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部屋が腐海

昨日の朝、インドから日本に戻ってきた。

デリーからのフライトは予定より1時間ほど遅れ、成田からのリムジンバスもいつもより時間がかかったが、昼過ぎにはどうにか三鷹に到着。駅から自宅まで、重い荷物を背負いながら歩く。公園の木々で、蝉が鳴いている。そういえば今年になって初めて蝉の鳴き声を聞くなあ、と思い巡らしていたら、道端のあちこちに、短い生涯を終えた蝉たちの亡骸がぽとぽと転がっている。もうそんな季節だったのか……。

二カ月ぶりに戻った自宅のマンションは、控えめに言っても、すっかり腐海と化していた(泣)。出発前にはそれなりにいろんなカビ対策を施していったのだが、革のベルト2本とショルダーバッグを特に激しくやられていて、他の場所にも何カ所か飛散。くたびれきっているのに、1、2時間ほど、消毒用エタノール(こういう時のために何年か前からボトルで常備している)であちこちいろんなものを拭きまくるはめに。

まあ、そんなこんなで、また1、2カ月ほど、東京での生活。

明日からインドへ

昼、渋谷へ。モンベル渋谷店で開催された三井昌志さんの帰国報告会を拝見する。注目していたミャンマーのロヒンギャ問題についてのレポートは、ミャンマー側の村だけでなく、バングラデシュ側から国境付近にあるロヒンギャの難民キャンプを訪れた際の話が興味深かった。こういう問題は、現地取材によって事実に基づく情報を積み上げていかないと、なかなか全容が見えてこない。三井さんは写真のスキルだけでなく、行動力や実行力の面でももっと評価されるべき人だと思う。

終了後、知人たちとマメヒコでコーヒーを飲んで別れ、夕方からはリトスタで恒例の最後の晩餐。今回もいろいろおいしくいただいた。明日の朝は4時起き。目覚ましに反応してちゃんと起きて、最後の身支度と家を留守にする作業をしてしまえば、あとは出発するだけだ。はー。がんばろ(苦笑)。

帰国は8月26日(土)の予定。それまでこのブログの更新もしばらくお休みします。では。

さすがに眠い

昨日は午後から渋谷で、夏のスピティツアーとザンスカールツアーの細かい打ち合わせ。いろいろ確認できたし、現地の貴重な資料もいくつかお借りできたので、ありがたかった。その後、夕方から綱島のポイントウェザーで飲み会。これも楽しい時間だった。

帰りはそこまで遅くならなかったものの、家に戻って雑用を片付けたりしてるうちに、寝たのは夜の2時過ぎ。今日は朝イチで大学案件の取材が入っていたので、3時間くらいの睡眠時間で起きなければならなかった。さすがに眠い。取材先は新宿から小田急線で1時間以上離れた場所なのだが、うっかり熟睡すると小田原まで行ってしまいかねないので、音楽を聴きながら我慢。駅前のマクドナルドでコーヒーを飲んでカフェインをキメ、どうにか取材を乗り切る。

しかしまあ、疲れた。今夜は、たっぷり寝よう……。

人の物差し、自分の物差し

昔、飲み会の席で「一番好きなラーメンの店は?」という話題になった時、ある人が都心の高級中華料理店を挙げたので、その理由を聞くと、「あの有名俳優のナントカさんの行きつけの店だから」という感じの答えが返ってきた。

その人は、ナントカさんのおすすめコメントをテレビか雑誌で見て、店に足を運んだのかもしれない。きっかけとしては別に悪くないとは思う。ただ、その時の答えはどちらかというと、自分がその高級中華料理店を好きな理由を、ナントカさんの物差しを拝借することで立派に見せようとしているように感じられた。虎の威を借る狐、みたいに。

似たようなことは、僕も、世の中の人も、多かれ少なかれ、やっているのかもしれない。何かを選ぶ時に、人の物差しを参考にする。自信のなさを、人の物差しで補強する。でも、そればっかりでは、つまらなくないだろうか。自分自身の物差しで、好きなもの、嫌いなもの、正しいこと、間違ってること、一つひとつ決めていく方が、絶対に楽しいと思う。最初から確固たる物差しを自分の中に持っている人などいないのだから、試行錯誤しながら少しずつ精度を上げて、その過程を楽しんでいけばいいのに。

友人のラダック人のツェワンさんは、近所の主婦たちが料理を習いに来るほどの料理上手で、特にカレーは絶品なのだが、「好きな料理は?」と聞いたら、「スガキヤの坦々麺は、うまいですよね。あれは、うまい」としみじみ言っていた。それでいいんだと思う。

雲の爆発

今日は昼過ぎ頃から不穏な天気で、都内ではあちこちで、いわゆるゲリラ豪雨が降ったらしい。家で仕事しながら時折アメッシュを見ていると、見事なくらい赤黒い(=降水量が多い)パターンが、上空をまだらに蠢いていた。

ゲリラ豪雨の直訳になるのかわからないが、集中豪雨のことを英語ではCloudburst、「雲の爆発」と呼ぶそうだ。僕がこの単語を知ったのは、2010年夏のラダック。深夜に突然発生した集中豪雨で、ラダック全土で約600名もの死者・行方不明者が出た災害の時だった。僕自身、山中でのトレッキングからほうほうのていでレーに帰り着き、街の中に貼られていた新聞の切り抜きの見出しを見て、この単語の意味するところを知った。Cloudburstという言葉は、たぶん、ずっと忘れられないだろう。

今日の東京みたいなゲリラ豪雨が、もしラダックで降ったら、家の何軒かは流されてしまっているかもしれない。草木の乏しい剥き出しの大地は、雨に対しては本当に脆い。ラダックを取り巻く自然の怖ろしさには、そういう側面もある。