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旅と倹約

時と場合にもよるけれど、旅は、ただお金をかければいいってものではないし、ひたすら倹約すればいいってものでもないと思う。

アラスカ取材を実行するにあたって、一番の懸案は、クマでも寒さでもなく、予算だった。夏のアラスカは、宿代も物価もやたらめったら高い。今回、デナリ国立公園ではワンダーレイクのほかに公園入口でもキャンプをしてできるだけホテル泊を減らし、アンカレッジではダウンタウンで最安クラスの宿に泊まった。まあ、そのあたりのことは僕はまったく苦にならなかった。テントで寝袋にくるまって寝るのは好きだし、アメリカの安宿はインドならかなりの上宿だから。

その一方で、アンカレッジやデナリ国立公園入口のレストランなどで食事をする時は、さほど節約しようとは考えなかった。サーモンやハリバット、キングクラブといったアラスカのシーフードはハズレが少ないし、地元のマイクロブリューワリーが造るビールも濃厚でうまい。だから夕食の時は、シーフードのワンプレートにビールを一杯つけるようにしていたし、朝食や昼食の時もあまり値段を気にせずに注文していた。

旅の予算の上限はもちろん頭に入れておかなきゃならないけど、倹約に固執してあれこれ我慢するあまり、気持がしぼんでしまうような旅の仕方は、個人的にはちょっともったいないなと思ってしまう(僕自身、学生時代の最初の一人旅がそんな感じだった。本当に予算が少なかったからだけど)。無駄遣いに気をつけつつ、お金を少し余分にかけることでよりよい経験ができて気持がぐっと高まる機会があるなら、そこはお金をかけるべきだ。

アンカレッジのバーのデッキで、夕暮れの空に伸びる飛行機雲を眺めながら飲んだスタウトの味、忘れられない。

宇治金時

今日もじっとり蒸し暑い。午後、仕事関係で不要になった本を買い取ってもらいに水中書店さんに行き、駅前で小さな用事をいくつか。あまりにも暑いので、家に戻る前に「かき氷でも食べてくか」と思い立つ。

三鷹でかき氷といえば、やはり「たかね」しかない。店内は平日なのにかなりの混みようだったが、首尾よく坐れたので、宇治金時をオーダー。ほどなく運ばれてきたそれは、雪のようにふわふわとなめらかな氷に、濃い抹茶とつぶ餡が乗っかっている。急いで食べると頭がキーンと痛くなりそうだし、のろのろ食べてるとせっかくの氷が溶けないか心配だし、いろいろ気をもみながら(笑)、おいしくいただいた。

ここ数年、今頃の時期はほぼずっとラダックに行っていたので、今年は日本の夏の蒸し暑さが身体にこたえる。でも、暑ければ暑いなりに、今日みたいにかき氷を愉しむことだってできる。夏が終わる前に夏らしいことを一つできて、何だかよかった。

台風とジャンクフード

台風11号の余波で、東京は朝から荒れ模様の天気。強くて生ぬるい風が、時々、シャワーのような激しい水しぶきの雨を連れてくる。

こういう非日常な感じの日には、コンビニで売ってるようなジャンクフードをもそもそ食べるのが気分に合う。今日のおひるは、遅まきながらのトムヤンクンカップヌードル(正直、世間で言われてるほどうまいとは思わなかった)。晩酌のつまみには、コンビニでパック入りの焼き鳥を買ってきた。うまいかどうかでなく、あくまでも気分なんだよな、こういうのは。

夕方、雲が飛び去るように流れていく西の空は、すぐ近くで火事でも起こってるかのような異様な色に染まっていた。どうやら明日は、また夏空と暑い日射しが戻ってきそうだ。

あなごの日

土用の丑の日が近づくこの季節になると、何とはなしに、うなぎとか食べたいなあ、という気分になる。

しかし、うなぎは去年あたりからやたら値上がりしているし、そんな中でうっかり中途半端なのを食べてがっかりしたくもない。だったら、うなぎじゃなくて、あなごを食べに行こうか、と思い立つ。

今日行ったのは、知り合いづてでたまたま知った、日本橋にある老舗のあなご専門店。考えることはみな同じのようで、前の日に予約しておかなければ入れないほどの盛況ぶり。カウンターで冷酒をすすりつつ、あなごの白焼きと、う巻きならぬ、あ巻き(あなご入りの卵焼き)をいただく。メインはもちろん、あなごの箱めし。焼いたのと煮たのを両方のせる「あいのせ」で。見た目からはうなぎのようにこってり濃厚に見えるけど、口にしてみると、思いのほかあっさりと、でもあなごの味はしっかりしていて、とても食べやすい。最後はあなごのだし汁でお茶漬けにして、さらさらと。

すっかり満足して家に戻り、このブログを書く前に何の気なしにネットで検索してみると、昨日七月五日は「あなごの日」なのだという。あまりにもタイムリーで、ちょっとびっくり(笑)。来年もまた、あなごを食べに行こうかな。

anagohakomeshi

夏至の冷酒

今までにも何度か書いたことがあるけれど、外がまだ明るいうちから飲む酒というのは、実にうまい。

今日は、夕方と呼ぶにはまだ早い時間から、吉祥寺にあるそば屋に入った。きりっと冷えた、手取川のあらばしりをちびちび飲みながら、シメサバと出汁巻き卵をつつく。ダメな大人のうしろめたさが、酒のうまさを五割増しにしてくれる。その後に食べた山芋のせいろもたまらない。店を出る時も、外はまだ明るかった。そうか、今日は夏至か。

夜は夜で、今、カニカマを肴にビールを飲んでいる。ほんとにダメな大人だ。