午前四時の写真集

昼、国立のKunitachi Tea Houseという店でガレットのランチを食べながら、仕事の打ち合わせ。これが本格的に始動するのは来年の春以降になりそうだが、この世にまだ存在しない本のことをあれこれ話し合うのは、とても愉しい。いい本になるといいのだが。

先方のオフィスで午後半ばまで打ち合わせをした後、新宿に出てヨドバシカメラを徘徊。もうすぐ買い替える予定のテレビの現物を下見する。機種はだいたい絞り込めた。あと少しで冬だというのに、うっかりバルミューダのGreen Fanにつられてしまいそうになる。その前に必要なのは、足元暖房のヒーターだろうに。

夜は、新大久保の梁の家という店で飲み会。夏のラダックのヌブラでしばらく一緒に行動した、ジュレーラダックのスタディツアーのメンバーの方々と。この店はひさしぶりだったが、カキのヂョンとポッサムのうまさはさすが。あと、おこげマッコリというのを初めて飲んだ。

夜中に三鷹まで戻ってきて、家までの道程をぶらぶらと歩く。規則正しく並んだ街灯の列の下、しんと静まりかえった住宅街を歩いていると、もう思い出せないほど昔に考えた本の企画を思い出した。午前四時、夜でもなく朝でもない時間に、誰もいない街の風景を撮って、それを写真集にしたら面白いんじゃないか。どうしてだか、そんなことがふいに脳裏に浮かんだのだった。

嵐の前

朝遅くに起きて、ベーコンエッグを作り、コーヒーを淹れ、Macでメールをチェックする。今週末に届くはずだった素材がまだ届かないので、原稿執筆に取りかかれない。それでなくてもスケジュールはかなりタイトだったはずだが‥‥ま、何とかなるか。

午後はソファにもたれて音楽を聴きながら、本を読む。こんな風にのんびりできるのも、今のうちだけかもしれない。来週から年末にかけては、結構な本数の取材が発生しそうだし、別の案件での編集作業も依頼されている。ひょんなことから講師のような仕事(似合わない‥‥)をやることにもなりそうだし。今は嵐の前の静けさというところか。

まあ、それより何より、今、一番集中して取り組まなければならないのは、11月3日のラダック写真展会場でのトークイベントだ。開催までまだ二週間以上あるのに、すでに定員いっぱいで、立見でしか入れない状態(汗)。本番で頭の中が真っ白に飛んでしまわないように、何を話すか、イメージトレーニングしておかなければ‥‥。

自炊、再び

九月初めにラダックから帰ってきて以来、何だかんだで自炊をサボっていた。

まったく台所を使わなかったわけではなく、そうめんやうどん、パスタ、ラーメンなど(麺類ばっかりだな)は頻繁に作っていたのだが、ごはんを炊いて、おかずも何品か作って‥‥という元の水準までには戻っていなかった。ここしばらくずっと忙しかったというのもあるが、両親がアラスカを旅行していた関係で、実家の野菜が届いていなかったのが一番の理由。最近、野菜がメチャクチャ高騰しているし‥‥。が、先日ひさびさに野菜が送られてきたので、そろそろ自炊を本格的に再開することにした。

いつもは手元にある野菜に合わせてクックパッドでレシピを探すのだが、今日は「北欧、暮らしの道具店」のブログで紹介されていた炊き込みごはんを作ってみることにした。ベーコンやオリーブオイル、レモン汁を使った、ちょっと洋風な感じのレシピ。今回はレモン汁の代わりに、実家から届いたスダチの絞り汁を使ってみた。

作り方は超簡単、材料をごはん鍋にぶち込んで炊くだけ。できあがった炊き込みごはんは、スダチが利いたさっぱり食べやすい味で、なかなかうまい。どんぶりに盛って、はふはふ言いながら食べる。おかずは実家の小松菜で作ったおひたし。ひさびさの本格的な自炊にしては、満足のいく出来上がりだった。

明日は、長ナスとパプリカで甘酢炒めでも作ろう。

「3 idiots」

今年の夏のラダックでは、インド人観光客の姿がやたらめったら目についた。どうしてこんなに多いのかとラダック人の知人に聞くと、去年インドで大ヒットしたアーミル・カーン制作・主演の「3 idiots」という映画のラストシーンが、ラダックのパンゴン・ツォという湖で撮影されていたからだという。その後、別のラダック人の友人夫妻の家に泊めてもらった時に、この映画の英語字幕入りDVDを観ることができた。

工科大学で「三バカトリオ」(3 idiots)と呼ばれていた、ランチョ、ファラン、ラジュの同級生三人。だが、卒業から十年、学年でも一番の天才だったランチョは消息不明のままだった。ところがある日、ファランとラジュを呼び出したかつての同級生チャトゥルは、ランチョの居場所を知っていると話す。十年前に交わした、彼とランチョのどっちが十年後に成功を収めているかという賭けの結果を確かめる時がきたというのだ。三人は一台の車に乗り、インド北部へとランチョを探す旅に出る——。

いやはや、面白い。これは予想以上にいい映画だ。

物語は、学生時代の三バカトリオのさまざまなエピソードと、ランチョ探しの旅とが並行して語られていく。コメディタッチの展開が続くのかと思いきや、ものづくりに携わることの素晴らしさを描いたり、偏狭な教育制度や自殺者の増加などの社会問題についてチクッと刺すところもあって、なかなか奥が深い。大切なのは、人が自分らしさを忘れずに生きていくこと。そして、大切な人を想い続けて生きていくこと。この映画のメッセージはそこに込められている。

三時間近くもある長い映画で、正直、学生時代のエピソードがありえない展開かつテンコ盛りすぎなのは否めないが、何だかんだでグイグイ引き込まれて、観終わった後はものすごくスッキリした気分になった。終盤に登場するラダックの学校(シェイにある学校の校舎で撮影された)の描写や、ラストシーンのパンゴン・ツォのターコイズ・ブルーの湖水も素晴らしかった。ラダックびいきとしては、もうちょっと長い尺をラダックに割いてほしかったけど(笑)。

アーミル・カーンは、最近のインド映画界の中では随一のヒットメーカーとして知られている。以前、ラダック滞在中にテレビで観た「Taare Zameen Par」は、発達障害を抱えながらたぐいまれな絵の才能を秘めた少年を主人公にした映画で、これもすごく面白かったのを憶えている(デチェンは「あたしは、この映画の男の子が大好きなんだよ!」と言ってたっけ)。日本のどこかの映画館で、アーミル・カーン作品の特集上映をやってくれたらいいのに。絶対にヒットすると思うのだが‥‥。

写真展「ラダック、僕が戻る場所」

ラダック洪水被害復興支援企画/山本高樹 写真展
「ラダック、僕が戻る場所」

行きたい、と思える場所がある。会いたい、と思える人がいる。
ラダックの風息」の著者が二年ぶりに訪れた、空果つる地、ラダック。
崇高なまでに美しく、そして苛烈な自然。そこで心穏やかに暮らす人々との邂逅。
私たちにとって大切な何かを思い起こさせる、ラダックの情景の数々をご覧ください。

期間:2010年10月15日(金)〜11月28日(日)
会場:リトルスターレストラン
   東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビル3F
   TEL&FAX 0422-45-3331 http://www.little-star.ws/
時間:11:30〜24:00(土日祝12:00開店/日祝23:00閉店)
定休:月曜日(臨時休業や貸切の日もあるため、お店のサイトをご確認ください)
料金:無料(会場が飲食店なので、1品以上のオーダーをお願いします)

※会場では、2010年8月に発生したラダック洪水被害の復興を支援するための義援金の受付も行います。