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本にできること

昼、渋谷で打ち合わせ。ネパール料理屋でダルバートをいただきながらのランチミーティング。

「僕、大学生の時に、ヤマモトさんの本を読んでたんですよ。登戸の本屋さんに並んでたのを見つけて、普通に買って読ませていただいてました」と言われ、びっくりするやら、恐縮するやら。それと同時に、もうそんなに歳月が過ぎたのか、とも思う。「ラダックの風息」の初版を出してから、気がつくと7年の歳月が過ぎていた。

僕の知らないところで、誰かの家の本棚に、どこかの図書館の片隅に、僕の作った本がある。誰かの人生に、本当にほんのちょっとだけかもしれないけど、何かを残す。そうなっていたとしたら、とても嬉しいことだ。それは、本だからこそ、できることなのだとも思う。

「旅の本を作るという仕事」について、来年の早い時期に、人前で話をさせていただくことになりそう。本決まりになったら、よろしくお願いします。

本とコーヒーとピザトースト

妙に生暖かい天気。昼、八王子方面で大学案件の取材。どうにかこうにか対応した後、立川から中央線で一気に都心へ。夕方から有楽町で、吉田亮人さんの写真展示のレセプションがあったので。

ちょっと早く有楽町に着きすぎてしまって、腹も空いているしと、ひさしぶりに、紅鹿舎へ。ここはピザトースト発祥の店なのだそうで、僕もここに来たらたいていピザトーストとコーヒーのセットを注文する。店内は空いていて、楽しげにおしゃべりしてる韓国人の女の子たちや、音楽談義に花を咲かせるご婦人方などで、くつろいだ雰囲気。

夏の終わりから読みかけのままだった、ハードカバーの本を読む。サイフォンでいれたコーヒーと、とろっとろのチーズのピザトーストをおともに。ほおばるたび、ピザトーストの影の主役はピーマンだよなあ、などと思いつつ、コーヒーを一口すすり、また本のページに目を落とす。

しばらくすると、仕切りを挟んで隣の席に割と年配のおじさんが来て、クリームがこってり山盛りの大きなベイクドパイを注文し、そんなに急いで大丈夫かと心配になるほどのスピードで、パリパリ、むしゃむしゃ、パリパリ、と無我夢中でほおばっていた。ちょっと申し訳ないけど、夏にラダックで見た遊牧民のヤギを思い出してしまった(苦笑)。

喫茶店で、本とコーヒーとピザトースト。いいもんである。

「好きだ」と言ってもらえる本を

生まれてこのかた、女性の方から先に「好きです」と言ってもらえた回数は、指折り数えてもたぶん片手で足りるほどしかない。だから、そんな風に言われるとどのくらい嬉しいと感じるのか、正直よく覚えていない(緊張するし、その時に相手のことをどう思ってたかもあるし)。

でも、自分の作った本を「この本が好きです」と言ってもらえた時の嬉しさは、本当によくわかる気がする。そういう機会がたま〜にあるのだが、面と向かってそう言ってもらえると、相手の顔も見れないくらい恥ずかしくて恐縮してしまう。同時に、その場で飛び上がりたくなるほど嬉しくもなる。まるで、校舎の裏に呼び出されて告白された中学生男子みたいに(笑)。もちろん相手の方は老若男女さまざまだし、伝わる手段も直接会うだけでなく、メールや手紙など、いろいろなのだけれど。

火曜日の打ち合わせの時、約5年前に書いた本のアンケートハガキの裏面のコピーをまとめたものをもらった。いろんなコメントがあったのだが、その本を、本来の機能や役割以上の部分で気に入ってくれていた方が思いのほか多くて、部屋の中で一人、校舎裏の中学生男子のようにもきゅもきゅしながら読ませていただいた。中には「今、入院中ですが、読んでとても気分が晴れやかになりました」という方からのハガキもあって、ありがたいなあ、としみじみ思った。

みなさん、本当に、ありがとうございます。感謝の気持を、次に作る本にがつっと込めるべく、がんばります。また、「この本が好きです」と言ってもらえるように。

京都一泊二日

恵文社一乗寺店で開催されるトークイベントに出演するため、土日の一泊二日で、京都に行ってきた。

恵文社一乗寺店は本当にうっとりするほど素晴らしい本屋さんで、店内をぶらぶらするだけでも、何時間でも過ごせそうな気がした。イベント会場の雰囲気もすごくよくて、あんな場所で大勢のお客さんを前に話をさせてもらえたのは、本当にいい経験になったと思う。

イベントの後は関係者の方々と近くで打ち上げをし、夜半前に、あらかじめ予約しておいた四条のホテルへ。何の変哲もないシングルルームだったが、よく眠れた。

で、今日はお昼前から京都市内のその他の本屋さんを何カ所か回った。誠光社では店長の堀部さんがご不在だったのが残念だったが、店内で棚を眺めているだけで、何かもう胸がいっぱいになってしまうほど幸せな気分になれた。そこからホホホ座、善行堂と、ちょっと蒸し暑い中をてくてく歩いて回った。行く先々で買った本で、ボストンバッグはどんどん重くなっていった。

おひるはイノダコーヒー本店へ。風情のある旧館の窓辺のソファ席に通してもらえた。一番深煎りのジャーマンブレンドと、ビーフカツサンド。このビーフカツサンドがめっちゃうまくて、もしかしたら自分史上過去最高のサンドイッチかもしれない。高かったけど、その価値はある。

気分もおなかもすっかり満足して、修学旅行生でごったがえす駅の近くで自分みやげに黒七味を買い、帰りの新幹線に乗った。小さな旅だったけれど、いい旅だった。

写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」@横浜


3月末から5月末まで、三鷹で開催していた写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」を、6月中旬から約2週間、横浜中華街の「旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ」で開催させていただくことになりました。店内の構造と会期を考慮して、三鷹の展示での前期と後期の内容を合わせて再構成した展示にします。「ラダックの風息[新装版]」に未収録エピソードの小冊子と新旧表紙写真のポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。横浜方面の方々、そして三鷹での展示を見逃したという方、ぜひお越しください。

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山本高樹 写真展
「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」

インド北部、ヒマラヤの西外れにひっそりと息づくチベット文化圏、ラダック、ザンスカール、スピティ。この地をずっと見守り続けてきた「ラダックの風息[新装版]」の著者、山本高樹による最新写真展。空果つる地を吹き抜ける、風息の行方を辿る旅へ。

期間:2016年6月14日(火)〜6月29日(水)
会場:旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ
神奈川県横浜市中区山下町214 RIビル2F
TEL&FAX 045-641-6950 http://shorttrip.info
時間:14:00〜23:00
定休:月曜日
料金:無料(会場が飲食店なので、1品以上のオーダーをお願いします)

※会場では山本高樹の最新刊「ラダックの風息[新装版]」に部数限定の小冊子「未収録エピソード」とポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。