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積み重ねたもの

梅雨入りしたとは思えないほど、爽やかな午後。吉祥寺界隈をぶらぶら散歩し、夜、リトスタへ。

リトスタは、昨日の六月一日で九周年。昨夜はさぞや混雑しただろうと思っていたら、常連さんたちは同じような予測をして牽制し合ったらしく(笑)、むしろ今日の方が混んでいて、開店直後からほぼ満席。合鴨スモークとフルーツのサラダ、手羽元とジャガイモのスープごはんなど、たらふくいただく。

自分でレストランやカフェをやってみたいと考えてる人は、世の中にたくさんいると思う。たぶん、お店をオープンするだけなら、本気でやろうと決意すればかなりの数の人が実現できる。でも、それを続けていくことは本当に難しい。リトスタがオープンしてから九年間、同じ商店街で、どれだけ多くの店が開店と閉店をくりかえしたことか。

リトスタが歩んできたこの九年間も、大変な苦労の連続だったと聞いている。日々のやらなければならない仕事と、こうすればもっとよくなるんじゃないかという工夫の、地道で丹念な積み重ね。僕らが何気なくすする一杯のコーヒーにも、淹れ方からお客さんへの出し方まで、彼らが積み重ねたものがたくさん籠っている。

九周年、おめでとう。次は十周年記念ライブで(笑)。

「サニー 永遠の仲間たち」

「サニー 永遠の仲間たち」

先日観た「きっと、うまくいく」についてのWeb上での反応を見ていたら、かなり多くの人が、この「サニー 永遠の仲間たち」と比べて感想を書いていた。僕もこの映画の予告編を目にした記憶はあったのだが、本編は見逃してしまっていたので、Apple TVで借りて観てみることにした。

「セブン・シスターズ」とは、韓国ではトラブルメーカーの高校生を意味する隠語なのだという。この映画の七人の主人公たちは、文字通りのセブン・シスターズ。ラジオ番組から「サニー」というグループ名をつけてもらった七人は、向かうところ敵なしのハチャメチャに楽しい日々を過ごしていた。ある事件が起こるまでは‥‥。それから25年。余命二カ月の末期ガンに侵された元リーダーのチュナは、病院で偶然再会した仲間のナミに言う。「死ぬ前にもう一度、サニーのみんなに会いたい」と。

1980年代と現代のソウルを行き来して展開されていく物語。記憶の中の日々は明るい色彩と輝きに満ちていて、誰もが希望にあふれた人生と、変わることのない友情を信じて疑わなかった。散り散りになっていた今の彼女たちは、それぞれの事情やしがらみのせいで、必ずしも思い描いていた人生を歩めてはいない。それでも、チュナの呼びかけをきっかけに、彼女たちは気づくのだ。もう一度、なろうと思えばなれるのかもしれない。自分自身の人生の主役に。

チュナの余命という重い軸はあるものの、80年代のポップ・チューンに彩られたこの作品のトーンはとても軽やかで、コミカルな場面もたくさんある。だからこそ、観ていて余計にせつなくなる。もう、取り戻すことのできない時間。それでも、彼女たちは軽やかにステップを踏む。何度も、何度でも。

人前で話をすること

昨日は午前中に、写真家の関さんと渋谷で打ち合わせ。来月二人でやることになったトークイベントについて。関さんはこの一週間、テレビ取材の仕事でブータンに行っていたそうで、その日の朝に羽田に戻ってきたばかり。疲れていただろうに、体力あるなあ。さすが。

関さんは、これまでに学校などで講演をした経験がたくさんあるし、僕もこれまで何度かトークイベントをしてきたので、お互い右も左もわからないという感じではなく、たぶん何とかなるだろうという心づもり。とはいえ、大勢の人の前であらたまって話をするというのは、やっぱり緊張する。できれば避けて通りたい(苦笑)。でも、そうして人前で話をすることで、聞きに来てくれた人の心の中で何かがパチッとつながったりするきっかけになるかもしれない。

僕たちが自分の中で大切にしていることを、本や、写真や、話をすることで、誰かに伝える。それにはきっと、ささやかながらも、何かしらの意味はあるはずだと思っている。

自分が読みたいことを書く

昼、国立で取材。自分自身で人選した取材を日本国内でするのは、ひさしぶりな気がする。

今日の取材で聞いた話の中で、印象に残ったこと。ターゲットや何やらを気にして、「こういうことを書けば好きになってもらえるだろう」と思って書いても、たいてい、思ったような結果は出せない。それよりも、自分が好きなこと、自分が読みたいと思えることを素直に書けば、それに共感してくれる人は必ずどこかいる。すべての人に好感を持ってもらうのは無理なんだから、限られた数の共感を持ってくれる人をまず大切にすべき、と。

ほんと、そうだな。僕のラダック絡みのプロジェクトとか、ある意味、その最たるものだ。あまりにマニアックすぎて、結果が伴ってるかどうかも未だによくわからないけど(苦笑)。