Tag: Ladakh

役に立つ本、心動かす本

昨日のエントリーから、うっすらと続きみたいな感じでつらつらと。

二年前に「ラダック ザンスカール トラベルガイド」を出した時、本を読んで実際にラダックを旅した読者の方々から、「ありがとうございました」「助かりました」と言っていただいた機会が何度もあった。それまで僕はガイドブックの類の仕事はまったくしてこなかったから、自分の作った本が誰かの役に立っているというのは新鮮な経験だった。まあ、ラダックという特殊な場所のガイドブックだったからというのもあると思うけど。

ガイドブックのような類の本は、必ず「役に立つ本」でなければならない。そのためには、地図や情報を綿密に確かめつつ、その土地の各種スポットをなるべく公平な目線で紹介する必要がある。でも、そこであまりにも作り手の主観や思い入れを排除しすぎると、無味乾燥で当たりさわりのない内容になってしまいがちだ。そういう旅関係の本や雑誌、残念ながら結構多い気がする。

ラダック ザンスカール トラベルガイド」を作った時、僕は「役に立つ本」としてだけでなく、「心動かす本」にもしたいと思っていた。安直な釣り文句で煽ったりはしなかったが、写真とコピーとページ構成と、ぱっと見は何気ない説明文にまで、伝わらないかもしれないと思いつつ、めいっぱい気持を込めた。自分はラダックが好きなのだということ。この土地の魅力を、一人でも多くの人に伝えたいのだということを。

ガイドブックや実用書のような「役に立つ本」に、作り手の主観や思い入れは一切いらないという考え方の人もいるかもしれない。でも僕は、たとえガイドブックでも、「役に立ち、心も動かす本」にすることを目標にしたい。旅の本は特に、そうであるべきだと思うし。

それで「面白かったです! ありがとうございました!」と読者の方に言ってもらえたら、きっと最高なんだろうな。かなり欲張りだけど(笑)。今までもこれからも、そういう本作りを目指したいと思っている。

二年ぶりのラジオ

昼、半蔵門へ。TOKYO FMの番組にゲストとして呼んでいただいたので、その収録に。

ラジオに出させてもらうのは、かれこれ二年ぶりくらいか。スタジオの雰囲気というのは一種独特なもので、普通の人間が足を踏み入れてマイクの前に坐ったら、十中八九、緊張する。案の定、やっぱり今回も緊張した。

ただ、以前の経験が少しは活きたなと思ったのは、「あ、自分、今、緊張してる」ということに考えが囚われてしまうと、本当にギクシャクとどうしようもなくなってしまうので、緊張してるかどうかということ自体、考えないようにしていたということ。その辺はトークイベントでも、あるいは割とプレッシャーのかかる条件下での取材でも、共通することかもしれない。

まあそれでも、緊張したなあ。今回はそれを振り払おうとするあまり、新橋の居酒屋でしゃべってるみたいなノリになってしまった(苦笑)。あれでよかったのかな。

氷河と寝袋

この間、毛布と布団の正しい使い方というのがネットで話題になっていた。これはたぶん、羽毛布団のロフトを最大限に活かすための使い方というのがキモなのだろう。僕はもともと羽毛布団(安物だけど)の上に毛布をかけていたのだが、試しに身体の下にも薄手の綿毛布を敷いてみたところ、確かに暖かい。下に敷く毛布が分厚すぎたり、材質がアクリルだったりすると、かえって寝苦しくなりそうだけど。

まあそれはそれとして、寝る時に一番暖かい寝具は、やっぱり寝袋だと思う(笑)。さすがに自分の家でわざわざ寝袋を使ったりはしないけど、何だかんだで、寝袋で寝起きしている回数は普通の人よりもだいぶ多いはずなので、そのありがたみは十分わかっているつもり。

僕が持っているのはマウンテンハードウェア製のものが二つで、一つは使い勝手のいいスリーシーズン用、もう一つは冬のラダックやこの間のアラスカでのキャンプで使った厳寒期用。厳寒期用は、襟元までみっちりダウンが詰まっているマイナス20℃くらいまで耐えられる仕様のもので、実際、チャダル・トレックや雪のワンダーレイクでもぐっすり眠ることができた。

でも、寝袋の世界にも、上には上がある。たぶん最強クラスなのは軍用の寝袋だろう。ラダックでも、地元の人々はインド軍の放出品の寝袋を使っている。これはめっちゃでかくてかさばるのだが、インナーとアウターを組み合わせて使うモジュラー構造になっていて、両方使うとものすごく暖かい。あまりにも暖かすぎるので、チャダルあたりでは片方だけ使っている人も多かった。

どうしてそんなに過剰なほど暖かい仕様になっているのかというと‥‥インドの最北部、ラダックのヌブラよりさらに北には、今もインドとパキスタンが領有権を争っている、シアチェン氷河という場所がある。ここは標高が6000メートル前後もあって、世界で最も標高の高い戦場とも言われている。そんなとんでもない場所で野営するのにも耐えられるように開発されたのが、この過剰に暖かい寝袋なのだそうだ。

世の中、いろんな場所で寝てる人がいるものである。

慣れない暑さ

昨日の夜はずっと寝付けなくて、結局、朝の五時頃、外がしらじらと明けてくるまで起きていた。昼の間は家で原稿を書いていたのだが、蒸し暑いのとだるいのとで、どうにも調子が上がらず、途中でクーラーをつけて30分ほど昼寝。何だかなあという感じである。

最近、知り合いに会うと「あれ? この季節に日本にいるって、珍しいよね?」と異口同音に言われる。確かに去年までは、今ぐらいの時期はとっくの昔に、ラダックかスピティだ。あっちは標高3500メートルのヒマラヤの世界、湿気や蒸し暑さとは無縁の場所だ。だから、東京のこの慣れない蒸し暑さは、身体にじわじわこたえる。

去年までの僕は、本当に贅沢すぎるくらい贅沢な避暑をしてたんだなあ、とあらためて思う。しかし暑いな今夜も。

タマネギに死す

昨日の夜半過ぎから、ラダックブログのWeb上での移行作業に取りかかる。

最短時間ですませるため、必要な設定はすぐにコピペしたりして反映できるようにあらかじめ準備しておいたのだが、最初のWordPressのインストールで謎の表示トラブルが発生。やむなく再度クリーンインストールすると、今度はどうにか成功。明け方までかかってデータの移行を終え、今日の昼に画像の追加など細かい調整をして、無事にリニューアルオープンさせることができた。

長年の懸案、ついに解消。ほっとした。

そんなわけで、夕方にはすっかり腹が減ったので、たっぷりと晩飯を作る。スーパーで特売だったコロッケ、チンゲンサイと溶き卵の中華スープ、タマネギとツナのマヨポン酢和えサラダ。このうちサラダは、正直、たくさん作りすぎた。この間、実家から大きなタマネギが大量に送られてきたのだが、そのうちの一個を調子に乗って全部スライスしたら、サラダにあるまじきとんでもない量に。

まあでも、とにかく腹減ってるし、食うかー、と、もしゃもしゃ生のタマネギを頬張っていたら、刺激が強すぎたのか、何だか異様に身体がほてって、首元の頸動脈がドクドク、頭がボンヤリしてきた。生のタマネギを食べ過ぎて倒れたりしたら、だいぶ風変わりなエピソードだな‥‥。

学んだ。生のタマネギは控えめにしよう。次はバターと一緒に炒めて、オニオンスープにするかな。