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そして仕事は終わらない

昨日は朝から、大学案件の取材で、埼玉方面へ。スクールバスへの乗り換えも含め、片道ほぼ2時間の道程。現場の周囲には何もないので、おひるは学食で食べ、取材の合間には缶コーヒーをすすりつつ、どうにか3件、滞りなく遂行。

再び2時間かけて家まで戻ってからは、留守中に届きまくっていたメールにかたっぱしから返信し、さらに関係者各位へのメールもしたためまくり、何だかんだで20本くらいメールを書いた。それから、まったく別の案件の校正作業を延々と。さすがに疲れて、布団に潜り込んでからは前後不覚に眠った。

今朝は相方と同じ時間に起きて、校正作業の続きに取り組んだのだけれど、次第に賽の河原に石を積んでるような不毛な雲行きになってきて、昨日の疲れも引きずっていたからか、なかなか調子が上がらない。夕方にはすっかり疲れ果てて、ソファで1時間くらい寝落ちしてしまった。

なんだかんだで、気がつけば年の瀬という感じである。そして仕事は終わらない。

マルチな黒子

昨日のエントリーで、ライターという職業にもいろんなタイプがあると書いた。自分自身のキャラクターを前面に出す人。自分の気配を消して黒子に徹する人。特定の分野のスペシャリスト。いろんなジャンルをこなせるマルチな人。

僕自身のキャリアをふりかえってみると、まず、雑誌の編集部に在籍していた頃に編集者に必要なスキルのイロハを学んだ。フリーランスになってからは、IT系、広告・デザイン系などの雑誌で主にインタビュー記事を担当。2007年にラダックで長期取材をして最初の単著「ラダックの風息」を出した頃から、周囲から依頼される仕事がしぜんと旅行関係にシフト。ただ、今でも旅モノだけで生計を立てているわけではなく、国内では教育関係のインタビューの仕事などもたくさんやらせてもらっている。

今になってあらためて思うのは、フリーランスになる前の編集者時代に基本的なスキルを習得できていたのがよかったし、典型的な黒子の仕事である編集業務の面白さを体感できていたこともプラスに働いた。加えて、フリーランスになってからジャンルに囚われることなくいろんな種類のインタビューを経験したことで、「マルチな黒子」とでも呼ぶべきスタンスで動けるライターになれたのも大きかったと思う。

今でこそ、ラダック関連の本などからの印象で、旅行関係に特化した作家的なタイプのライターというイメージを持たれている面があることは否定できない。ただ、逆に言えばそれも「マルチな黒子」のライターとしての仕事を通じて積み上げてきた、ものすごくベーシックなスキルがある程度あったからこそ、ある種の余裕を持って出せた結果だと思う。それに、依然として「マルチな黒子」としての仕事も少なくない割合で続けているわけだし。

最近、Webメディアなどでキャリアをスタートさせているライターの方々の中には、最初から自分の個性やキャラクターを強烈に前面に押し出したり、あるジャンルやスタイルに極端に特化したりした形で文章を書いている人も少なくない。そうした個々の仕事自体は別に問題ないが、編集者としての土台のスキルがない人や、「マルチな黒子」として立ち回れる器用さのない人だと、キャリアを重ねるにつれて、だんだん苦しくなっていくだろう。

ライターとしてのキャリアのスタートは、まずは編集の仕事のイロハを覚えてから、「マルチな黒子」として動ける経験を積み、状況に応じて得意分野のスペシャリストを目指すのが、結果的には一番良い結果につながると、僕は思う。

To do, or not to do

タイから帰国して、あっという間に二週間経った。あまりにもあっという間だったので、正直茫然としている。

帰国して以来、毎日やたらめったら忙しい。タイ関係の編集作業、ラダック関係の編集作業、とあるWebサイトのリニューアル作業のディレクション、来年からの海外取材の打ち合わせ。平日は四六時中、ひっきりなしにいろんなところからメールやらメッセやら電話やらが着弾していて、あれこれ振り回されつつ、合間に必死こいてデスクワークを続けているうちに、一日が終わってしまう。

その時々でやらなければいけないことが多すぎて、ごっちゃになりそうだったので、とりあえず当面の仕事関係のTo Doリストを作ってみたら、異様に長大なリストになってしまって、上から下まで見渡すだけで大変な量に(苦笑)。何をやるべきか、やらざるべきか。いや、仕事に関わることだから、最終的には全部やらなければならないんだけど。

とりあえず今日のような週末は、メールの数はぐっと減るので、気合を入れて書かねばならないエッセイの原稿に取り組んでいる。集中、集中……。

To Doリストを少しずつでも短くするべく、引き続き地味に、頑張ります。

インド率増大

昨日の夜は、吉祥寺のレンガ館モールの地下にある中華料理屋でごはんを食べながらの打ち合わせ。来年から参画する新しい仕事について。

新しい仕事というのは、撮影と執筆を伴う取材で、インドにまつわる旅の本づくりをお手伝いするというもの。ラダックやスピティをはじめ、その他のインドの地域もいくつか担当することになった。それも一回限りではなく、たぶんほぼ毎年。つまり、一年のうちにインドに滞在する時間が、今まで以上に増えるということだ。

たとえば、来年は多くても合計で2カ月くらいのインド滞在になると考えていたのが、昨日の打ち合わせを踏まえると、少なくとも合計3カ月はいなければならなくなりそう。年の4分の1をインドに持ってかれるわけである(苦笑)。

まあ、新しい仕事自体はとても面白そうだし、一緒に組むスタッフも凄腕の方々ばかりなので、楽しみではあるのだが。残りの人生における予想以上のインド率の増大に、やや戦々恐々としている。

本は人を繋ぐ

昨日は、昼の間に書店回りをし、午後は板橋方面で取材。その後、夕方から渋谷にある旅行会社さんの事務所で、打ち合わせという名の飲み会。餃子の達人と厚焼き卵の達人がいらしたおかげで、うまい料理とうまい酒を、たらふくごちそうになってしまった。参加してくださったみなさんもとても楽しそうで、何よりだった。

しかし昨日の集まりは、何だか、とても不思議な気分にさせられた。もし、僕が過去に作ってきた何冊かの本の仕事がなければ、あの場所にいた人たちは、互いに出会う接点もまったくないまま、今に至っていたかもしれないのだ。

自分が引き合わせたなどと傲慢なことを言うつもりは毛頭ない。ただ、その時その時の自分のベストを尽くして良い本を作ろう、ともがき続け、ささやかながら世に送り出してきた本たちが、結果的にある種のかすがいとなって、今もいろんな人たちを繋いでくれているのかもしれない、とは思う。

本は、人と人とを繋いでくれる。