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砂糖水

まさかの雪。この冬は、本当によく降るなあ。昨日のうちに食糧の買い出しをしておいてよかった。一日中、外に一歩も出ることなく、黙々と原稿を書く。

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中国版ジャスミン革命が呼びかけられるようになって、昨日で三週目。ネットでのデモの呼びかけに翻弄される中国当局の右往左往っぷりは、いささか滑稽な様相を呈してきた。何しろ、ネットでどこかが集合場所に指定されるたびに、そこに百人以上の警官を派遣し、放水車で誰彼構わず追い払い、外国メディアをかたっぱしからぶん殴って捕まえているのだから。この状態が数カ月、半年と続けば、必ずどこかで無理が生じる。毎週日曜日の恒例行事は、おそらく今後も続いていくだろう。

考えてみれば、中国の人々も可哀想だなと思う。今の彼らの状態は、手足を縛られ、両目と両耳を塞がれた状態で、経済成長という砂糖水を、ひとさじ、ひとさじ、口の中に流し込まれているようなものだ。僕だったら、そんな生殺しのような生活には耐えられない。自分の言いたいことが言えて、知りたい情報は何でも手に入って、望む生き方を好きに選べる僕たちは、本当に恵まれていると思う。

チベットのこれから

今日は、チベット暦のロサル(正月)。来週になれば、チベット民族蜂起記念日がやってくる。

ラサをはじめとするチベット各地で大規模なデモが発生し、それが中国当局によって容赦なく粛正されたのは、ほんの三年前のことだ。当時は日本でも六本木で二千人規模のデモが行われたが、あの時の怒りと悲しみを今も覚えている日本人は、はたしてどれくらい残っているだろうか。ほとんどの人にとっては、遠い異国の出来事でしかないのかもしれないけれど、チベットの人々は、五十年以上もの間、その何百倍もの怒りと悲しみを抱えながら生きている。

現在開催されている全人代で、温家宝首相は、少数民族への監視と宗教の管理を徹底的に強化することを表明した。チベット人やウイグル人の自由はますます狭まり、信じるものさえ奪われていく。でも、はたしてそんなやり方が、この先もずっとまかりとおっていくだろうか? 僕はそれは無理だと思うし、許してはならないとも思っている。

今、中国では、毎週日曜日のジャスミン革命についてのネットでの呼びかけが、当局を慌てさせている。たった一行のツイートが、十億の民を抱える国を揺り動かしている。もしかすると、ひょっとすると、中国人は本当に、自ら変革を成し遂げてしまう可能性がある。そしてその時は、案外すぐ近くに来ているのかもしれない。

法の下で

終日、部屋で仕事。先週取材した案件の原稿を書く。明後日はまた取材だから、今のうちに進められるだけ進めておかなければ。

テレビでは、尖閣諸島沖の漁船衝突事件の映像を「自分が流出させた」と名乗り出た神戸の海上保安官の話題でもちきり。世間では「彼を逮捕すべきではない」という人も多いようだが、僕は必ずしもそうは思わない。中国と違って、日本は法治国家だ。動機は何であれ、彼は国家公務員法の守秘義務違反をした疑いがある(件の映像が国家機密にあたるかどうかは判断が分かれると思うけど)。彼のしたことが正しかったのか、それとも間違っていたのかは、法廷できちんと裁かれるべきだ。自ら名乗り出た以上、彼も自分が有罪になるかもしれないことは覚悟しているだろう。

そしてその法廷では、尖閣諸島沖でどんな事態が起こったのか、それを民主党政権がどんな手段でうやむやにしようとしたのか、そういったことも全部詳らかにされるべきだ。すべてを法の下で明らかにしてこそ、なぜ中国船の船長が超法規的措置で釈放される一方で、この海上保安官が罪に問われなければならないのか、そのいびつさが浮かび上がってくると思う。

まあ、仙谷官房長官は「彼は国家機密を流出させた!」とか息巻いているらしいけど、流出と同じ日にテレビ各局で放映されまくっちゃうような国家機密って、どれほどのもんなの? と思わずにいられない(笑)。

本当の尖閣

昨日の夕方は、葛飾で取材の仕事だった。今日も取材の予定が入っていたのだが、先方の都合で再来週に順延に。ここのところ、トークイベントを含めてきついスケジュールだったから、ようやく一息つけた感じ。

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昨夜から巷を賑わせている、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影した映像が流出した事件。僕も見たが、どこからどう見ても、中国漁船が意図的に船首をぶつけている。巡視船の方が船体が大きいとはいえ、当たりどころが悪ければ沈没してしまいかねない、悪質で危険な行為だ。

これだけわかりやすい証拠があるのだから、起訴すれば確実に有罪に持ち込むことができたはず。だが、腰抜けの民主党政権のせいで、何もなかったことにされてしまった。命をかけて働いている現場関係者の落胆ぶりは、察するに余りある。機密情報の管理体制がどうとかいう以前に、個人的には、内部告発者の勇気に拍手を送りたい。

僕たちには、こうしたことを知る、当たり前の権利がある。

ノーベル平和賞

2010年のノーベル平和賞の受賞者は、中国人の民主活動家、劉暁波さんに決定したそうですね。中国のみなさん、おめでとうございます。みなさんにとって長年の悲願だった、中国国内在住の中国人で初のノーベル賞受賞。実に喜ばしいことです。

聞けば、劉暁波さんは、共産党の一党独裁体制の廃止や、民主的な選挙の実施、言論や宗教、集会の自由などを求めた「08憲章」の起草者だそうですね。現在は‥‥刑務所で服役してらっしゃるんですか? 国家政権転覆扇動罪? それはまたどうして? まあ、ノーベル平和賞を受賞されるほどの方ですから、中国の刑務所でもさぞかし厚遇されているのでしょうね。

国内在住の中国人初のノーベル賞受賞というビッグニュースですから、大々的に報道されているのかと思いきや、中国各紙ではほとんど報じられていないようですね。なんと奥ゆかしい国民性でしょう。NHKやBBC、CNNなどといった海外メディアの放送を遮断して画面を真っ黒にしたり、インターネット上の関連情報を削除したり、携帯電話のショートメールを制限したり、その徹底した奥ゆかしさっぷりには、いつもながらつくづく感服します。

中国外務省からは「劉暁波の受賞はノーベル平和賞を侮辱するものだ。中国とノルウェーの関係に損害をもたらすだろう」というコメントが出されているようですが、これは‥‥日本でいうところのツンデレですよね? いくらうれしいからって、国家レベルでヤクザまがいの脅しをかけるふりをするなんて、もう、照れ屋さんなんだから。

もしかすると来年は、中国人ではないけれど、たとえば世界ウイグル会議議長のラビア・カーディルさんがノーベル平和賞を受賞したりするかもしれませんね。その時は、もっと素直に受賞をお祝いしてあげたらいいんじゃないかと思いますよ、中国のみなさん。

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ダライ・ラマ法王の11月の来日スケジュールが公式発表。大阪、奈良、四国、広島での法話や講演を予定されているとのこと。今回は残念ながら、東京での講演の予定はなし。