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編集者がつける道筋

一口に編集者といっても、いろんなタイプの人がいる。たとえば書籍の編集者なら、著者の企画や原稿をそのまま活かす形で仕上げる人もいれば、著者と侃々諤々やりあって書き直しを重ねながら仕上げていく人もいる。

僕の場合、自分が著者の立場の時に、書き上げた原稿の内容自体に編集者からダメ出しされたことはほとんどない。何でかなと思い返してみると、それはたぶん、「ダメ出しされての書き直し」という無駄な手戻りが起きないように、編集者が各段階に至るまでの道筋をわかりやすく示してくれていたからだと思う。

「どういう本にするか」という完成形のイメージを決め、全体の構成案を丁寧に詰めていって、試し書きをして文体やトーンを調整しながら、少しずつ書き上げていく。その各段階で編集者に細かく確認をしてもらって、イメージを共有するのが、無駄な手戻りを防ぐためには大切だと思う。もちろん、草稿が書き上がってからも、第二稿、第三稿と書き直しをしていく場合もあるが、それは「ダメ出しされての書き直し」ではなく、明らかに目的があって、さらに精度を上げていくための書き直しだ(込み入った表現をわかりやすくする、など)。無駄な手戻りをくりかえしていては、そういう精度の向上を検討する余裕もなくしてしまう。

著者と侃々諤々やりあうタイプの編集者を否定するつもりはないが、個人的には、そういう風になってしまうのは、著者と編集者の間で完成形のイメージをうまく共有できていないからではないか、と思う。著者が完成形のイメージに近づくための作業をスムーズに進められる道筋をつけてあげるのが、僕が理想とする編集者の役割。自分自身が編集者の立場の場合も、そうありたいと思う。‥‥まあ、それでもいろんな事情が絡んでくるので、なかなか一筋縄ではいかないのだけれど(苦笑)。

独りよがりの境界線

読み手のことを何も考えずに、独りよがりに書きたいことを書き連ねた文章というのは、往々にして鼻持ちならないものになる、といったことは世間でよく言われる。読み手の目線をイメージして、みんなが読みたいと思うことを書きましょう、みたいに。

まあ、それが明らかに間違ってるとは思わないのだが、例外は多々あるというか。というのも、世の中で名作と賞賛されている本は、独りよがりに書かれたものがとてつもない形で昇華された結果だったりするから。

文章を書きたい、本を作りたいという最初の動機は、往々にして、マグマのようにドロドロと熱い、独りよがりがこじれにこじれた思いだったりする。要は、そのこじれにこじれた独りよがりを、全員とは言わないまでも、ある程度の人に受け入れてもらえるだけのクオリティの作品にまで高められるかどうか、なのだろう。

独りよがりが、単なる独りよがりでなくなるかどうかの境界線。うまく言えないけど、自分もそれを越える術を身につける努力はしなければならないなと思う。

歌うなら、自分の歌を

今日と明日は、自宅で執筆作業に充てる。明日の夕方に某大学で行われる公開講座の取材依頼が来たのだが、時間的にもキャパ的にも無理なので、やむなく断る。まあ仕方ない。

臨戦態勢を整えて、夜半過ぎまで、一心不乱に書き続ける。どうにか形にはなった‥‥かな。先週末に取材したインタビューの原稿。元々の話自体が面白かったので、指定文字数に合わせて、テープ起こしした分から削っていくのがもったいないくらいだった。

この仕事に携わるようになってから、インタビューの原稿は、文字通り数えきれないほど書いてきた。二十代初めの頃は、雑誌に載るような読み応えのあるロング・インタビューを書けるライターになるのが夢でもあった。やがて幸運なことに、実際にそういうインタビュー記事をいろんな雑誌で毎月のように書かせてもらえる立場になったのだが、僕はいつも、心のどこかで、小さな違和感を感じていたように思う。

燦然と輝きを放つ人にインタビューして、その輝きを余すことなく読者に伝える。でもそれは、人が放つ輝きのおすそわけに預かっているということでもあった。インタビューという仕事自体には価値があると思う。けど、それだけでいいのか? 他人のヒット曲を歌っていればいいのか? 歌うなら、自分の歌を歌うべきなんじゃないのか?

だから僕は、六年前、すべてを放擲して、ラダックに向かったのかもしれない。

これからも僕は、いろんな種類の取材を請け負うだろうし、インタビュー記事もいくつか書いていくだろう。でも、一番追求していくべき仕事は「自分の歌」なのだと思うし、それが一番周囲から求められているものだとも思っている。

フリーライターを目指す人への8つのアドバイス

今の時代に、文章を書くことを生業にして生きていきたいという人がどのくらいいるのかわからないけれど、それでもフリーライターを目指すという人に向けて、いくつかアドバイスめいたことを書いてみたいと思う。ちなみに、小説家や作家を目指す人にはあまり参考にならないかもしれないので、あしからず。

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