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「会う」ということ

3月末から展示を続けていた、リトスタでのラダック写真展。約2カ月間の会期も、明日でついに最終日。始める前は長い長いと思っていたが、ふりかえってみると、本当にあっという間だった。

今回の写真展は、自分自身にとって、ひときわ記憶に残る展示になった。「ラダックの風息[新装版]」という思い入れの強い一冊の刊行に合わせての展示だったこともあるが、今回は仕事の合間をぬって可能なかぎり会場に在廊するようにしたことが、とても大きかったと思う。実際、僕が会場にいることをSNSで知った上で訪ねてきてくれた方や、あるいは知らずに偶然訪れて、僕と話をしたことで俄然興味を深めてくれた方も少なくなかった。

誰かに「会う」ということは、その人に対する興味や思い入れの度合いをぐっと深める、またとないきっかけになりうるのだと最近思う。もちろん、会ってみて幻滅したというパターンもあるかもしれないが(苦笑)、写真展の在廊やトークイベントへの出演というのは、そういう出会いの場を作る貴重な機会なのだと実感している。僕にとっても、そうしていろんな人にお会いして話をすることでフィードバックしてもらえる思いというのは、本当にかけがえのない、大切なものだ。

写真展最終日、気持ちを引き締めて、行ってこようと思う。

活動限界

昨日の午後は、リトスタでの写真展の件で、ケーブルテレビ局からの取材を受けた。冷静に考えると、3月末からやってる写真展の情報を、なんで会期残り10日ほどの今になって、とも思うのだが……。まあ仕方ない、断る理由もないということで、粛々と対応し、カメラの前で30分ほど質問に答えた。

で、その後は電車で恵比寿に移動し、駅前でラーメンを食って腹ごしらえをした後、代官山蔦屋書店へ。三井昌志さんとのスライドトークイベント、毎度のことながら緊張して、終わった後も記憶は真っ白だったが、どうにかこうにか乗り切れた、と思う。関係者の方々や、見に来てくれた人たちも喜んでくれてたし。

それにしても、同じ一日のうちに、テレビ取材対応とトークイベントのコンボとか……。今までももちろんなかったし、これからもないだろう。緊張と気疲れとで、活動限界は完全に超えていた。やれやれである。

積み残し、なし

ラダックの風息[新装版]」が発売されてから、1カ月半ほど過ぎた。出版記念関連のイベントや展示は、今月も来月もその先も、まだまだいろいろ続くのだが、この本に対する自分の気持は、ある意味とてもすっきりと整理できたように思う。

ああ、これでやっと、積み残しがなくなったな、と。

ラダックで一人、無我夢中の体当たりであちこち旅をしながら過ごしていたあの頃から、今に至るまでの日々。撮り続けてきた写真、書ききれないでいた言葉。それらをようやく、一番納得のいく形で、一冊の本に凝縮させることができた。だからもう、今までの自分が取り組んできたことをふりかえって気にかける必要はない。これからの自分が何をすべきなのか、何を新たに積み上げていくべきなのか、そのことに集中していける。今、はっきりと、そういう気持になった。

ラダックで、あるいは別のどこかで、何かを追い求めて。その姿は少しずつ、うっすらと見え始めている。

文禄堂荻窪店の選書フェア参加のお知らせ

東京・荻窪にある文禄堂荻窪店で、5月13日(金)から約1カ月ほど、旅にまつわる本の選書フェアが催されます。これは旅人の求人サイト「SAGOJO」が企画を担当した「働く旅人が選ぶ、働かない旅人の本棚」というフェアで、僕もそのお題に準じた本を数冊選んで、コメントとともにおすすめさせていただいています。何を選んだのかは見てのお楽しみということで。

選書フェアの棚では、別の方がおすすめしてくださった「ラダックの風息[新装版]」が数量限定の未収録エピソード小冊子とポストカード2種を同梱した「限定特典セット」状態でお取り扱いいただいています。近くにお立ち寄りの際は、ぜひフェアの様子をご覧になってみてください。

最高の勲章

ラダックの風息[新装版]」の発売以来、トークイベントに出演したり、写真展を開いて在廊したり、先週末はアースデイ東京にも顔を出したりしていて、たくさんの読者の方々に直接お会いする機会が増えた。会う人ごとにいろんな感想をいただいて、それぞれとてもありがたいし、参考にもなるのだが、以前から今に至るまでずっと、言ってもらえると一番うれしい感想がある。

「ヤマモトさんの本を本屋さんでたまたま手に取って、読んで、それでラダックに行っちゃいました!」

こういう方が、一人や二人ではないのだ。本当にびっくりである。だって、ハワイや台湾とはわけが違う。インドの中でもとりわけ奥地のラダックなのだ。飛行機代だって安くはないし、時間もかかるし、気力も体力も使う。そんな場所にわざわざ行ってもらうような背中の後押しを、自分の書いた本がさせてもらっているなんて。

世間で権威のある人たちがくれる賞よりも、本の売り上げがただ単に伸びるよりも、僕にとっては、自分の本を読んでラダックに行ったと言ってもらえるのが、何物にも代えがたい、最高の勲章だと思っている。誰かの背中を、ほんのちょっと後押しするための本。そういう本を、力が尽き果てるまで、ずっと作り続けたいと思う。

本当に、ありがとうございます。これからもがんばります。