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愉しかった時間

昨日は午前中に取材、午後は別の取材、夕方は打ち合わせ、夜は飲み会と、朝から深夜までずっと出歩いていた。さすがに疲れたけど、取材は面白かったし、飲み会もいい気分転換になったし、何より、夕方の打ち合わせで新しい本を無事に校了させることができたので、本当にほっとした。

自分で企画した本を作っている間はいろいろ大変だし、片時も気を抜けないけど、でもやっぱり、何者にも代えがたいくらい愉しい時間でもある。校了してしまったら、それも終わり。肩の荷が下りてほっとはするけれど、毎度のことながら、何だか寂しい気分になる。

でも、これから先は、作った本を1冊ずつ売っていくために、いろいろ努力していかなけれならない。本を作ったら終わりではなくて、読者の手元に届けて読んでもらえるように努力するのも、僕の仕事であり、役割でもある。

がんばらねば、だな。

「うまくなる」ということ

文章も、写真も、もっとうまくなりたい。いつもそう思っている。

今の自分に実力が不足しているのは自覚しているけれど、僕にとって文章や写真が「うまくなる」ということは、単に力を高めるというのとは、ちょっと意味合いが違う気がする。どちらかというと、「引き出しの数を増やす」というのに近い。どんな場面に遭遇しても、自分の意図を伝えるのに一番ふさわしい方法をスッと選べる、余裕のようなもの。引き出しの数の多さに頼るのではなく、独りよがりに力でねじ伏せるのでもなく、対象により集中して向き合う余裕を持つためというか。

文章や写真の実力は、周囲の人々からの評価の度合いによって測られるものだと思うけど、周囲からの評価を高めること自体が目的化するのは、たぶんあまりよくない。一時的なチャレンジならまだしも、それが常態化するのはちょっと違う気がする。結局、その文章で、その写真で、何を伝えるのかが一番大事。引き出しの多さも、磨き上げたスキルも、伝えるという目標を達成するための手段でしかない。

だから、もっとうまくなりたい。たぶん、死ぬまでずっとそう思い続けている。

気は抜けない

夕方、赤羽橋へ。来月発売される予定の本の色校のチェックと打ち合わせ。

何だかんだで、ほぼすべての写真の色味を調整し直すことになり、デザイナーさんと相談しながら、120ページ分の写真の一枚々々に修正指示を加えていく。印刷所にとってはまた面倒な作業になると思うが、ここで妥協したら元も子もない。明日の色校の引き渡しにも立ち会って、僕からも要望を印刷所に直接伝えることにした。

最後の最後まで、何一つ、気を抜けない。それが本づくりの大変さであり、醍醐味でもある。

本を作る時間

来月下旬に出す予定の本の制作が、どうにか印刷所に入稿できる段階にまでこぎ着けた。あとは色校の段階で慎重にチェックすれば、ほぼ問題なく完成させることができるだろう。

肩の荷が一つ下りて、かなりほっとした気分になっているけど、正直、ちょっとさみしくもある。

自分自身の本を作る時間は、なんだかんだで、楽しいのだ。スケジュールに追われて気は焦っていらいらするし、目は疲れるし、肩は凝るし、寝不足にもなるし、しんどいことだらけなんだけど、でも楽しい。人それぞれに天職と呼べる仕事があるのなら、僕にとっては本づくりがそうなのだと思う。

しんどくも楽しい時間が過ぎていく。そして一冊の本ができあがり、誰かのもとへと旅立っていく。

編集者が守るべきもの

編集者、特にフリーランスの人が、何よりも守らなければならないのは、他のスタッフの立場なんじゃないかな、と思う。

ずっと以前、ある出版社から本の編集の実作業の仕事を請け負った。著者とのやりとりは出版社側の編集者が仕切っていたのだが、うまくスケジュール管理できていなかったようで、原稿が揃うのが大幅に遅れた。すると出版社側はその遅れを、全部こちらの編集とDTP作業のスケジュールを切り詰めることで埋め合わせようとした。折しも年の瀬で、それに従うと、クリスマスも年末年始もまったく休めないというスケジュールになる。僕はともかく、他のスタッフにそんな理不尽なことを無理強いするわけにはいかない。僕はその指示を拒否して、関係者が多少なりとも休めるように交渉し、それを通した。

プロならクライアントの利益を守るのを最優先すべきなのでは、という意見もあると思う。でもそれは、関係者に「それならひと肌ぬぎましょう」と意気に感じて言ってもらえるようなちゃんとした理由があればのことだ。明らかに理不尽な理由で他のスタッフにスケジュールや作業負担やギャラのしわよせが及びそうな時、彼らを守れる立場にいるのは、間に立っている編集者しかいないし、それでも無理な場合にはスタッフに対して「本当にすみません!」と必死で頭を下げるのも編集者しかいない。

そんなことを考えながらやっているので、僕は今までに少なくとも1社、クライアントを失っているが、そんな取引先とはどのみち長くは続かないし、いい仕事もできないので、まったく、1ミリも気にしていない。その会社自体、なくなっちゃったし。世の中そんなものである。