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インドノミゾシル

朝起きると、外は一面の白い雪。昼過ぎには止んできたが、東京でも、降る時には降るものだ。

幸い今日は外に出る用事もなく、食料の買い置きもあったので、完全に引きこもる。とはいえ、抱えてる仕事はいろいろあって、夜が更けるまで、電話やメールであちこちと連絡業務。一歩も家の外に出なかったのに、何だろう、この疲労感は(苦笑)。

気疲れの一番の原因は、現時点での懸案事項が、こちらがあーだこーだとじたばたしてもまったくどうにもならない、まさに神のみぞ知る状態にあるということ。いや、神というか、インド人というか‥‥(苦笑)。

あの国に振り回されるのは今に始まったことじゃないけど、ほんと、早くどうにかなってくれ、と祈るしかない。

あの日から

昨日は、モンベル渋谷店での「撮り・旅!」トークイベント第2弾。会場はぎっしり満席で、毎度のことながら、自分が何をしゃべったのかろくに覚えてないほどあっぷあっぷの状態だったが、出演者のお三方にも助けられ、どうにか無事に終えることができた。終わった後、近くの居酒屋でやった打ち上げが本当に楽しくて(同業者同士だとやっぱり俄然盛り上がる)、終電間際まで、かれこれ6時間くらい飲み続けた。

去年の代官山でのトークイベントの時など、「撮り・旅!」関係で何か節目になるような出来事があるたびに、2012年の夏のあの日を思い出す。

その年の春に「ラダック ザンスカール トラベルガイド」を上梓した後、僕は次の具体的な目標を見つけられずに宙ぶらりんな気持のまま、スピティの山の中をしばらく歩いて旅してから、乗合ジープでマナリに来ていた。それまでずっと埃まみれの日々だったから、ヴァシシトでは僕にしては割といいホテルに泊まり、きれいなシーツのベッドでごろごろしながら映りの悪いテレビを眺めるだけで、他に何をするでもない、だらけた時間を過ごしていた。

そんな時だ。ふっと、旅と写真の本を作ろうかな、という考えが舞い降りてきたのは。それはもう本当に単純な思いつきで、そういう本があったら自分が読みたいな、というだけのものだった。でも、その思いつきが、帰国してしばらくしてから次第に形を成していき、出版社との一年に及ぶ交渉の後、本当にたくさんの方々から力をお借りできたことで、「撮り・旅!」という一冊の本になった。

ヴァシシトでごろごろしてたあの日のどうということのない思いつきが、これほど大きな流れになるとは、正直、予想もしていなかった。世の中、何が起こるかわからない。でも、この本を自分の力だけで作り上げたとはまったく思っていない。ただただ、周囲の人々に助けられ、背中を押してもらえたことで、どうにかここまで来られたのだと思う。

さて、次はどうするかな。実はもう、たくらみはあるのだけれど。

「チェイス!」

dhoom3

日活と東宝東和がタッグを組んで、アジア各国の映画を日本で提供するレーベルとして立ち上げられた、GOLDEN ASIA。それにラインナップされた最初の3作品の中でももっとも注目されていたのが、インド映画歴代興収ナンバーワンの座に君臨する「Dhoom 3」(邦題「チェイス!」)だった。

傍目で見ていても、「チェイス!」に対する配給元の力の入れようは明らかだった。東京国際映画祭での特別招待作品としての上映に合わせて、実質的な主演のアーミル・カーンの初来日を実現させ、テレビや新聞、雑誌などへのメディア露出も積極的。上映館数も全国各地のTOHOシネマズをはじめ、これまで日本で公開されたインド映画とは桁違いの規模での展開だった。

思わぬ展開

打ち合わせのため、日中ずっと出歩く。年明けに計画しているイベントのことなど、いろいろ調整中。想像以上に急な展開で、すでに多くの人を巻き込みつつあるので、何とかその方々の期待を裏切らないような結果を出せるといいのだが。

それとは別に、ちょっと、というか、まったく予想もしていなかったような依頼をいただいて、少々びっくりしていたりもする。今までの自分の仕事とは、フィールドは同じでもかなり種類の違う仕事なのだけれど、うまくいけば本当に意義のある成果につながると思うので、こちらも何とか首尾よくやり遂げたいところだ。

そんな思わぬ展開の連続で、文字通り、師走間近、ばったばたである。

インド映画にリスペクトを

この間観に行った「チェンナイ・エクスプレス」が、同じ期間に公開されていた「クリッシュ」とともに、DVD化されてリリースされることになった。

去年から今年にかけて、日本で公開されたインド映画が次々とスマッシュヒットを飛ばしているし、今回の2作も2013年にインドで興収記録を塗り変えた大ヒット作。日本でもインド映画に対する認知が広まってきた‥‥と思いたいところだが、今回の2作のDVDのパッケージを見ると、まだまだ道程は険しいな、と思わざるを得ない。

たとえば「チェンナイ・エクスプレス」には、「愛と勇気のヒーロー参上」という、本編を観た人なら首を傾げずにはいられない、的外れなサブタイトルが付けられている。パッケージのデザインもアクションヒーローものっぽく作ってあるが、それも本編の内容とはかなりズレている。本国版のビジュアルの方が圧倒的にカッコイイし、内容に合っている。

クリッシュ」に至ってはさらにひどい。キャッチコピーが「ニート兼スーパーヒーロー カレーの国から参上」。‥‥この映画やインドという国の文化を小馬鹿にしているようにしか受け取れない。パッケージのロゴデザインも、正直、とてもプロの仕事とは思えない安っぽさだ。

もしかすると、日本でこれらの映画を扱っている側の人たちは、B級映画っぽいテイストを演出することで興味を惹こうと考えたのかもしれない。でも、そうした狙いは実に安直だし、日本のインド映画ファンの神経を逆なでするだけだと思う。とりたててインド映画に興味がない人だって、「カレーの国から参上」などという差別じみたキャッチコピーを見せられたら、嫌な気分になるのではないだろうか。

インド映画に、もっとリスペクトを。インドだけでなく、さまざまな国の人々や文化に、もっと理解を。