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まるっとお見通し

先週の後半から取り組んでいた、タイ案件のグラビアページの作業がほぼ完了。少し間を空けて推敲をかけて、写真も一通りチェックすれば、今週中には納品できるだろう。

夕方、まほろば珈琲店までコーヒー豆を買いに外に出て、帰りに啓文堂書店で、ジュンパ・ラヒリの「低地」を購入。前から気になっていた本だったので、今の仕事が一段落したら読もうと思ったのだ。

で、家に帰りながら何の気なしにiPhoneでメールをチェックしたら、大学案件の取材依頼が。まるで、すべてまるっとお見通しだったみたいだな‥‥大阪の担当さん、さすがだ(苦笑)。

思い出して、笑って

午後、編集さんと待ち合わせて、代官山蔦屋書店へ。九月に森本さんが亡くなった後、タイ取材のためにずっとお店に行けないでいたのだが、ようやく今日、書店員の方に時間を取っていただいて、おくやみのご挨拶に。

二階のラウンジで一時間ほど、来月上旬に予定されているお別れの会の話や、森本さんや本やお店のよもやま話をしたのだけれど、不思議としめっぽい感じにはならなくて、あれやこれやを思い出しては結構笑っていたような気がする。きっとそれは、森本さんのお人柄もあるのだろう。

僕も、この世から立ち去った後、誰かに笑って思い出してもらえるような人になれたら、と思う。まあ、どっちかというと「あいつ、つくづく無茶ばっかやってたよね」と、あきれ笑いで思い出される方だと思うけど。

「地球の歩き方 バングラデシュ 2015〜2016」

arukikata_bangla1510月4日(土)に発売された「地球の歩き方 バングラデシュ 2015〜2016」の巻頭グラビアで、ほんの4ページほどですが写真を提供しています。ダッカ近郊を走る列車の紹介記事と、チッタゴン丘陵地帯にあるバンドルボンという町の紹介記事の部分です。バングラデシュに興味があるという方は、ご覧になってみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

旅立った人へ

代官山蔦屋書店の森本剛史さんが、昨日の早朝に亡くなられたという報せが届いた。

代官山蔦屋書店で旅行コンシェルジュを務められていた森本さんは、100カ国以上を旅してきたトラベルライターでもあり、文字通り、旅と本に関する本物のプロフェッショナルだった。僕が森本さんと初めてお会いしたのは、二年前の初夏。知人の編集者さんの紹介で、発売したばかりの「ラダック ザンスカール トラベルガイド」の件でお店にご挨拶に伺ったのだが、とても親身に話を聞いてくださって、店内でのラダックのトークイベント開催を提案していただいたりした。その後もお店でお会いするたびに、最近の売れ行きや面白そうな作家さんのことなど、気さくに話をしてくださっていた。

昨年の秋、森本さんは入院して大きな手術を受けられたのだが、今年に入ってお店にも復帰されて、春先に「撮り・旅!」に載せる旅と写真のおすすめ本の紹介記事の執筆をお願いした時も、快く引き受けてくださっていた。大入り満員になった「撮り・旅!」の刊行記念トークイベントをやろうと提案してくださったのも森本さんだった。でも、その前後から再び入退院をくりかえされるようになって‥‥。たぶん「撮り・旅!」の記事が、活字になった森本さんの最後のお仕事だったのではないかと思う。

森本さんの親しい友人だった方が、Facebookに「友が旅立った」と書かれていたが、「旅立った」という言葉で見送られるのが森本さんほど似合う人は、他にいないと思う。それにしても、急な旅立ちだった。発売の後にちゃんとお会いして「撮り・旅!」完成のお礼を伝えられなかったことが、本当に悔やんでも悔やみきれない。

「本は旅を連れてくる」。旅行コンシェルジュだった森本さんが、常日頃から同僚の方々に言っていた言葉だという。たぶん森本さんは、旅の力を、本の力を、最後の最後まで信じ続けていたのだ。それが人に、かけがえのない何かをもたらしてくれることを。

僕もまた、旅にまつわる本を作る仕事をしているけれど、さんざん苦労させられる割にさっぱり儲からないし、このままどこまでいってもやせ我慢なだけなのではないかと、暗澹とした気持になることがある。自分の作っている本にはたしてこの世に存在する意味はあるのか、単なる自己満足なだけなのではないか、とさえ思うこともある。

でも。それでも。

僕はこれからも、旅にまつわる本を作り続けると思う。それが誰かに、旅を連れてきてくれることを願って。それが誰かに、何かを変える力を与えてくれることを願って。森本さんに笑われないような本を、一冊々々、作り続ける。

本当に、おつかれさまでした。どうか、よい旅を。

本をつくる旅

昨日は、「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」の打ち上げだった。綱島のポイントウェザーさんを定休日にお借りして、午後の3時から始めて、途中で参加者が入れ替わりつつも、11時くらいまで。旅の話、写真の話、他愛のない話。初対面の人同士も多かっただろうに、そんなことをまったく感じさせない、とてもなごやかな宴だった。

他の方々と別れ、帰りの電車で一人になる。バッグの中には、版元の編集者さんが持ってきてくれた読者の方からの手紙が入っている。この本の企画を思い立ってからの約二年間、悩み、苦しみ、もがき続けた日々に、ようやく、ひと区切りついたような気がした。今の自分のこの気持は、申し訳ないけど、たぶん他の誰にもわからないだろう、と思った。

一冊の本をつくるのも、旅のようなものなのだな。