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遠くを想う

先々週は5件、先週は7件、今週は8件。大学案件の取材ラッシュが、いよいよ佳境に突入してきた。今週の平日は木曜だけかろうじて空いていたので、みっちり原稿の執筆に使う予定だったのだが、ついさっき、そこも急な取材で埋まってしまった。原稿を書くのがなかなか追いつかない。翌朝に取材があるのに徹夜で書くわけにもいかないし。

机に向かっていて切羽詰まった気持になる時は、椅子の背もたれに身体を預けて、遠くのことを考える。澄んだ青い空。渇いた地面に咲く小さな花。風に揺れる黄金色の麦穂。懐かしい人たちの声。

「‥‥‥‥タカ! ずいぶんひさしぶりだねえ。しばらく来ないうちに、顔がなまっちろくなっちゃってるよ!」

僕には、もう一つの居場所がある。それは、とても恵まれた、幸せなことだと思う。

トライ・アゲイン

午前中、白山で取材。終了後、担当さんに別れを告げると同時にダッシュして駅に向かい、次に入っていた打ち合わせ場所へ。取材のために僕一人だけ遅れての参加だったのだ。

打ち合わせは、二月末に行くはずだったのが直前でキャンセルになったインド取材について。今年の初夏にかけて、再びトライすることになったのだという。僕自身はまたゼロから事前調整に右往左往することになるが、これも仕事だ。

この夏、場合によっては、自分のラダック取材と合わせて二カ月くらいインドに行きっぱなしになるかもしれない。長いなあ(苦笑)。まあ、昔に比べればどうってことないけど、秋は秋でまたタイ取材が入りそうだし。

その前に、まずはいよいよ始まった大学案件の繁忙期をどうにか乗り切ろう‥‥。

ゆっくりしてれば?

インドでの仕事が出発直前にキャンセルになった影響で、今週と来週はスケジュールにぽっかり穴が空いている。今日も一日、昨日の取材の原稿を手直ししたり、ノルウェー取材の請求書や経費の整理をしたりしていたのだが、それらもだいたい片付いてしまったので、ヒマというか手持ち無沙汰というか、ともすると不安にかられそうな状況ではある。

こんな時、ラダックにいる親しい人たちなら、僕に何て言うだろう、と考える。

「へー。仕事なくなったんだ。じゃあ、ゆっくりしてれば? 散歩して、どこかでお茶でも飲んできなよ」

‥‥こんなところだろうな(笑)。そもそも、あっちで暮らしてた時は、たとえ何かいらつきかねないようなことがあっても、そんなにせかせかした気分にはなれなかったのだ。すべてがゆったりと、なすがままに流れていた時間。

そうだね。本でも読んで、ゆっくり過ごすよ。

思わぬ展開

打ち合わせのため、日中ずっと出歩く。年明けに計画しているイベントのことなど、いろいろ調整中。想像以上に急な展開で、すでに多くの人を巻き込みつつあるので、何とかその方々の期待を裏切らないような結果を出せるといいのだが。

それとは別に、ちょっと、というか、まったく予想もしていなかったような依頼をいただいて、少々びっくりしていたりもする。今までの自分の仕事とは、フィールドは同じでもかなり種類の違う仕事なのだけれど、うまくいけば本当に意義のある成果につながると思うので、こちらも何とか首尾よくやり遂げたいところだ。

そんな思わぬ展開の連続で、文字通り、師走間近、ばったばたである。

役に立つ本、心動かす本

昨日のエントリーから、うっすらと続きみたいな感じでつらつらと。

二年前に「ラダック ザンスカール トラベルガイド」を出した時、本を読んで実際にラダックを旅した読者の方々から、「ありがとうございました」「助かりました」と言っていただいた機会が何度もあった。それまで僕はガイドブックの類の仕事はまったくしてこなかったから、自分の作った本が誰かの役に立っているというのは新鮮な経験だった。まあ、ラダックという特殊な場所のガイドブックだったからというのもあると思うけど。

ガイドブックのような類の本は、必ず「役に立つ本」でなければならない。そのためには、地図や情報を綿密に確かめつつ、その土地の各種スポットをなるべく公平な目線で紹介する必要がある。でも、そこであまりにも作り手の主観や思い入れを排除しすぎると、無味乾燥で当たりさわりのない内容になってしまいがちだ。そういう旅関係の本や雑誌、残念ながら結構多い気がする。

ラダック ザンスカール トラベルガイド」を作った時、僕は「役に立つ本」としてだけでなく、「心動かす本」にもしたいと思っていた。安直な釣り文句で煽ったりはしなかったが、写真とコピーとページ構成と、ぱっと見は何気ない説明文にまで、伝わらないかもしれないと思いつつ、めいっぱい気持を込めた。自分はラダックが好きなのだということ。この土地の魅力を、一人でも多くの人に伝えたいのだということを。

ガイドブックや実用書のような「役に立つ本」に、作り手の主観や思い入れは一切いらないという考え方の人もいるかもしれない。でも僕は、たとえガイドブックでも、「役に立ち、心も動かす本」にすることを目標にしたい。旅の本は特に、そうであるべきだと思うし。

それで「面白かったです! ありがとうございました!」と読者の方に言ってもらえたら、きっと最高なんだろうな。かなり欲張りだけど(笑)。今までもこれからも、そういう本作りを目指したいと思っている。