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奥華子「プリズム」

prism奥華子がデビュー10周年の節目にリリースした8枚目のアルバム「プリズム」。無色に見える太陽の光も、プリズムを通せば、七色に分かれて見えることに気づく。日々の暮らしの中で、あるいは自分自身の心の中で、さまざまなことに「気づく」のがこのアルバムのテーマかもしれない、と彼女は以前ラジオで語っていた。

確かにこのアルバムの中では、いろんな「気づき」が歌われている。思い出の中にいる人への気持ち。いつも支えてくれていた家族のぬくもり。身近すぎて気づかずにいた大切な人の存在。何気ないけれど自分にとってかけがえのないもの。気づくことで大切にしていけるものもあれば、気づいてしまったがために傷つくことや、取り返しのつかない後悔に苛まれることもある。そういったさまざまな場面での「気づき」を選び取り、シンプルな言葉で詞に置き換えていく彼女のまなざしの確かさには、毎度のことながら唸らされる。

曲の方も、いい意味ですっぱり開き直ったというか、自分自身にとても素直に向き合って、作りたい曲を作ったんだろうなという印象。彼女の代名詞の一つでもある弾き語りの曲は、意外なことに今回は一曲しかないのだが、アレンジのトーンは全体的にとても安定していて、特にストリングスの加わった曲の繊細なアレンジは、彼女の新しい一面を感じさせる。

12月23日には、昭和女子大の人見記念講堂で開催されるライブに、ひさしぶりに足を運ぶ。このアルバムに収められたさまざまな「気づき」の曲たちがどんな風に歌われるのか、楽しみだ。

「妬み」について

自分が仕事をしながら生きていく上で、他の誰かから「妬み」という感情を持たれるなんて、金輪際ありえないだろう、としばらく前まで思っていた。でも、たぶん数年前、自分自身で書いたり撮ったりして本を作るようになった頃から、ほんの時折、そういう予想外の波動を感じるようになった。

「妬み」の原因と構造は、案外シンプルだ。相手より自分の方がセンスや実力や経験値が上なのに、相手の方が周囲から不相応に評価されて、自分よりおいしい思いをしているのが面白くないから、とか。煎じ詰めればだいたいそんな感じ。たいていの場合、そういう人の自己評価はどこかしらズレているか、よくても実力はせいぜい相手とどっこいどっこいのレベルだと思うのだが。

「妬み」を感じること自体は、別に悪いことではない。その悔しさをバネに実績を伸ばす、負けん気の強い人はたくさんいる。ただ、困ったことに、その「妬み」をネガティブな方向に発散させてしまったりする人もたまにいる。相手に対する不当な圧力や妨害、第三者に向けての中傷、ネットを使った匿名の中傷‥‥。そんなことをしても自分の評価は上がるわけがないし、単に自分自身の心を貶めるだけなのに。

「妬まれる」側にも、問題があるのかもしれない。世間の評価に実力が伴っていないのかもしれない。たとえば僕の場合は、評価も実力も稼ぎもいずれもいまいちなので(だから妬まれる理由がわからないのだが、苦笑)、「妬み」を完全に回避するには、そういう感情を相手が持つ気にならなくなるくらい、実力を伸ばさなければならない。でも僕は、持って生まれた乏しい能力をこれ以上伸ばすのは無理なので、自分の携わる分野で、小さな結果を気長にコツコツ積み上げていくしかない。誰も追随する気が失せてしまうくらい、淡々と、コツコツと。

まあでも、その前に、仕事に関わることで誰かを妬むなら、心底くだらない中傷や裏工作に走ったりせず、自分の仕事でそれ以上の結果を出して跳ね返してみせろや、とは一応言っておきたい。ほんと、くだらないことはやめましょう。

薄暮の中を

昼の間にタイの写真のセレクトと現像を少し進め、午後の遅い時間に目黒まで出かけて打ち合わせ。東京に戻ってきてからというもの、仕事、仕事で、毎日がやたらせわしない。

打ち合わせ場所の喫茶店から外に出ると、太陽は姿を消し、空は淡い紫色に染まっていた。一日の中で、このほんのわずかな薄暮の時間、地面から影が消えてうっすらと夜が漂ってくる時間が、僕は好きだ。

ひんやりとした空気の中を、フリースベストのポケットに手を突っ込んで、ぶらぶらと恵比寿のあたりまで歩く。温かいラーメンが、すきっ腹にしみる季節になってきた。

いってらっしゃい

昨日の夕方、三鷹南口にある理髪店へ。1カ月ぶりの散髪。

この理髪店には結構昔から、1、2カ月に一度くらいお世話になっているのだが、数年前から「仕事でしょっちゅう海外に、しかも結構エクストリームなところに行ってる人」という認識をされるようになった。そりゃそうだ。しばらく顔を見せないと思ったら、日焼けして頰のこけた顔とぼっさぼさの頭で現れるのだから。

「この間はどこに行ってたんでしたっけ? アフリカ?」
「そうです。ライオンとお近づきになってきました」
「ははは。今日はどうします? 涼しくなってきたから長めに残しときます?」
「いえ、来週から1カ月ほどタイに行くので‥‥夏仕様で短くしてください」
「また行くんですか。ずっと日本にいないですねえ」

お会計を終えて店を出る時、「いってらっしゃい!」と後ろから声をかけてもらった。いってきます、そろそろ。

歌舞伎揚とぼんち揚

僕には、主に晩酌の時間を軸に、時折何の脈絡もないマイブームが訪れる。今のマイブームは、歌舞伎揚である。

僕がよく食べているのは、天乃屋(というか歌舞伎揚という商品を作っているのがこの会社)のぷち歌舞伎揚、食べきりサイズ。スーパーやコンビニなど、割とどこでも手に入る。味はまあ、何というか、歌舞伎揚なのだが(笑)、最近これをつまみにビールを飲むのが、妙にしっくりくる。カロリー的にやばいであろうことは承知の上で。

でも、岡山に住んでいた子供の頃は、歌舞伎揚は見たこともなく、代わりに食べていたのはぼんち揚だった。調べてみると、関東は歌舞伎揚、関西はぼんち揚が、それぞれ圧倒的なシェアを占めているそうだ。どちらも形はかなり似ているけれど、食べ比べてみると、微妙な味の違いはあるらしい。

そんなわけで、今宵も高カロリーなつまみでビールを飲んでしまった。さすがにやばいなこれは。