名前のない原稿

前から予想はしていたのだが、これから来月末にかけて、やたらめったら忙しくなる。

大半は、一年前から受注している大学関係の取材とライティングの仕事。僕が企画して主導権を握るわけではないし、僕の名前が記事に残るわけでもない。依頼された取材を次から次へと捌き、原稿を書いて納品する。自分で企画して本を丸々一冊作るのに比べれば、達成感などは正直少ない。

でも、この仕事にはこの仕事なりの意味がちゃんとある。僕が書いた原稿は、名前を持たぬまま多くの人の目に触れ、時にはその背中をほんの少し、後押しする。その行方を僕が見届けることはできないけれど、もしかしたら何かの力になれているのかもしれないと思うと、キーボードを叩く指が少し軽くなる。

名前のない原稿にも、役割はある。

著者と編集者との関係

午後、六本木へ。「ラダックの風息」の担当編集の方とひさしぶりに会う。

仕事柄、編集者の知人は大勢いるけれど、本当の意味で互いの手の内をすべて晒して、あれこれぶっちゃけて話し合えるような編集者の知人は、たぶん数人しかいない。そういう信頼関係がないと、書き手あるいは撮り手としては、自分が大切にしている企画を委ねられないし、意見をぶつけあって質を高めていくこともできないと思っている。

今日のミーティングはすぐに何かにつながるというものではないのだが、僕が今抱えている悩みや葛藤について本当にざっくばらんに話し合うことができたので、それだけで何だか気持が軽くなった。いつかまた、こういう関係で本を作れたらいいなと思う。

当たり前の日常

朝起きて、メールをチェック。うどんを茹で、コーヒーをいれ、しばらく仕事。原稿をメールで送り、スーパーに食材の買い出しに行き、コンビニでちょっと立ち読み。当たり前の日常。

あれから、二年。

思い返してみると、あの年は本当に大変だった。世間は震災でてんやわんやで、夏には父が突然逝ってしまった。今も色々苦労はしているけれど、あの頃に比べればずっとましだ。それも、当たり前の日常があるからこそ。何気ない物事への感謝を、忘れないようにしたいと思う。

煙霧

昨日の午後は、友人の宮坂清さんが登壇する、ラダックのシャーマンについての講演へ。話自体も、初心者にもわかりやすく噛み砕いた内容で面白かったし、ひさしぶりに会って、お互いの近況を話せてよかった。ただ、打ち上げの席では、別の参加者の絡み酒に邪魔されて(苦笑)、あまりゆっくり話し込めなかったのは残念だった。

で、今日は午後から、チベット・ピースマーチへ。電車に乗って向かう途中、中野駅のあたりで、急に空が灰黄色にどろんと濁ってきた。渋谷駅から外に出ると、強い風に煽られた砂埃で、目も開けていられないほど。黄砂にしては異様だなと思ったら、煙霧という現象らしい。ピースマーチが始まる頃には、ある程度収まってくれてほっとしたが。

夕方になっても風は吹き止まず、昼頃の陽気が嘘のように冷え込んできた。

暖機運転

昨日は丸一日、家で原稿を書いていた。今日は再び、朝イチで取材。電車を乗り継いで鷹の台へ。

朝イチの取材は、正直、他の時間帯よりも消耗する。単に、取材場所での待ち合わせ時間に間に合うように支度していると、僕の場合、取材の時点ではまったく頭が回転しない。プラス一、二時間は早めに起きて、コーヒーを飲むなり何なりしないと、ぽんこつで使いものにならない。他の作業ならともかく、初対面の相手に対して全神経を集中させ、頭をフル回転させなければならない取材では、それなりの暖機運転が必要なのだ。

で、最近、やたらめったら多いんだよな、朝イチ取材(苦笑)。きっついわー。