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関健作×山本高樹 トークイベント「僕たちはブータンとラダックで、撮って、書いて、生きてきた。」


毎年春の恒例行事となりつつある、ブータン写真家の関健作さんとのコラボトークイベント。今回は、お互いの旅と写真と文章のルーツ、それぞれのメインフィールドにこだわり続ける理由などについて、じっくり話してみようと思っています。ご来場、お待ちしています。

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関健作×山本高樹 トークイベント
「僕たちはブータンとラダックで、撮って、書いて、生きてきた。」

旅に出て、ある場所に出会う。そこはもしかすると、あなたが訪れるのをずっと待ってくれていた場所かもしれません。ヒマラヤの東の小国ブータンに出会った関健作と、ヒマラヤの西外れの辺境ラダックに出会った山本高樹。彼らは何に惹かれ、何を求めて、それぞれの土地に関わり続けることを選んだのでしょうか。二人の写真家がこれまでに紡いできた写真と言葉の変遷をたどりながら、異国への旅、そして人生について、じっくりと考えてみるトークイベントです。

■日時:3月25日(土)14:30〜16:30(14:00開場)
■会場:モンベル 御徒町店 4F サロン
東京都台東区上野3-22-6 コムテラス御徒町
TEL03-5817-7891
http://www.montbell.jp/
■定員:80名(メールによる事前予約制)
■主催:GNHトラベル&サービス
http://gnhtravel.com/

うまければいいというわけではない?

文章、あるいは写真について論じる時、「うまければいいというわけではない」という言い方をする人がいる。

確かに、上手だったらそれでいいはずなどなく、表現したり伝えたりするものが熱意とともに込められていなければ意味がない。でも、それをその人自身にスキルが不足していることの言い訳にするのは、ちょっと違うと思う。特に仕事として本や記事を作ったりする人は、なおさら。「うまければいいというわけではない」のは確かだが、「うまければそれに越したことはない」のも間違いなく事実だ。あるテーマについて複数の人が同じ熱量で表現しようとしたら、そこにはスキルの差が如実に現れるのだから。

文章にしろ、写真にしろ、ほかの何にしろ、仕事として取り組んでそれで報酬をもらっているなら、あーだこーだ言い訳をするのは、みっともない。自分自身、肝に命じようと思う。

相応の金額

出版不況もここまで長引く(というか、もう回復はしないと思う)と、何かにつけて辛気臭い話が多くなる。予算が減るだの、人手を減らすだの、まあ、いろいろ。

雑誌の世界は、一部の大手出版社を除けば、しばらく前から内製化が進んでいる。ライターやカメラマンの代わりに、編集者が自ら取材に行ってデジカメで写真も撮る、とか。確かにそうすれば予算は節約できるのだが、編集者にかかる負担は数倍になり、文章や写真の品質も維持できなくなる。結果、編集部は疲弊し、雑誌の品質も売上も落ち、さらに予算が削られ……という悪循環を辿っている雑誌は、今の世の中、少なくないと思う。旅行用ガイドブックなど、ライターやカメラマンが複数関わる書籍も、たぶん似たような状況だろう。

開高健さんが生前にエッセイで、「いいものを作るのに必要なのは、たっぷりの時間と手間と、必要なだけの金だ」という意味のことを書いていたと記憶しているのだけれど、確かに、本や雑誌を作るのに、お金はとても重要だ。湯水のように注ぎ込めばいいわけではないが、必要なところに適正な金額を使えないと、関わる人々の心意気だけではどうにもできない状況が必ず生じる。必要とされるスキルを持っているスタッフには、それ相応の金額を。世の中、そういうバランス感覚に戻ってほしいな、と思う。

「地球の歩き方 タイ 2017〜2018」

今回でかれこれ4年目になりますが、撮影とデータ取材の一部を担当させていただいた「地球の歩き方 タイ 2017〜2018」が発売されました。

今年の改訂版では、巻頭のカラーグラビアでタイ北部の街、チェンラーイ、チェンマイ、ラムプーン、ラムパーンを寺院を中心にして6ページほど新規で撮影(昨年まで僕が担当していたカラーグラビアのスコータイとアユタヤーの遺跡の写真と紹介テキストは、今回は別の方が担当しています)。その他には、本全体の巻頭トビラとタイ北部の章トビラの写真も担当しています。

タイへの旅を考えている方はもちろん、そうでもない方も(笑)、書店で見かけたら、お手に取ってみていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

自費出版とクラウドファンディング

クラウドファンディングという手法は、日本に上陸してからまだそんなに年月は経っていないが、それなりに世間で認知されて浸透してきているように思う。何かのプロジェクトを実現させたい時、単なる資金集めの方法としてだけでなく、クラウドファンディングを行うことで一種の情報拡散効果も狙えるという点で、プロジェクトの内容や企画者のネームバリューによっては、かなり効果的な場合もある。

じゃあ、たとえば僕が、何かの本を自費出版(この場合の自費出版とは、出版社に費用を払って出版してもらうのではなく、デザインと印刷・製本以外は制作から販売の手配まで自分で行うやり方のこと)しようとした場合、クラウドファンディングを利用すべきかと考えると……あまりうまくマッチングしないように思う。

クラウドファンディングは基本的に、集まった金額が目標額に達しなければ成立しない。僕の場合は目標額が集まるかどうかで本を作るか作らないかを決めはしないので、そこがまず噛み合わない。大口のパトロンが現れてくれるならもちろんそれはありがたいけれど、それよりも一人ひとりに一冊ずつ、きちんと本を届けることを最優先に考えたい。

デザインと印刷・製本以外をすべて自分でやる自費出版の場合、僕が懸案事項と考えるのはただ一つ。「本を何冊作ればいいか」という点だ。オフセット印刷で本を作る場合、印刷部数が多ければ多いほど、一冊当たりの原価は安くなる。読者が買いやすい価格にするなら、たくさん印刷しなければならない。でも、予定した販路で捌ききれないほど作りすぎてしまうと、在庫の山を抱えてどうしようもない状況に陥ってしまう。多すぎず、少なすぎず。部数の見極めはとても難しい。出版社から本を出す時も常にそうだ。

だから、もし僕が将来、自分で本を作って売るプロジェクトを手がけるとすれば、制作費はクラウドファンディングに頼らずに何とか調達し、印刷に入る前に必要十分な部数の見極めができるように、Webサイト上などで事前予約を受け付ける形にするだろう。もちろん、予約購入特典で何かサービスかおまけをつけて。そういうやり方の方が、自分の本づくりには合っているのかも。と、そんなことをつらつらと考えてみた。