声とギターの休日

いい天気。電車に乗って都心へ。日曜なのに、まるでラッシュアワーのように人が多く感じる。師走だなあ。

渋谷のカフェ・マメヒコでコーヒーを飲み、代官山の蔦屋書店へ。この店、なかなか面白い。文学やアート、旅、料理といったテーマで緻密なコンテキストを組んだ棚作りがすごく楽しい。何となくぶらついているうちに、思いがけない本と出会えるチャンスがある。

夕方、吉祥寺まで戻ってきて、前から楽しみにしていた、キチムで開催される羊毛とおはなのカフェライブへ。お二人との距離が、ものすごく近い! こういうこぢんまりとした空間で彼らのライブを体験したいとずっと思っていた(でも東京でのカフェライブはすぐにソールドアウトしてしまう‥‥)ので、ようやく念願が叶ったというわけ。

薄暗い店内で始まったライブは、本当に素晴らしかった。声とギターだけで、あんなにも心地いい空間を生み出して、聴く人の心を穏やかにさせるとは‥‥。アンコールで、マイクなしで歌ってくれたクリスマスソング、最高だった。いろいろあった一年の終わりに、いいライブで聴き納めをすることができた。

飲んだくれの会

昼、電車に乗って埼玉の西川口へ。ジュレーラダックの運営委員の方のお宅で、忘年会ならぬ「飲んだくれの会」。昼間から飲む酒は、背徳感と相まって格別。昼の二時から夜の十一時まで、ビールにワインに日本酒に焼酎と、ひたすらだらだらと飲み続けた。「飲んだくれの会」とはよくも名付けたものだ(笑)。

飲み会の話の流れで、「僕、女の子の方から好きって言われたこと、今までほとんどないですねー」と言うと、「そうやってぼけっとして気付かないでいるから、今まで何人も逃してるんじゃないですか! まったく!」と、女性陣から猛烈な剣幕で怒られた(苦笑)。いや、本当にそんなはずはないのだが‥‥すみません。

「書きたいこと」と「読みたいこと」

永井孝尚さんという方が書いた「会社員が出版社の編集者に会っても、なかなか本の執筆にたどり着けない二つの理由と、その克服方法」というブログエントリーを読んだ。

僕自身、以前「自分の本を出す方法」というエントリーで企画を練ることの大切さについて書いたことがあるが、永井さんのエントリーでも企画書の重要性が強調されている。加えて、本全体のストーリー構成力や、それを最後まで破綻なく書き切る力も必要だと書かれていた。プロの書き手にとっては常識に近いことだが、いつか自分の本を出してみたいと思い描いている人にとっては、参考になる内容だと思う。

ただ、一つだけ、「それはちょっと違う」と違和感を感じたことがある。

企画書を作る際のポイントは、「書きたいこと」ではなく、「読者が読みたいこと」を書くことです。当たり前のことですが、読者はお客様だからです。
(中略)
あくまで出版社からの商業出版をしたいのであれば、出版社もビジネスとしてリスクを取っているのですから、出版社のお客様である「読者が読みたいこと」を書くべきですよね。

永井さんには、「読者が読みたいこと」は商業出版にして、「自分が書きたいこと」は自費出版にすべき、という線引きがあるようだ。だが、僕はそうは思わない。自費出版は、少なくとも僕にとっては、出版社が抱えるさまざまな事情から、自分が思い描いたテーマや仕様での本を出すのが難しい場合に選ぶかもしれない選択肢の一つであって、「読者のニーズには合わないけど、自分が書きたいから」という場合のための手段ではない。

僕にとって本を企画する作業は、「自分が書きたいこと」を練りに練って、「読者が読みたいこと」に昇華していく作業だ。その両方が一致することが、幸せな本を作るために必要な条件だと思っている。出版社から企画を依頼された場合は、その企画の方向性を自分が納得できるものに近づけるための工夫と努力はするし、自分自身で企画を立てる場合は、「自分が書きたいこと」と「読者が読みたいこと」が一致しているという確信が持てなければ、出版社にプレゼンすらしない。

たとえ、それが売れそうな企画だからといって、自分が伝えたいわけでもない文章を書くことは、フラストレーションのたまる労働でしかない。本を書くことの本当の喜びは、自分が心の中で大切にしていることを書き、それを読者に届けて、ほんのちょっとでも心を動かすことに尽きると思うから。

いいチームで

昼、外苑前で打ち合わせ。これから作るラダックの本について、デザイナーの井口さんと編集者さんを交えてのキックオフミーティング。僕としては、長い間一緒に仕事をしてきて気心の知れたデザイナーさんと組めるので、とても助かる。編集者さんも別れ際に「いい本にできるような気がします!」と言ってくれて、心強いかぎり。今回も、いいチームで本を作れそうな気がする。

まあ、実際に作業が本格化すれば、いくつもの修羅場が待ち受けているのは間違いない(苦笑)。ただ、こういうチームで仕事がやれる時は、なるべく他の人にスムーズに気持よく作業してもらえるように、いつもよりなおさら、問題になりそうな部分はできるだけ自分のところでクリアするようにしなければならないな、と思う。自分のところでめいっぱい無理をすることになっても、他の人の力を活かせるなら、それでいい。

いいチームで、いい本を作る。そのためなら、何だってやるさ。

日記を書く場所

一日一回、こうしてブログを書くことは、僕にとっては暇つぶしというか、すっかり習慣と化しているのだが、この習慣がいつ頃から始まったのかと思い返してみると、かれこれ十年も前のことだった。ひょえー。

当時はブログなんてほとんど影も形もなくて、テキストエディタでコーディングして作った個人サイトで日記を書いていた。Movable Typeに移行したのがその数年後。今と違うのは、通常の日記の他に、当時はWeb上で見つけたちょっとヘンだったり面白かったりするネタを、コメントとリンク付きで毎日数本紹介していたことだった。それはそれで楽しかったし、そういったB級ニュースを目当てにアクセスしてくれる人も少なからずいた。

ただ、その後はB級ニュースを集めて紹介するサイトはものすごく増えてしまったし、情報を共有する方法もTwitterやFacebookで恐ろしく簡単にできるようになったので、アマノジャクな僕は、ブログでB級ニュースを紹介するのをやめることにした。以後、ひたすらだらだらと独り言を書きつけるという今のスタイルが確立されるに至る(笑)。

日記を書くこと自体が生産的な行為だとは、別に思っていない。ただ、何か思うところがあって文章を書いておかなければならない時、それをささっと書けて、それを読んでくれる人がいる(かもしれない)場所があるというのは、僕にとっては割と大事なことだ。読み飛ばされても文句の言えない140文字じゃ伝わらないこと、たくさんあるから。