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スヰートポーヅ

二十代の終わり頃、ほんの二、三年だったが、九段下にあった雑誌の編集部に、契約社員として勤めていた。当時から僕はぼっちが好きだったので(苦笑)、社内の人と一緒におひるを食べに行くことはめったになく、たいてい一人で、神保町の方にぶらぶら歩いていって、どこかの店に入っていた。

すずらん通りの餃子専門店、スヰートポーヅには、通りがかった時に「あ、ここはおいしそう」と直感で入ったのが最初で、あのあたりでは誰もが知ってる老舗の人気店なのだという予備知識は、まったくなかった。完全に皮を閉じていない独特の小ぶりな餃子。赤だしの味噌汁と一緒にたいらげれば、その日の午後は、満ち足りた気分になれた。雑誌の編集部を離れてからも、昼頃に神保町界隈に来る用事がある時は、たいていスヰートポーヅでおひるを食べるようにしていた。

そのスヰートポーヅが、閉店することになったという。コロナ禍の影響か、それ以外に理由があるのかは、わからない。あの店は、あの佇まいで、ずっと変わらずにあそこにあるのだと、どこかで思い込んでいた。でも、変わらないものなど、どこにもないのだろうな。新型コロナウイルスは、日本中の至るところで、それを無慈悲に炙り出している。

嗚呼、残念だ。せめてもう一度、餃子中皿定食、食べたかった。

プロの仕事

昨日の夜は、荻窪の中華料理店、潮州へ。

かつて阿佐ヶ谷にあった頃から、潮州は、僕にとって、人生で一番おいしい中華料理を味わえる店だった。その潮州の料理長の馬さんが、ご家庭の事情で、今月いっぱいで店を離れられることになった。なので、相方と二人、今月最後の週末に、ぎりぎりすべり込みでお邪魔した次第。

XO醬。ピータン豆腐。エビマヨ。酢豚。レタスチャーハン。何というか、ほんまもんのプロの仕事を、一皿々々、いただいたような気がした。この一皿を作るのに、どれだけの修練と努力と集中力と気配りと、そして、まごころを、込めているのだろう。料理に限らず、プロとして仕事を残していくのであれば、かくあるべし、という姿を見せていただいたような、そんな気持ちになった。

おいしさに感動するだけでなく、勇気を奮い立たせてもらえるような料理は、めったにない。ごちそうさまでした。ありがとうございました。

黒船と金目鯛


連休中、伊豆半島の下田に一泊二日の旅行に行ってきた。台風17号の接近でどうなることかと思っていたが、行動時間中はほとんど雨に降られることもなく、下田の街をのんびり散策することができた。

宿は以前から友人たちにおすすめされていた、蓮台寺の金谷旅館に。千人風呂と呼ばれる巨大な総檜風呂で有名な宿で、実際に入ってみると、小学校のプールかよと思うほど大きい。特に、人の少ない朝方に入った朝風呂が最高に気持ちよかった。部屋もひなびた雰囲気の和室で、ゆっくり骨休めすることができた。

下田の街でどこを歩いていても目についたのは、黒船とペリーにまつわる案内板やスポット。街を挙げてのペリー推しっぷりに、かなりびっくりした。もう一つ、猛烈にプッシュされていたのが、金目鯛。みやげ物屋には、開きや切り身の真空パック、味噌漬や西京漬、干物に煎餅などなど、ものすごい数の金目鯛のバリエーションが並んでいた。「I♥IZU」というロゴステッカーのハートの部分に2匹の金目鯛の写真があしらわれてたのには、そこまで金目愛が深いのかと笑ってしまった。

実際、金目鯛、本当にうまいのである。煮付けや刺身、丼など、毎食のように金目鯛をたらふくいただいて、一生分とまではいかなくても、五年分くらいは食べられた気がしている。他にもおいしいものがたくさんあって、調子に乗って食べまくったので、たぶん、2キロくらいは太った(汗)。さすがにやばい。明日からちょっと絞らねば……。

ともあれ、港町散策と温泉と、金目鯛とで、いいリフレッシュになった小旅行だった。

宇治白玉金時


台風10号が西日本の方に接近中ということで、東京も、日が射したと思ったら急にどしゃぶりという不安定な天気。都心とかに出かけるには微妙だなあと思ったので、スーパーでの買い物がてら、西荻界隈を少し散歩してみる。

乙女ロードをぶらぶら歩いて、前から気になっていた「甘いっ子」という甘味処に入ってみる。かき氷で有名なお店らしく、僕も宇治白玉金時を注文。抹茶の味がしっかり濃くて、氷はふわふわ、小豆はほっくり甘く、白玉は柔らかくてちゅるんとしている。ひさしぶりに超王道の、かき氷らしいかき氷を堪能させてもらった。

こういうのが、日本の夏、なんだろうなあ。ごちそうさまでした。

リフレッシュ

今年から請け負うことになって、5月中はその執筆作業にほぼかかりきりだった仕事が、どうにか一区切りついた。まあ、初校が出たらまた別の種類の作業が発生するのだが、とりあえず少しだけ肩の荷が下りた。

午後、渋谷で打ち合わせ。新しい本について。いい本を作りたい、とあらためて思う。それが実現できるかどうかは、これから僕が自分自身をどれだけ追い込めるかにかかっているのだけれど。

打ち合わせの後、ひさしぶりに公園通りのマメヒコに行き、アイスコーヒーとフルーツサンドをいただきながら、しばし読書。読みかけの分厚いハードカバー、ようやく半分くらいまで読めた。その後は、キャットストリートをぷらぷら歩いて原宿まで行き、電車で西荻まで戻る。晩ごはんはフレンチカレースプーンで、Wトロ肉増しフレンチカレー。

何というか、いろいろ解き放たれて、リフレッシュできた気がする。ふう。