『ラダック旅遊大全』

『ラダック旅遊大全』
文・写真:山本高樹
価格:本体2000円+税
発行:雷鳥社
B6変形判 224ページ(カラー192ページ)折込地図付
ISBN 978-4-8441-3800-6
配本:2023年12月8日

2年近くの歳月をかけて作ってきた新刊、『ラダック旅遊大全』が、まもなく発売になります。

ラダック、ザンスカール、スピティの全域についての情報を網羅した、まったく新しい仕様のガイドブックです。大判の折込地図をはじめ、地図や写真を豊富に掲載。各地の街や村、僧院、自然、生活、伝統文化についての解説や、2019年に外国人の入域が許可されたばかりの地域の情報、そして各地で延伸が続けられている道路の最新状況なども、わかりやすく、読みやすい形で収録しています。旅行用ガイドブックとして十二分に役立つ機能を持つだけでなく、長年にわたる現地取材に基づいた、地域研究書としての側面も併せ持っています。

発売に際して、一部の書店では先行販売を実施していただくほか、写真展示やイベントなどの企画も準備していただいています。詳細については、Days in Ladakhや各種SNSで発信していきますので、チェックしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

横浜への旅


一昨日と昨日、一泊二日で、横浜まで旅行に行ってきた。

都心から片道一時間かそこらで行ける距離の横浜に、あえて一泊の旅行をしてきたのは、二つの目的があった。一つは、関内にあるスコティッシュパブ、ワイバーンに行くこと。都心から日帰りでも飲みに行けなくはないけれど、現地で宿を取っておいた方が、心おきなく飲めるので(笑)。ワイバーンさんは噂に違わぬ素晴らしさで、お酒のラインナップはもちろん、フードも丁寧に調理されていて本当においしかった。ブリュードッグのビール、ブルイックラディのハイボール、ヘーゼルバーンなど、たらふくいただいてしまった。

もう一つの目的は、憧れの老舗ホテル、ホテルニューグランドに泊まること。数カ月前にたまたま良心的な料金で予約が取れたので、めちゃめちゃ楽しみにしていたのだ。チェックインしてみると、用意されていた部屋は、山下公園や横浜港をぐるりと一望できる眺望の角部屋。設備もサービスも、品が良くて、でも気取りすぎてなくて、何から何まで行き届いているという、素晴らしいものだった。夜はぐっすり眠れたし、朝は軽めの朝食をルームサービスでお願いして、ベイビューを楽しみながらいただいた。最高だった。

他にも、中華街で人気の謝甜記貮号店で、一時間半ほど粘って旨い中華粥をいただいたり、山下公園や赤レンガ倉庫の界隈をぶらぶら散歩したりして、独特の異国情緒の漂う街を、のんびり満喫することができた。旅って、思っていた以上に気軽に楽しめるものなのだな、と再認識した二日間だった。

———

チベットのむかしばなし しかばねの物語』読了。星泉先生が編訳を手がけ、蔵西先生が挿画を担当された本で、しかばねが主人公にさまざまな物語を語り聞かせるという、枠物語形式の一冊になっている。それぞれのエピソードがチベットらしい素朴さとのどかさ、そして意外性にあふれていて、それらを彩る蔵西先生のイラストの数々も本当に美しい……。読んでいて、幸せな気分になれる本だった。

時計の乾電池

少し前から、家の中で使っている時計が、立て続けに止まった。壁に架けている大きめの時計と、台所で冷蔵庫にマグネットで貼っている、小さめの時計。どちらも故障ではなく、入れてあった乾電池の寿命によるもので、交換すると、それぞれ、すぐに動きはじめた。

どちらの時計も、使いはじめたのは、僕が西荻窪のこのマンションに引っ越してきてからだ。二人暮らしに移行して、かれこれ五年と数カ月になる。それだけの歳月が過ぎていれば、乾電池が寿命を迎えるのも、納得ではある。

西荻窪で、これまで過ごしてきた五年間。続けて何カ月も海外取材に行っていた時期もあった一方で、コロナ禍によってまったくどこにも行けなくなり、ひたすら机に向かって原稿を書いていた時期もあった。五年の間に、仕事の面では、取引先が変わったり、紀行文学賞をいただいたりと、いろいろ変化はあったが、生活の面では、何だかんだで穏やかに過ごせているような気がする。

次の五年間も、仕事ではせいいっぱい頑張りつつ、生活では引き続き穏やかに暮らしていければ、と思う。

アイスからホットへ

残暑があまりにも長引きすぎて、まだまだ夏なのかなと思っていたが、気がつけば、もう十月。昨日あたりから暑さもようやく一段落したようで、日もずいぶん短くなってきた。

昨日から、朝のコーヒーを、アイスからホットに切り替えた。夏の間は、ぐっしょり寝汗をかいて目覚めた朝に、前の晩にいれて冷蔵庫で冷やしておいたアイスコーヒーを飲むと、ひからびた身体に沁みわたるようで、それはそれで旨かった。でも、朝、仕事机に座ってMacを立ち上げ、メールやら何やらに目を通しはじめる時間帯、傍らに置いて飲むのは、やっぱりホットコーヒーの方がいい。いれたての香りとともにカフェインが、ぐいん、と頭の隅々に行きわたる感じがするし、気分も落ち着くし。

自炊のメニューも、煮物とか八宝菜とか、季節の旬に応じて、だんだん切り替えていこうかなと思う。夏はもう、しばらくはいいや(笑)。

———

日野剛広『本屋なんか好きじゃなかった』読了。ときわ書房志津ステーションビル店の店長として、出版業界でも有名な日野さんの初の著書なのだが、優しく飾らない人柄が行間にじんわりと滲み出ていて、とてもよかった。

実をいうと書くことは苦手である。いやお前、今こうして書いてるだろ、と突っ込まれようが、苦手なものは苦手なのである。<中略>ならば書くのをやめたらどうか? しかし、書きたいのだ。書くことが苦手なのに、好きだということに気づいてしまったのだ。

この一文が、とりわけ印象に残った。プロとして文筆を生業とする人の中には、「書くことは得意だけど、好きではない」という人も少なくないように感じるが、本来は日野さんのように「好きだから書く」というスタンスであるべきなのでは、と思う。自分自身も含めて。

———

煎本孝・山田孝子『ラダックを知るための60章』読了。明石書店の有名なエリア・スタディーズのシリーズ200冊目が、なんとラダック。今となっては入手困難な膨大な史料を基に書かれているようで、ラダックの歴史や社会構造、伝統文化などの資料として、持っておいて損はない一冊だと思う。ただ、ざっと通読したところ、疑問に感じる記述もいくつか見受けられた。たとえば食文化の項では、モモについて「蒸し餃子はラダックの一般家庭では見られず、レーにある食堂で出される料理である」という明らかに間違った記述があった。これは著者のお二人だけでなく、編集や校正担当の方々による事実確認に漏れがあったからだろう。なので、この本を参照してラダックについて何か書く時は、ほかの資料とも照合して確認する必要はあると思う。

プリータムのライブ

昨日の夜は、有明の東京ガーデンシアターへ、プリータムのライブを観に行った。インド食材の輸入販売会社のアンビカコーポレーションが、創立25周年を記念して企画したライブだ。アンビカのアプリで応募すれば無料で観覧できるという、とんでもない太っ腹の企画で、これは行かねば、と応募したのだった。

三時間のうち最初の一時間はアンビカ創立記念関連のセレモニーだったのだが、後の二時間は、何というか……超絶幸福空間というか……凄かった。プリータムの作品でおなじみのプレイバックシンガーたちが勢揃いして、圧倒的な歌唱力で名曲の数々を歌い上げていく。多彩な楽器を奏でるバンドメンバーの技術も素晴らしくて、もう、ただただ圧倒された。昔から好きでよく聴いていた「Balam Pichkari」や「Dilliwaali Girlfriend」が、本家の生演奏で聴けるなんて、ほんと夢のようだった……プリータムありがとう……アンビカありがとう……。

……さっそく今日、アンビカ新大久保店で、バスマティ米とジャスミン米とシナモンを買わせてもらった(笑)。

———

アーシュラ・K・ル・グィン『世界の誕生日』読了。文庫版で600ページ近い、分厚い短篇集。最初の六篇は、ル・グィンが創出したハイニッシュ・ユニバースに含まれる幾つかの惑星を舞台にしたもの。いずれも地球とはかなりかけ離れた設定でのジェンダーや恋愛のありようを巡る物語で、多分に実験的な要素を含んでいる印象だった。表題作の『世界の誕生日』はインカ帝国をモチーフにしたクラシックなファンタジーで、最後の中編『失われた楽園』は、世代交代型の巨大宇宙移民船での物語。個人的には最後の二篇がとりわけ心に残った。