誰かのために

終日、部屋で仕事。今書いているラダックの本で、最初の難関にさしかかる。

これまでにざっくり考えていたページ構成が、うまくいかない。必要事項をリストアップし、構成を煮詰め、台割を見直してページ割を変え、ラフを描き‥‥。ああでもない、こうでもない、と、夜遅くまでグダグダ悩む。結局、今日は一文字も書けなかった。

こんな日は途方に暮れて、暗澹とした気分になる。この仕事、「自分の職業だから」という気持だけでは、たぶん僕には続けられない。でも、僕が本を書くのは、それを手に取ってくれるかもしれない、誰かのため。ページをめくって目を輝かせてくれるかもしれない誰かがいてくれるから、僕はこの仕事をやっていられるのだと思う。

いつか本ができたら、その誰かのもとへ、届きますように。

仕事納まらず

昨日の夜は、神保町にある焼き鳥屋で、昔の職場関係の人たちと忘年会。ビールジョッキ片手に心おきなくいろんな話ができて、楽しかった。家までの帰り道があまりに寒くて、すっかり酔いが醒めちゃったけど。

今日は、再びずっと家に籠って仕事。世間的には、今日が仕事納めだったりするらしいが、今の僕にとっては「仕事納めって何?」という状況。毎日少しずつでも作業を進めなければ、とてもじゃないけど予定に間に合わない。時間がないからといって、推敲をおろそかにした原稿にもしたくない。他のスタッフが少しでも楽に作業できるように、今のうちからがんばっておかねば‥‥。

やるときゃやるのです。ワタクシも。

無音の中で

終日、部屋に籠って原稿を書く。連休中はちょっとサボってたから、気合を入れ直さなければならない。

普段、雑誌や本の原稿を書く時は、ラジオをつけたりしているのだが、今回のラダックの本は、原稿を書き進めつつ、編集者の視点でも常にチェックしていく必要があるので、音楽すら聴く余裕がない。何もつけず、無音の中で、時折頭をかきむしりつつ、ひたすらカタカタとキーボードを叩く。こういう時、車通りもほとんどないうちのマンションの立地は、本当に助かる。

キーンコーンカーンコーン、と、武蔵野市が街の中に立てたスピーカーからチャイムが鳴る。もう五時か。テキトーにメシ食った後、第二ラウンドだ。

紙の本の底力

先日から、蔦屋書店やオリオンパピルスといったユニークな棚作りをしている書店を巡っていてつくづく思うのは、紙の本には、まだまだ捨てたものではない底力が眠っているということ。

たとえば、クリスマスプレゼントに相手が好きそうなテーマの本をプレゼントしたらきっと喜ばれるだろうけど、電子書籍のデータをメールで転送したら、何か微妙というか、その喜びはやっぱり紙の本には及ばないと思う(写真やイラスト、装丁が素敵な本ならなおさら)。書店や古書店、図書館などでは、紙の本ならではの「出会い」もある。

確かに、流通やコストを理詰めで考えていけば、電子書籍の方が理にかなっている面もあるし、これから移行が進んでいく部分も少なからずあるだろう。でも僕は、紙の本の底力も信じていたい。自分の本を読んでわざわざ手紙をしたためてくださったり、読んだのがきっかけで実際にラダックまで行ったという方から話を聞いたりするたびに、なおさらそう思う。それは、ブログや電子書籍ではできなかったことだと思うから。

これからも、一冊々々、納得できる本を作る仕事を積み重ねていきたい。

本好きのための本屋さん

昨日の午後、電車に乗って立川へ。普段はあまり降りることのない駅だけど、今回のお目当ては、オリオンパピルスという本屋さん。今年六月にオープンしたばかりの店だが、「北欧、暮らしの道具店」の青木さんがブログで激賞していたので、行ってみようかなと思ったのだ。

オリオン書房といえば、立川界隈では知らぬ者のない書店チェーンで、出版社の書店営業さんも重点的に回るポイントにしているそうだ。他の系列店は割とオーソドックスな街の本屋さんのスタイルだが、オリオンパピルスはそれとはかなり違う。形も色もまちまちな本棚がちょっとした迷路のように配置されていて、それぞれの棚には、版元やシリーズに関係なく、考えに考え抜かれたに違いない取り合わせの本が並べられている。一冊々々の本がどんなものかを熟知した上で、「この本は面白いですよ。そして、こういう本を探しているあなたは、こんな本も好きなんじゃないかな?」と、さりげなくおすすめしてくれているような感じなのだ。

この間行った代官山の蔦屋書店が、建物の設計段階から緻密にコーディネートされている書店だとすれば、オリオンパピルスは、天衣無縫で自由な棚作りが魅力の書店といえるだろうか。本好きな人にはたまらない店だろうし、こんな書店に自分が作った本を置いてもらえるとしたら、本の作り手としてもすごく嬉しい。いい刺激をもらった気がする。