バーナード・マラマッド「レンブラントの帽子」

バーナード・マラマッド「レンブラントの帽子」吉祥寺の一人出版社、夏葉社さんの本は、何だかんだで既刊のものはほぼ全部買い揃えていると思うのだが、なかなか読破できずにいた。何というか、普段の書き仕事で頭がくたくたの時に、さらっと読んでしまいたくなかったのだ。落ち着いてゆったりした気持の時に対峙したい、とずっと思い続けていた。

年末年始の帰省の時、新幹線での移動中や、紫煙のたちこめるコメダ珈琲店での暇つぶしの間に、「レンブラントの帽子」を読んだ。四半世紀以上前に集英社から刊行されていた同名の短編集から、代表的な三編を抜粋した本。一人で出版社を立ち上げ、最初の一冊に選んだのがこの本とは‥‥すごい選択眼と度胸だなあ、と思う。

バーナード・マラマッドの本は初めて読んだのだが、抑制が効いた中にも、非常に繊細な描写をする人だな、と感じた。何気なく声をかけたひとことがぎくしゃくとしたすれ違いを生じさせてしまう表題作に、その真骨頂が現れている気がする。

個人的には、その次に収録された中編「引出しの中の人間」の方がより印象に残った。ソ連を旅行中の米国人のフリーライターと、発表するあてのない小説を書き溜めているユダヤ系ロシア人の男の邂逅の物語。モスクワやレニングラード(現在はサンクトペテルブルク)は、僕が初めての海外一人旅の途中に立ち寄った街だ。当時はソ連が崩壊して間もない頃で、ロシア国内は混迷の極みにあったのだが、その旅のことを思い出しながらこの小説を読むと、何だか複雑な気分になる。あと、作中に登場するユダヤ系ロシア人の男が書いた四編の小説のプロットは素晴らしい。それぞれを独立した作品として読みたいくらいだ。

この「レンブラントの帽子」、夏葉社さんのTwitterで見た情報によると、今年再び増刷される予定だという。まだ読んでいないという方は、それを待って入手するといいと思う。

生活メンテナンス

今日は仕事で特に大きな動きがなさそうだったので、午後、吉祥寺へ買い出しに出かける。

今日買ったのは、ポータブルハードディスク、マウスパッド、スラックス用ハンガー、まくらとまくらカバーなど。どれも、「いつかは何とかしなきゃ‥‥」と思ってはいたものの、手つかずのままだった、普段の生活の中でのちょっとした問題を解決するためのもの。仕事環境を整えたり、クローゼットの中を整理したり、寝心地をよくしたり。特に、まくらなどはかさばるものだから、買って持ち帰るだけでも億劫だったのだが、思い切って買ってきてみると、気分がとてもすっきりした。

昨日のやかん磨きから始まった、生活メンテナンス。いい傾向だから、もうしばらく続けていこう。

やかんを磨く

去年の暮れに新しいコーヒーミルを手に入れてから、家でコーヒーを淹れるのが一段と愉しくなった。で、あらためて自分のコーヒー道具を見渡してみると、「こりゃ何とかした方がいいな」というものが目に入った。それは、やかん。

うちで使っているやかんは、柳宗理のステンレスケトル。もう思い出せないくらい前に買ったものだが、とても使いやすいのでずっと愛用し続けてきた。しかし今、やかんの外側は、油がこびりついて焼き付いた長年の汚れで、ひどいあばた面。買い替えようかとも思ったのだが、その前にとりあえず、できる範囲でリカバーしてみようと一念発起。

まず、油汚れ落とし用の洗剤で、油分をできるだけ浮かすように試みる。しばらく時間をおいて洗い流した後、フロッシュのオレンジクリームクレンザーをつけ、たわしで根気よくゴシゴシ。すると、思いのほか効果があって、ほぼ元通りのピカピカな姿にまで復活した。好きなやかんだっただけに、買い替えるよりも数倍うれしい。

すっかり気分がよくなった僕は、シンクからコンロの周囲まで、台所をかたっぱしから磨きまくったのだった。

冬の休日

昼、昨日からリトスタで催されているイベント「ひばりスターレストラン」へ。開店と同時に到着したので事なきを得たが、後からどんどん人がやってきて、長い行列が。お待たせするのも申し訳ないので、早めに食事を終わらせて店を出る。コーヒー豆や濾紙が切れていたので、まほろばで補充。

それから電車に乗って、都心へ。実家滞在中に妹から頼まれていた、彼女の旦那さんの財布を買うため、表参道のクラチカに行く。道すがら、アウトドアショップにちょこちょこ寄り道していると、変に物欲が刺激されてヤバいヤバい。危うく予定外の大買い物をやらかすところだった。タワレコのブックショップで、石塚元太良さんの「氷河日記 プリンスウィリアムサウンド」を購入。

渋谷まで歩いてカフェ・マメヒコに行くと、残念ながらまだ休業中。フレッシュネスでひと休みして、井の頭線で吉祥寺まで戻り、アムリタでタイスキのミニ鍋を食べる。身体ホカホカ、すっかりあったまった。満足。

冬の東京らしい、のんびりした休日だった。

名古屋での再会

一昨日、岡山から東京に戻る途中、名古屋に立ち寄った。ラダックのティクセで旅行会社とゲストハウスを営む、ツェワン・チンレイさんと妻の裕子さん、娘のミラちゃんとお会いするために。

三人とは去年の夏のラダック以来、半年ぶりだったのだが、お元気そうで何より。「タカさん、日本にいるのが似合わないですね〜」と思いっきり言われてしまった(笑)。やっぱ似合わないんだろうな。

栄の地下街で味噌カツ定食を食べた後、裕子さんの提案で、熱田神宮に参拝に行く。古くからの立派なお社で、人出もすごくてびっくり。おみくじを引いてみたら、大吉。元旦に岡山の吉備津神社で引いたのは凶だったのだが‥‥。いい方を信じよう(笑)。

ツェワンさんたちは僕が新幹線に乗る直前まで付き合ってくれて、コメダ珈琲店でお茶を飲みながら、積もるよもやま話をした。裕子さんが「私たちは、ぼちぼちやっていこうと思ってます」と言っていたのが印象に残った。結果を求めて一足飛びに焦って取り組むのではなく、できる範囲で着実に歩を進めていく。僕も「ぼちぼち」を心がけなきゃな、と思った。

また、夏か冬に、ラダックで再会できるといいな。