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スタートライン

午後、出版社の編集者さんからメール。今日開催された新刊会議で、僕が企画・編集する、新しい本の出版が承認されたとのこと。

この企画、一年前に打診して以来、長い時間を経て、去年12月にようやく実務者レベルの会議にかけられたものの、コンセプトがうまく伝わらずに再提出というがけっぷちの状態に。年末の会議で二度目の提出をしてどうにか踏みとどまり、今日の新刊会議で正式なゴーサインが出たという次第。

知らせを聞いた時、うれしかったというより、ただただ、ほっとした。この一年、ずっと胸の中につかえていた重苦しいものが、ようやく半分だけすとんと抜け落ちたというか。

僕の仕事は、本を出すこと自体が目標なのではない。書店でその本を手に取って買ってくれた人が「買ってよかった」と少しでも思ってくれるように、細かいところまで徹底的に心を砕いて、いいと思える本を作り、それを届ける。その最後の最後に行き着くところまでをイメージして、それを実現しなければ意味がないと思っている。

今はまだ、スタートラインに立っただけだ。

ポール・オースター「ブルックリン・フォリーズ」

「ブルックリン・フォリーズ」この「ブルックリン・フォリーズ」を買ったのは、確か一年以上も前。家の本棚の目立つ場所にずっと刺さっていたのだが、なぜか手に取らないままでいた。この間の年末年始に帰省する時、新幹線の中でようやく読みはじめたのだが‥‥もっと早く読んでおけばよかった。

ポール・オースターの小説は、徹底的に選び抜いて研ぎ澄ました言葉で、読者をぐいぐいと物語の渦に引きずり込んでいく作品が多かったように思う。だから、読む時もそれなりの集中力を使って対峙しなければならないような気がしていた。でも、この「ブルックリン・フォリーズ」は軽妙な語り口でさらりと読みやすい。主人公のネイサンがチラシの裏に日々書き殴っている「愚行の書」のように、「ひとつ話を書くとそいつがまた別の話につながって、それがまた別の話に」という感じで、ブルックリンに暮らす人々のそれぞれの物語が綴られていく。

物語に登場する人物の多くは、愚かな過ちや消えぬ哀しみを背負っている。でも、そんな弱さを抱えているからこそ、彼らは互いを支え合って生きていけるのではないかとも思う。オースター自身も暮らすブルックリンの街には、そんな傷ついた人々をゆるりと受け止めて包み込む、懐の広さがある。オースターが日本で知られるようになったのは、彼が脚本を手がけたブルックリンを舞台にした映画「スモーク」によるところが大きいと思うが、あの映画が好きな人なら「ブルックリン・フォリーズ」もきっと気に入るに違いない。

温かなまなざしで語られるこの愛すべき物語にも、慄然とするような現実の出来事が、暗い影を落とす。それもまた、忘れてはならないことだと思う。

越えていくハードル

昨日と今日は、ほぼ完全に部屋に閉じこもって、先週の取材の原稿執筆に集中。今年最初のハードルは、テープ起こしに手間取ったのでどうなることやらと思ったが、まずまず順調にクリアできそう。

今年はこれからも、結構な頻度でいろんなハードルが待ち構えている。その大半は自分自身で設置してしまったものだが(苦笑)、必ず越えなければならないハードルもあれば、越えられるかどうか、自分でも半信半疑の高いハードルもある。越えてみたはいいけれど、誰にも振り向いてもらえないハードルもあるかもしれない(苦笑)。

まあでも、やるしかないのだ。自分がどこに辿り着くのか自分でもわからないけど、目の前に現れるハードルを一つひとつ越えていかなければ、どこかに辿り着くことすらできないのだから。

来年はいろいろと

今日は一日、家でのんびり過ごす。部屋中に掃除機をかけて、気分的にもすっきり。帰省のための荷造りは、あっという間に終わった。

来年の二月上旬頃、とあるグループ写真展への出展のお誘いをいただいたので、その写真選びと展示のシミュレートなどをぼちぼちとやってみる。枚数が限られているし、他の出展者の方との兼ね合いもあるので、地域や時期を絞り込んで、キュッとコンパクトにまとめようと思う。地味だけどじわじわくる、みたいな感じで(笑)。

来年はそのグループ写真展だけでなく、自分の写真を人に見てもらうための場を、何度か設けられればと思っている。それに合わせて、本も形に‥‥できるといいな。いろいろとがんばらねば。こだわりでも意地でも、とことん貫き通せば何かにつながるはず。

明日12月30日から1月2日まで、実家に帰省するため、ブログの更新をお休みします。よいお年を。

がけっぷちからの脱出

夕方、某社の編集者さんよりメール。去年から預かってもらっている新しい書籍の企画が、実務者レベルの会議で承認を得られたとのこと。

この企画、実は今月初旬に一度差し戻しになったのを再提出したもので、今回もダメならその出版社との交渉はあきらめざるを得ない、いわばがけっぷちの状況だった。だから、本っっ当にほっとした。ここしばらく、ずっとこの企画のことが心にひっかかっていて、重苦しい気分から抜け出せないでいたから。

とはいえ、状況はまだ半歩前進といったところ。来月中旬の新刊会議で最終的な承認を得られなければ、大手を振って制作を始められない。企画を通し切るべく、最後の一押しの作業をがんばらねば。