくる。

ライターになりたいからとか、フォトグラファーになりたいからとかではなく、何を書きたいか、何を撮りたいのか、どこかで一度本気を出して、周囲と自分自身に問いかけてみるといいんじゃないかなと思う。